2017-10

生臭さは梅雨のせいばかりじゃなかろうて

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雨が近づいてくると、先に雨の匂いが鼻につく。
それはなんとも生臭いものだと感じるのは、絹子ばかりじゃないでしょう。

土曜日、梅雨の谷間をかいくぐり向かった「五反田愛書展」。
多分過去最高の支払い金額と、最高の重量を誇ったかもしれません。
ユイスマンス「彼方」は読了したけど、感想書くのはちょっと重いので、今日は、掘り出し物ならぬ、怪しい拾い物の紹介です。
僕がゲットしたのは、写真のような帯はなくて、もう少し状態が悪い。
でも、200円じゃなかったら、こんなお笑いSM小説買いますかいな!

1952年水谷書店発行、まさしく戦後のカストリ文化を匂わせる、仙花紙本の徒花中の徒花でありましょう。
ネットの海にも、某スパンキングサイトでさらりと取り上げられている以外には、感想が見当たらないので、恥と爆笑のために記録に残しておこうというわけです。

これ、邦題は「咽び泣く青春 テキサスの無軌道お転婆娘」と申しますが、原題は”Whips&Tears"と書かれています。
作者のブラックスミス君。
これがねえ、見つからないんだ。
いくら検索しても。
いやこんな生ぬるすぎる、えすえむなんて呼ぶのも恥ずかしい内容は、現地でも一向に顧みられないのかもしれませんが、どうも僕には、訳者の大谷進なる人物の創作なんじゃないのかと、穿ってしまうんです。

では、どんな内容かというと。
粗筋を書くよりも、冗長ではありますが、大笑いの章題を抜き出してみましょう。
きっともうこれだけで、読んだ気分が味わえるはず。

1.南国の荘園に隠された秘密―精力的な農園主ダン・ドーバー 女家庭教師と愛の戯れに悦楽の園をさまよう

2.鞭打ちの脅威に悩むメリイ―ダンの変態的なお仕置きの噂、交際社会に広まる

3.大変シックな女ばかりの学校―エロと怪奇な歓迎の儀式(お臀打ち)

4.メリイの悪夢―犬の戯れを見て

5.ファンニイとルイザのお臀を抱いて、その窪にキッスをするドリイ

6.少女メイ、二人の女から肉体の窪(泉)に愛の折檻を受ける

7.二人の美少女に対する変態なお仕置き

8.寝室でのお講義―性の神秘をメイは知ってるの?……更に女同士の悦楽に耽ること

9.乗合馬車の中で、ハンサム・ボーイのジョンを交えて、悦楽に耽るメイとヘレン

10.山陰より突如現われたる山賊に、娘達の宝石を弄ばれ、果ては陶酔の境に入るメイとヘレン

11.インディアンの襲撃―メイとヘレンの吊し上げ

12.ダン、メイ探索の旅に出る―女家庭教師の受難

13.後見人ダン・ドーバー、メイの若草の園を掻きわけ戯れる

14.メイとヘレンの逃亡―変な形の雲が出た


いやー、こんな親切な章題みたことがない・笑。
こんな身も蓋もない、情緒の欠片もない、タイトルみたことがないです。

簡単にいえば、生娘のメリイ(メイ・通称ベビィちゃん)が叔父さんと家庭教師にぴしぴしされて、でも一度厳しい寄宿学校にでも入れれば、もっと「いい女」になると追い出され。
行った先が、想像にかたくない百合の園だったと。
新入生の儀式はシーツを捲られて、みんなからお尻ぺしぺしされ、先生達もぺしぺしが大好きで。
夏休みに友達と家に戻る最中に、山賊に襲われ、次の瞬間、インディアンに襲われ。
どうなってんのか分からないまま、叔父さんの元に戻ってたと。
でも、お転婆ちゃんだから、家出しちゃったら、空には雲が浮かんでいた。

雲は落ち付いて何やらお臀のような形に丸くなりました。その間にもう一つの雲が千切れて長く伸びて「九つの尻尾の猫」の形に変わって行きましたが、見る見る中に結び付いてしまいました。それは、ヨオロッパ大陸へ逃げたところで、また二人の柔らかいお臀は鞭から免れないと、暗示している様に思われるのでした。


この短い引用の中にも、トンデモ魂は入念に仕組まれている。
そう、まずは文体に着目。
ですます調だけじゃ済みません。
はっきりいて、低俗な内容にまったく相容れない、童話風なんです。

たとえば、前半で叔父と家庭教師の絡みの部分。

そしてハンナはすっかり裸にされてしまいました。淫獣は、ごっくりと唾を呑んで、なおも攻めの手をゆるめませんでした。そして遂に目的を果たしてしまいました。が、不思議にも、あれほど狂おしく憧れてきたほどの大きな悦楽ではなかったのでした。彼はその意味を考えてみました。



ね、アンデルセンもぶったまげます。
これが官能小説なんて、誰が思えますかいな。

で、この話、訳者(と主張する大谷氏)の後書きによれば、ギリシャ神話や「ビリチスの歌」を引き合いに出して高尚さを強調する一方、これはまだ前半だから、読者の要望があったら、後半も訳すよと言っているのです。
そのくせ、山賊→インディアン→叔父さんの農場への行程は、ぶっとばしの抄訳ともいえないほどのつながりのなさ。
いいように解釈すれば、その部分はそそらないから飛ばした!といえるのかもしれないけど。
穿てば、大谷氏の創作がその辺で、面倒になってなんとか落ちをつけようと、雲がお尻や鞭に見えたなんていう、イソップも真っ青な因果応報に持ち込んだのではとも読めるのです。

創作かと感じたのは、ディテールに進むほど脆弱になっていくバックグラウンドといえばいいでしょうか。
舞台はテキサスとか一応はアメリカ気取りですが、実質的な描写は全くありません。
さらに細部にいくと鞭を形容して「九つの尻尾の猫」なんて、、、。
九尾の狐か!

すみません。。こういう種類の鞭があるらしいです。
cat-o'-nine-tailsっていう。

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さらに今、帯を見ながら気づいたけど、仏蘭西が発信元と主張してる?
そのくせ、原題はなぜに英語なんだ?
完訳ってどの面下げていう!


とまあ、ツッコミ満載の一冊ですが。
敢えて欲情と呼ぶならば、主人公メリイとハンナの百合百合シーンくらいでしょう。
えすえむにおける精神性は一切触れられていないので、盛り下がることならいくらでも保証できるのですがね。

最後に二人を乗せた馬車の御者を務めたジョン君への賞賛で、爆笑して終えたいと思います。
山賊に娘っこたちを奪われて、ちっとも役に立たない脇役ですが。

「まあ?メイったら、およしなさいってば、けがらわしいぢやありませんか。アラアラアラ」
注意をする間もなく、メイはジョンの前に膝まづき男性の象徴に手を触れつつ叫びました。
「まあ?……何と立派な生き物なんでしょう。ヘレンこれなのね、何時かあなたが、お医者のご本を私に見せながら説明して呉れた、男の飛道具なのね」


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