[No.78] 2008/02/21 (Thu) 23:17
もったいないお化けのラインダンス
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第一巻、毎日少しずつ舐めるように読み進めて、ようやく終わったところです。
この本を読んでいて、思ったこと。
凄く当たり前の大前提だけど、「探偵小説って、幻想なんだ」
ほんと当たり前の話だけど、特に日本のミステリってそのことを忘れてる気がする。
勿論、幻想っていい意味の、気持ちいいなあ、この中に身を浸してると、些末な雑事が吹き飛ぶなという意味で。
刑事が靴底減らして走り回るとか、例の社会派と呼ばれる一群には到底展開することの出来ない、別世界がここにある。
たしかに、動機を探れば、むしろ芸の世界のことゆえに、絞り上げるごとき妬みや醜悪な感情も渦巻いているけど、落としどころが全く違う。
それは、もったいないお化けに取り憑かれることもなく、思いついたネタを惜しげもなく短編の中でさらしてしまう行為に繋がっている。
竹野君が、なにしろ余りにも早く手の内をさらすのだ。
「これが実は雅楽の目の付け所だったと後に分かるのだが、その時はまだ…」
みたいなノリ。
ポイントを次々に上げてしまって、めくらましなんか全くない。
大どんでん返しなんて、ミスリーディングなんて姑息は一切使いませんて。
クロースアップマジックの驚嘆に匹敵する感じ?
コインもトランプもみんな見えてるのに、わあみたいな。
で、特に「等々力座殺人事件」なんて、もう「もったいなーーーい」って叫ばずにいられなかった。
これだけのネタ、絶対長編になるのに。
普通、みんなこの十分の一のネタで、ぐじぐじ格闘するんだよと。
竹野君は、それなりのおじさん記者みたいだから、アタフタしないけど。
雅楽は時々、にまーーっと笑っている。
その奥で、戸板康二もまた、にまーーっとしているのが、見え隠れする。
そういう幸福なミステリです。
そういえば、一年位前、テレビ版の雅楽ものを、素氏の古いコレクションから見せてもらました。
竹野君が近藤正臣で、江川刑事が山城新吾だった。
テレビ版も面白かったけど、不思議と原作を読んでも二人の顔は被ってこなかった。
一方、雅楽は勘三郎が浮き上がってきて、電車の中でもニマニマしてました。
素氏はちょっと違うというので、最終巻まで読んで、イメージが違ってくるのか、練り込んでみるのもまた楽しみです。



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