2017-10

パレアナ

人はひどく矛盾しているので、
夜や孤独を求める傍ら寂しさをしとねにまぶたを閉じる。

常に向き合うのは、己と儚く散る夢想の欠片。
記憶の底にある書きかけの物語は、毎日取り出され、綴り連ねられ、砕け散り、また浮かび、また沈み、二度とは帰らぬうたかたとなる。

昔、押し入れではない、引き戸ではないその空間を、僕たちは夜具入れという名で呼んで、確かに昼間は布団が詰め込まれていたのだけれど。
あれは本当に今でも夜具入れと呼ぶのか。
夜になると、夢の道行きの布団が外にでて、そこは朝まで空洞となる。
その高い段によじ登り、見渡せば布団の敷かれた八畳間は、昼とは違う景色に見えた。
がらんどうになった洞は、ただベニアに囲まれた空間にすぎなかったはずなのに、夜でも昼でもない、異相に思えたものだ。
本当に眠る前の、わずかな空間は、家という怪物から僕を引き離した。本を読む楽しみを知る前の子供たちは、夢想の種を別のどこか遠い遠い他人の与り知らぬ土地から拾ってきて、少しずつそこに埋めるしかなかった。

今は夜具入れもないけれど、本を知ってしまったけれど、他人の物語も発端になるだろうけど、昔植えたあの種が、ふと芽吹いていることに気づくことある。

それを知るには、夜が必要であり、孤独が不可欠であるのだけれど。
濁り、矛盾が深まると、すぐに見失う。

芽は蔦のように高い塔のてっぺんまで登攀しているのだが、僕は夜を暗く暗くできないがために、裾の枯れた一葉、緑から黃、濃紅へと瞬く間にかけて朽ち砕けた骸だけを見ることになる。
からからに乾いた欠片は、響きだけを残す。

そこに郷愁はない。
怪物の後ろ姿だけが今はなきベニア、どこかの廃材置き場で折られた板にぬっと影を落としている。

それは求めた種ではなく、恐れの残滓である。

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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