2017-06

空白

鬱神さまのブラックパワーの強大さにおののく。
総てのやる気を吸い上げるので、僕は手も足も出ない。
本当は仕事に行ってはいけないと病院に行ったら言われそうで、そこもいけない。
ここまで悪くなると思ってなかったな、夏の自分は。

以前の職場では少し調子が悪いと休めたし、
完全月給という安心材料もあったし、
何より原稿が山ほど集中してできた、ある意味のパラダイスであったが。
現職はまず自分の席というものがなくパーテンションどころか、専用のPCすらない。
結構な距離歩いて公園に行き、煙草を吸って深呼吸し、落ち葉と寒さに耐えながら、呆然とするだけの時間で終わる。
人とご飯食べられない病を緩和する唯一の場所なので、
雨が降っていたら、お昼は食べずに煙草だけで済ましてしまう。

恐らく多くの人がこんなふうに生きている。
だから少しでも息抜きできる場所があるだけでも、ありがたいと思うのだ。

冬コミの原稿が全く手をつけられず。
途中まではやったけど、休日になっても、鬱神はべとべとさんみたく、背中に貼りついている。
ヤッツケ的に始めた企画には不満があって、
その不満を自分の不甲斐なさの言い訳にするのにも嫌気が差し、
自分が面白くないと思ったものを出す意義があるのだろうかとまた思い、
腹痛と吐き気はいや増し、
ほんのささやかな、何気ない、本当に瞬間そのトリガー自体は忘却してしまいそうなことが、
心の中に墨を落とす。
墨は一滴でも過大な重力を持ち、ずんと下がる。

誰が悪いのでもなく。
ただただ病気だと思うが、どう対処すればいいのか混迷するまま、
僕はなぜか、相変わらず戦前の科学雑誌蒐集に明け暮れる。
枯葉まみれの公園で、空疎なグラウンドを前に食む冷たいおにぎりに支払う対価を、
むしろあの時代の希望に捧げたいとでも思っているのだろうか。

公園の色彩の変化はすさまじい。
元陸軍病院管轄の職場を含むその一帯の広大な敷地には、
眠り続ける風景がそこかしこにあり、蔦は灰色の建造物に絡まって、
立ち枯れの茎の脳神経のように張りめぐらされた隙間に
紅橙黄と僕の知らない古来の色名を散りばめて晩秋を飾っている。
杉の細かな葉は白っぽく茶ばんで落ちて、ふかふかの足元をつくる。
銀杏もナナカマドも狂ったように色を変える。

僕は毎日彼らをみつめ、
驚きながら、
何も見えていないのだ
と思う。

***

老成した子供は
早くに駆け抜けるごとく鬱を体験し、
その闇を突き抜けると、若返るのだと
僕はその人を見ながら思う。
孤独と一人遊び。
あけすけな欲望と足掻き。
それが花開く時が来て、さぞかしこの人は自身不可思議に感じているだろうと思う。
そして決して一人遊びを手放さないだろうとも思う。

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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