2017-09

飛ぶのが怖い

絹子はずっと待っていた。寂しい大人を待っていた。
絹子は人を見る目がないのだけど、それでも第一印象の決め手と言うものがある。
喋り方。選ぶ言葉。表情。
それが多分、その人の人となりを一番表しているのだと思う。
変化が怖いと思う前に、絹子は変化を求めて走り出す。
怖い変化というのは、絹子にとっては、新しい人間関係という一語に尽きるのだ。
そして、変化というのは、旧来に燦然と別れを告げることができるようになることを言うのだ。

大嫌いだったあの人にさようなら。
苦手だったあの人にさようなら。
そして、新しく出会う汚れよ、こんにちは。

でも、いつだって、さよならに心残りがないわけではない。
心残りとよべないほどに、ささやかな残滓があることは、夢が教えてくれるのだ。

また、怖い夢を見ました。
おとうさんに襲われているのだと、胸がえづきました。
でもそこにある顔は、別の顔でした。
絹子は毎月お仕事であの家にいくたびに、布団で横に眠っているたびに、ガタガタと震えているのです。
まるで。それは。
神戸の家のなかに真っ黒に畳に生えていた、タブーという名のカビのようです。
犯すべきタブーなど何もないはずなのに、人の世であまた認められたことすら、神戸では全てタブーでした。
絹子はいま、解放されつつあるのです。
飛び降りても、浮き上がる上昇感がこの身を貫くのを、ただ全身の力を抜いて享受していれば、幸せがちかいことを、頭では知っています。
でも、夢が怖い。
見知らぬ他人なら怖くないことも、そこに襲いかかる顔が、二重映しになって、怖くてしょうがないのです。

絹子は、満ちる君に呆れられてしまうでしょうが、もう百合も薔薇の園もなくしてしまったのでした。
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