2018-07

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夕霧

フの感情、
いやあらゆる私的周辺を抹殺しても、
綴ることが出来る人の方が
景色はよくよく目に飛び込むのだろうか。

草いきれ、
指を這わせれば忽ち流血しそうな
青々としたのびやかな草叢。
できれば首の高さ、唇すれすれの高さまで
繁茂した緑の海に溺れたい。
カメラでしか捉えられない草々の動きより
さらに緩慢に立ち尽くす僕は
ついに飲み込まれるその時まで
どんな表情を浮かべているだろう。

街を歩く時、
煙草を吸うためにだけ窮屈なカフェに座る時、
僕は草の海を想う。
そこへ馳せるのではなく、
気づけば、もはや包まれているのだ。

あの何者でもない
あまりに遅滞した空間。
風紋のごとき無へとのぼりつめる。
そこには、ただ緑の海。
僕が立っていた僅かな痕跡すらない。


いつか嘘つきは嘘に呑み込まれる。


草叢はもう包むその手を伸ばさない。


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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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