2018-02

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恵人

このあいだ高校の同級生に会った。
みんな高校生の時、大人なんてこの世にいないなんてこと想像だにしなかった。
と三十年近く経て、今振り返っているにちがいない。
草食通り越して無食になっている若者とかいうけど、
僕達も、同じくミニマルに目立たぬよう、ささやかな個の充足だけを求めてるのだなとか、感じた。
勿論、まれに自己を律して、前進してる人もいるのだろうけど。
身近には全然いない。

ほんの時々
年賀状とかに書かれている、自分の他人に与える印象をみて、愕然とする。
あまりに自己認識よりも、良く書いてあるので。
お世辞とか割り引いても。
この段差は、無意識の自己演出なのか、それとも真なのか、いつも戸惑う。
ただ真実はこの世に存在しないだろうし、
というか、いわばこれはかの「分人」のなせる業なのかもしれないし、
実際に僕は結実という名の、どの山にも登りかけてすらもいない。

ひとついえるのは、
嘔吐しない程度には、
外部からの評価を浴びている
「べきである」
ということだろう。

明日は平日になるので
そろそろ面接日セッティングされそうで。
万が一の場合、どうやって遁走しようか、
いや諦めて人の海にダイブすべきか。
思いあぐねる。

むしろ人と話す恐怖を克服する力より、
通念を脱し自分を律して、人外で生きる力がほしい。


***

高安国世 歌集「真実」より

美しき平行線を張りいそぐ蜘蛛の行ひためらひもなし

十九世紀オーストリアの小説を疑ひながら今日も訳しをり

適応の動物といふ言葉あり適応の限界というふことも思えり

葡萄の実ふくらみそめし下蔭よひそかにひそかに雨のふり出づ

息がつまる窓をあけようと癖の如く小説のなかにも書きしロマンローラン

橋の上に乾しし青草宵闇にしるく香にたつ踏みて帰らむ






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Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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