2017-09

敬う

昔、昔、
彼女は導き手を探していて、
本から本へと梯子をしていった。
梯子酒より遥かに酩酊は強く、
蟹歩きではなく、地底へと続く階段を心地よく下っていったのだ。
天には瞬く星があり、茫然と見上げていた。

星は星であるほうが、幸せである。
星は近づくと石やガスや塵といった単純なる物質に帰依してしまう。

なので、
ある時期を皮切りに星が天から一粒一粒堕ちてくるようになると、
彼女は空を見上げることを諦めてしまった。
星に触れないほうが、
もう見なくなった闇夜を思い描くだけの方が、幸福だと悟ってしまった。
この解釈が全てただしいわけではないにしろ
失望という彗星の尻尾にぶたれるよりよしとしてしまったのだ。


土曜日、新宿にて。
滅多に公に登場しない、松本次郎さんのトークショーへ行く。
相手は上條淳士さん。
映画についてお話。
上條ファンの勢いにびびる。
二人は全くタイプが異なるので、
なんというか面白いといえば面白いのだが、
砕けて四方に飛び散る会話の破天荒を楽しみつつ、巧みに制御を試み、最後は美しく纏めてゆきたい人と、そうではない人との力加減のブレブレ感が、
まあどうしたもんだろうと思いまして。

なんというか、いろんな困惑が気恥ずかしくなってしまったのかも。
妄想や下ネタは全く問題はないのです。
なんというか、一言でいうと、そんな必要はないのに卑屈があるというか。
僕自身は抑圧の解放が昏い夢想に向かうのは、大好きなのですが。
目前にもし尊敬する人がいても、どんと構えるべきなのかもとか。
生意気の方が愛らしいかもとか。

そして星を見上げなくなった僕は、
その場にいた人たちの眼球のゆらめきを観察することが、興味深い一方、息苦しさも感じたのでした。

それにしても、
次々映画のタイトルや監督の名前って思い出せるものなんだ。
映画も本も溢れるほど手の中にある。
頬張ったまま、嚥下と咀嚼を失念している。

なにしろ、楽しい夏休みだからね。
退職して、肩こりも倦怠感も、全て吹き飛びました。
どんだけ縛られて緊張してたんだろうと思う。



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Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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