2017-07

タヌ嬢になりたいミニ絹

あっという間に一週間が流れてしまいましたが。
先週の土曜日「十蘭を語る」(別名:ビビリまくりのトークショー)を覗いてまいりました。
少々寂れた講義室、前面の黒板に並ぶ四人のパネラーと司会の浜田さん。
偶然受付で一緒になった豚印のPさんとともに、ほぼ一番前の席に落ち着いてしまう。
困るんだよ、こんなに前に座られたらさー、とのっけから緊張全開の絹子でした。

パネラー各人の十蘭作品との出会いから、刊行のきっかけへとゆるゆると会は進んでいく。
当初は十蘭ほとんど読んでいないに等しい人間が、こんな席に座っていてもどうにもならないかなとか、危惧してはいたのですが。
実際には、本好き、書誌好き、ネチネチ作業好きの好奇心旺盛な人であれば、みんな楽しめるような内容でした。
特に日頃、「黒死館辞典」という厄介かつ汲めども尽きせぬ迷宮の泉に腕を差し込んでいる人間の横で、作業の難しさと面白みを聞いている者にとっては、ふむふむと頷ける話も多くて。
異稿の取り扱い、ルビの取り扱い、語彙の正誤/出典の有無などなど、いくら作業しても綿密精確を期せば期すほど終わんない。
特に戦争によって資料の散逸や、はたまた検閲による削除などハードルが否応なく高まるのは、虫太郎も十蘭も同じなんだなとか、しみじみ納得。

色々とオモロイ話はあったのですが。
例えばこんなところで。
三一書房版全集の編纂時、都筑道夫は「顎十郎捕物帳」底本にヌケがあったので、自分で書き足した・笑。
(今回はちゃんと初出誌から補完されるそうです)
十蘭には改稿癖があり、単行本発行時やスクラップ状にした原稿への書き込みが多数あって、どれを選ぶか非常に悩ましい。
(改稿したものの方が、前者よりもよくなっていないことも多々あり)
特に「海豹島」のヒロイン名が、もし最終稿を選んだら、ハナ→ウメになってしまう・笑。
なので編纂者の間でも、侃々諤々になっているのだそう。

笑いの部分も堪能出来た一方で、真面目な十蘭観も聞き逃せませんでした。
先程の改稿癖の根幹についても。
一般的な完成度を高めていくためといった考えから、時代に即して変幻自在に演出を施していった、そして何より十蘭は文章を弄ることを愉しみ続けていたと導いていく。
また戦中戦後の戦争協力/天皇批判などのデリケートな問題に取り組まれている川崎賢子さんが、GHQによる検閲の有無を確認するために、米で調査された話等々。
没後五十年という時間を経て、資料散逸はますます厳しい状況になっていても、一方で後世の研究が一層進み、逆に公開されるようになった資料もあるということで、経年の重みのようなものも感じました。
これから十年、二十年長いスパンをもって、これが初読となる若い世代の期待にも、研究者の期待にも応えられるようにしたいという意気込みも、拳を掲げた熱血とは違ったじんわりとした熱を貰ったのでした。

その他、発行寸前の「十蘭従軍日記」を携えて著作権継承者の十蘭夫人の姪御さんが登場されたり。
その方のブログ管理人の方が、みんなにシャンパンを振る舞われたり。
質問コーナーでは、ムムムとなる手裏剣が宙を舞ったりしておりましたが、一方で、「日影丈吉全集」のCDみたいな特典つかないんですかーなんて、私的にも笑える質問も飛び交い、沢山愉しませて頂きました。
ちなみに、「日影全集」定期購入していたんですが、面倒がって完結してもシールを送らないでいたら、某ルートからCDを頂戴できまして。
でもまだ聴いていないので、バカ!!と殺されそうですが、こんなところで謝罪しておこうと思います。

まあ、CD聴いてないからお礼も言えなくて…ではないのですが、何しろ質問コーナー前後から呼吸困難になってしまい。
写真撮影ではなんとか一枚撮るぜ!と勢い込んで、素氏だけ送り込んでカメラを構えて、ますます息が出来ず。
結局、受付では懇親会出席に○つけたくせに、遁走。

なんといいますか、私、自分にとってコアであり、かつ大切なのに自信がなくてどうにもしがたいジャンル(つまりは幻想系とか)を肴にしないといけないとなると、うわーーってなるんですよねえ。
畏れ多くて恥ずかしいんですよねえ。
加えて今回は、そもそも「王子様見学ツアー」ですから。
もうもう、十分堪能いたしました。
はぐらかし、意地悪満載で、おなか一杯でした。

久生十蘭「従軍日記」 久生十蘭「従軍日記」
久生 十蘭、小林 真二 他 (2007/10)
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一方の素氏といえば。
ちゃっかり懇親会に出席して、王子様の前に坐ったらしいです。
名刺代わりに、同人誌押しつけたらしいです。
よ、よかった…間違っても「眼鏡文人」なんて渡されなくて。

ということで、国書つながりで、ミルボーの「責苦の庭」(フランス世紀末文学叢書)を読了したので、次回はその感想でも書きましょうかね。
それにしても、もうちょっと肩の力をぬいた日記を書きたいです。
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● COMMENT ●

ふふふ

>うっくん
どうしようもない見学ツアーにコメントありがとう。
UPに時間がかかってしまい申し訳ないです。
情熱のドライアイスv-40言い得てみょうですなあv-42
懇親会の話を聞くに社交辞令もお持ちのようで、数年前は自分がフリーズしていたせいか、もっと氷の美少女なイメージが残っていたのですが、意外に(期待はずれに・笑)大人なのかも?
イベントにまで参加していて、全集買わなかったら殺されそうですので(殺されも本望かv-10)、また生涯特約利用させて頂くやもしれませぬ。


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狸穴幼稚園の図書委員

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