2017-06

皐月

青空という言葉を口の中で転がすと、
実際に見上げる爽快感とは裏腹に
僕はバタイユがいつも頭を掠める。
次に小説ではなく伝記が蘇り、
梅毒に罹患した父親が椅子に腰掛けている、
その光景と青空の対比が明滅する
という不穏な状態になる。

五月と聞けば、
立原道造の爽やかな五月に、の
ひたひたとした悲恋と相克を思い出す。

人は動き、汗ばみ、陽光の下、微笑むというのに。

橘小夢の展覧会へ行く。
心臓が弱いから、絵を描くもよし、物語を綴るもよし、好きなことをしなさいと少年時代に父親から云われたと。
妖気もあり、淫靡も多分にあり、恐ろしくあるのだけれど、幻視しながらも、どこかバランス感覚の心棒が通っていて、筆致の美しさには惹かれながらも、
ふと、わずかに、
何かピースの不足した感覚をおぼえる。

隣の夢二の詩画をみながら、自己破壊の崖がちらつき、
ああ、そうか、
そこの違いかと思う。

優劣でも好悪でもなく。
タネの割られた奥にある、
明らかな違い。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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