2017-07

センセエとかいうもの

あるカルチャーセンターに通い始めた時から運命の歯車がぐるんとギアチェンジした。
それから五年余り、かつては本の中でしか知らなかった遠いお星様みたいな人たちに沢山出会う僥倖に恵まれた。
出会うといっても、例えば宴の末席からうっとりお話を聴いていたり、たまに気さくに話しかけて貰ってエヘヘーとなっているぐらいなのだけど。

埴谷雄高は自分は何も教えていないんだから、絶対「先生」と呼ぶなと断った話は余りにも有名だけど、実際そういう方たちにお目もじが叶うと、なんと呼べばいいのか困ってしまう。
面と向かうと安易に「先生」と付けてしまうけど、帰宅してからその安易さになんだか項垂れてしまうことも多かったりする。

さて素氏は、友人知人を若干揶揄して(特にちょっとエラソーだったりすると)「あのセンセエは…」と繋げる。
この場合音を文字にすれば、「先生」ではなく、「センセイ」「センセー」「センセエ」なのだそうだ。
そして、本当の「先生」は虫太郎だけだっけ?(もう一度本人に確認しなくちゃ)

からかいの音質が柔らかく耳に心地いいのだけれど、ちゃんと「先生」との線引きがなされているところが、いいなあと思ったりする。
で、私といえば、出来ればからかいをもって(ここが微妙なんですが、なんともその表出する物が可愛いと言いたいの)尊敬申し上げたい、虫ちゃんやその他幾人かの方に「センセエ」の称号を贈りたかったりする。

先週末はM山センセエの喜寿のお祝いの末席に潜り込ませて貰った。
センセエの浴衣生着替え(贈り物が素敵な文様の浴衣だったから)を観たりして、随所飛び出す犬の話にニンマリさせて頂いてすごく楽しかったのだけれど。
私はいつもM山センセエの中にある、確固たる大人の線引きに惚れ惚れしてしまうのだ。
簡単に言えば、甘えないということ。
齢を重ねれば不自由は生じるものだけど、差し出された手を時には断り、また自分からは決して甘えて求めない姿勢。
宴には各方面からセンセエに教えを受けた沢山の人たちが集まっていたけど、きっとそうした線引きの厳しさがひとつの魅力になっているんだろうと思った。
こんなことを書くのは、かつて自分がある方から全く逆のことを打ち出されて、悲しくなってしまったせいでもある。

人見知りの絹子は、その宴の席で、最低一回は会ったことがある人たちに混じって、焼酎に赤ワインを垂らしたモヤモヤと美しい杯を重ねていたのだけれど。
ちょうど同じテーブルに坐ったT山さんの話があまりにも、あまりにも面白く。
特に専門にされている日本史関係や葡萄酒のことなどはもとより、たった一度深夜TVで観た映画の粗筋やディテールを事細かに再現熱弁するあたり、あるいはほろ酔いになれば口ずさむ歌(これは和歌や浪曲めいた、つまりは一般人が決して口の端にのぼらせないもの)などなど。
博覧強記とはこういう人をもっていうのだとしかいいようがなかった。

でも、チョット待って!
ギアチェンジしてから、沢山であった人の中には、確かに映画通ミステリ通と超のつくオタクの人たちも数知れず。
でも今までそんなに楽しいと思えなかったのはどうしてか。
それはね、あのフジイアキラ現象ですよ。
口からどばーっと延々と、トランプが出てくる出てくるというやつ。
つまりは普段趣味を語れない人にとって、自分の持っているマニアックな知識を出すことは幸せかも知れないけど、単なる「ひけらかし」になったって、面白いわけがない。

投げられた球を受けて、溢れる知識の中から、右へ左へ果てはとんでもない方向まで、相手を連れて行ってくれる、そういう人でした、T山さん。
そして、相手を受けて言葉を選ぶ、状況を選ぶ賢明さの底には、「心遣い」があるんだなーと、御本を読んでますます感心したのであります。
九月とはいえ、まだ半袖で汗を浮かべる人も多い中、彼は颯爽とソフトスーツに身を包み、怪しいステッキを持っていた。
コミケに話が及んだとき、本造りが美しくないように思えたと発言されてもいた。
美学とか、スタイリッシュとかそういう、一面ツンといた嫌味君な風情も漂わせつつ、逆にその毒の部分も魅力に変えうるような人。

って、なんだか誉めすぎかも。
でもね、時々育ちのいい人(ここには揶揄はなく)の「心配り」を一義に教育された底力に、うわーっと畏れ入ることもあるんですよ。

ということで、私にとっては珍しい、先に人を知ってからその著書を読むというわざになりました。
アイスクリンや塩豆の項が大好き。
そうそう、お持ちになっていたステッキの謎も解けました。

お見舞い道楽。―これ、どうぞの心持ち。 (ワールド・ムック (513)) お見舞い道楽。―これ、どうぞの心持ち。 (ワールド・ムック (513))
高山 宗東 (2004/10)
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ところで、宴前に下北沢で古本行脚もしましたよ。
最近若い方が開かれているお店がとにかくいい!
その証拠に旧来の古書店とは違って、お客さんの出入りが多いこと多いこと。
ワクワクが一杯落ちてます。
ということで、下北沢でおすすめは、古書ビビビさん、そしてこの間神戸の六甲界隈で発見した口笛文庫さんも、激しく奨励中。


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