2017-08

michael

二日ぶりに外に出て渋谷ユーロスペースでサイレント映画見てきました。
なんと立ち見(実際には座席脇の階段に腰掛けて)でした。
名画座系が盛況で嬉しい限りです。


カール・Th・ドライヤー コレクション/ クリティカル・エディション  ミカエル [DVD]カール・Th・ドライヤー コレクション/ クリティカル・エディション ミカエル [DVD]
(2011/09/24)
ベンヤミン・クリステンセン、ヴァルター・シュレザーク 他

商品詳細を見る


サイレント映画の負の特徴といえば、演技力が薄れてしまうことにあると感じていたのですが、これは逆にサイレント時代の特徴である、表情のアップによってあらゆる苦悩が濃密に表現されていました。
一介の画家を目指す青年ミカエルが名匠ゾレに自分の画を見てもらいにいった縁で彼のモデルになり、同性愛関係に陥る。
ゾレに肖像画を依頼したロシアからの亡命貴族ザミコフ侯爵夫人と愛人関係に陥ったミカエルは、次々にゾレの作品を売っては裏切りを重ね、終にゾレが死の床にあっても彼の元に駆けつけることなく、ゾレは孤独の死を迎える。
といった粗筋なのですが、登場人物の目の物語る表現力が恐ろしいまでに出た作品でした。

ミカエルが自分を単なる金蔓としてしか感じていないと判っても総てを与えようとするゾレの苦しみと、解放。
既に喪失感を湛えた、絶望の瞳で刹那の快楽を求める侯爵夫人。
夫人の目の奥、深淵を覗きこみゾレからの偽りの自由を勝ち得る残酷な、一方で幼いミカエル。
ゾレに傍にありながら、ミカエルのように愛を齎されない、下僕や友人たち。
彼らが、四方の角のぼやけた楕円形の闇に白い顔
(この頃は光源が弱くコントラストを際立たせるために極端に俳優は顔を白く塗っていた)
のなかに、皮膚よりも一層白い、眼球が言葉を発するのです。

ジレを演じるのは、監督として有名なベンヤミン・クリステンセン。
そのギロギロとした三白眼が蠢くと、声が地の底から響くよう。
俳優としても非常に稀有な才能を持った人だとわかります。
また、ドライヤーにもクリステンセンにも共通するモノクロの闇と光の話術が際立ったのは
ミカエルがジレの大切なデッサンを盗み出すシーンでした。
巧緻にも壁にはまるで偶然にランプが描き出してしまったような悪魔の姿が小さく壁紙に映っていたのです。
大天使であるはずのミカエルは、救いを齎すどころか
瑣末な矮小な名ばかりの自由をも自らの手で叶えることのできない、小悪魔に過ぎません。
そしていくら裏切られても彼に与えようとする、ジレの「偉大なる愛」という言葉も最後までアイロニカルに響くばかりです。

今回終演後に短いトークショーがありました。
実はなんだか聞くに堪えない押し付けがましい部分があり、ちょっと悲しくなりました。
勿論、芸術の原動力は、作者の生い立ちにあることは否めません。
けれども、総てがそこに帰結しまうならば、作者は自家撞着から抜け出せていないということにならないでしょうか。
解釈は人それぞれあっていいと思いますが、常に同じ手法で一元的に見つめることは陳腐ともいえますし、ましてや映画一作品を見た直後、余韻に浸るまでもなく、そういう解釈を大声で暴力的に押し付けるのは、非常に不快に思えました。

mikael01.jpg

ダメダメ美青年ミカエル(ウォルター・スレザック 当時22歳)

スポンサーサイト

三猿 «  | BLOG TOP |  » 時間泥棒

プロフィール

絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
Twitter account:@quinutax

最近の記事

FC2カウンター

カテゴリー

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

月別アーカイブ