2017-05

色の選択

正月にBOで月末まで全国どこでも使える本10%OFF券もらったので、
民度の低い、よって、すっかすか品揃えのご近所BOを覗いてみる。
漫画だけで2000円超えたので、割引券使ってみた。
でも帰宅後、ダブリ1冊発覚、割引の意味が消失する。

ま、一條裕子作画の「阿房列車」があったので、
おおついに、百閒も漫画化されたのか、と嬉しくなった一日でした。
といっても、2009年から始まってるって、相当無知だわ。
既に3巻まで出ているらしいので、いそいそ集めようと思う。


阿房列車 1号 (IKKI COMIX)阿房列車 1号 (IKKI COMIX)
(2009/02/24)
内田 百けん、一條 裕子 他

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**

世の中、廃墟好きな人はそれなりに多いと思う。
かくいう僕もそうで、写真集眺めたりするとドキドキする。
朽ちゆくもの、壊れゆくもの、寂寥への憧れなんだろうかねえ。

けれど、そういう中途半端な物好きは、
ちょっと昔な雰囲気があると「レトロかわいい」とか叫ぶ一群と同じで、
脆弱な興味しか抱いていない。
君はあの、廃ホテルで、閉鎖された遊園地で、軍艦島の中で
生活を送ることが出来るのか、それもたった一人で。
さらに言えば、その空間が真実滅びゆくのと時計を合わせて、自ら滅することができるのか
という問いかけには、ほとんどの人が否と答えるにちがいない。


黄色い雨黄色い雨
(2005/09)
フリオ リャマサーレス

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「黄色い雨」はそういう覚悟の物語だ。
ただ異なるのは、既に壊れかけた空間に意を決して身を投じるのではないということ。
スペインのある限界集落が、ひとつ消滅する。
そこで生まれ育った男が、多くの人が立ち去る、身罷るのを見送った上で、最後の一人となることを拒まばなかったということだ。
最初から彼は屍であって、屍が僕たちに、どこにでも起りえそうな、けれど総て手のひらから放ってしまった物語を、ずっと聞かせてくれるのだ。

最後の隣人が村を捨て、妻と犬と自分になったとき、妻は縊死する。
犬と彼だけになったあと、次々と死者たちが、家に訪れるようになる。
恐怖譚ではなく、ただ死者たちとともに、暖炉の傍に彼は座って昔を繰り返し回想するだけだ。
嵐や吹雪が捨てられた建物を次々に壊してゆく。
哀しみが、それら崩れゆく音に折り重なり、景色は次第に色を失ってゆく。
妻の死から、数年が過ぎている。
色がないわけではないはずの景色なのに、僕たちには色が見えない。
ただ幾度も幾度も提示される、「黄色」という色以外は見ることが許されない。

なぜ、「黄色」なのだろう。
秋に地面を覆いつくした枯葉なのか、
あるいは妻の首くくりの縄の色なのか、
はたまた死者の肌や、濁った眼球の色なのか、
さらにいえば……。
色彩に対する感覚は文化によって異なる。
人の原風景によって異なる。
だから、この荒涼でありながら、
じっとりと湿度の高く重く圧するような、
いわば死者はもはや死なない、
永遠に語り続けることの出来る散文詩の唯一赦された色彩に、
人は疑問符とある種の敬意と、
ひどくありふれた陥穽の深さを見つめ続けるような気がする。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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