2017-05

ぺこり

いよいよ大晦日ですね。

29日は、冬コミに参加。
新刊「戦前『科学画報』小説傑作選2」も無事に販売に至りました。
雨降る寒い中、お越しいただいた皆様
それから、1号発刊以来、ヘボサークルとしては信じられないお褒めの言葉を下さった皆様
また情報拡散にも一役も二役も買ってくださった皆様
恐縮至極ではありますが、本当にありがとうございました。

なんだか、復刻とか、アンソロとか
他人の土俵を借りた引け目のような気分が拭い切れていなかったのですが
今年は少しそういう気持ちを改めさせられる転機でもありました。

やるべき作業は山ほどありますが、
来年もいい同人誌が作れるように、頑張りたいと思っております。
まずは3号を5月文フリあわせで出せるようにすること。
3号は最終巻でもありますので、まとめの作業にも入ります。
夏以降は、自分の中ではいくつか企画があるのですが、また追々発表します。

受容の多さだけを考えて、自分のやりたいことを狭める方向というのは
非商業誌である同人誌には、むしろ理念を汚すことでもあるので、
傑作選の3号がひとつの区切りであるならば、
以前に準備していた、虫太郎のあれこれやジュリアン君、武彦君からも逃げずに闘わねばと思う次第。

受容云々ではなく、
せっかく現在の状況(印刷方法や自分の立場)が比較的ハードルが低いのであるならば
やりたいことを形にしましょうよ、絹山。
っていうことで、来年も「変なもの」出しますので、よろしくお願いします。

**

では、今年出会った素敵漫画の最後です。

松本次郎漫画との最初の出会いは、昨年、BOで表紙に惹かれて買った「革命家の午後」という短編集でした。


革命家の午後 (Fx COMICS)革命家の午後 (Fx COMICS)
(2007/07/19)
松本 次郎

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女性キャラのエロチックさと、ロシア好き左傾した僕の心を鷲づかみする、革命を笑いと残酷さでパロディにする手法にしびれました。
今年はひたすら松本次郎さんの漫画を集め続け、既にコンプしてしまったのが、逆に悲しくなってしまうのですが、悩んだ末以下の二作をベスト1,2に選びたいと思います。

第二位


べっちんとまんだら (Fx COMICS)べっちんとまんだら (Fx COMICS)
(2009/11/26)
松本 次郎

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そして第一位は全6巻まとめて。


地獄のアリス 6 (愛蔵版コミックス)地獄のアリス 6 (愛蔵版コミックス)
(2014/03/19)
松本 次郎

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「フリージア」が一番有名な作品だとは思いますが、それ以降の方が惹かれます。
何より「べっちん」の頃から、画力が完璧の域に達し、キャラの魅力以上に画面構成や構図、背景の廃墟感、趣味のサバゲーを生かした武器や戦闘シーンの美しさが光ります。
初期の「ピーターパン」を題材にした「ウェンディ」や、「不思議の国のアリス」を題材にした「熱帯のシトロン」から、ずっと続く麻薬に酔うような幻視感は、どの作品でも付きまとい、その眩暈が戦車の中に住む杉並区のゾンビたちを掃除する女子高生二人の、妖しいやりとりである「べっちんとまんだら」まで発展すると、上質な洋画を見ているような気分にまで変わってくるのです。

表現は残酷で、人も大勢死にます。
でも「死」自体はむしろ残酷でもなんでもありません。
同量の「死」がありつつも、初期は先の幻視感や過剰な性描写が前面に出ていたところが、「未開の惑星」という二巻本辺りから、精神を刻む痛みの方が大きく描かれるようになります。
松本作品の多くの男性キャラの多くは(フリージアの叶は少し違いますが)、精神的に弱くへなちょこで、その典型が「地獄のアリス」の主人公に集約されています。
スナイパーの父親に認められたいだけで、女装した囮でしかなかったシュウが、父親を超えるスナイパーになる。
というと、よくある熱血少年成長ものなんて思われてしまうかもしれませんが、全く成長しません。
ひたすら駄々っ子です、子供の思考回路のままで最終章を迎えます。
彼と一緒に戦いの旅を続けるのが、ダッチワイフ型アンドロイドのアリス。
互いに寄りかかり合うシュウとアリスの関係は、ひたすらに幼い遊びの延長戦で、そこに大量の死が待っています。

松本漫画の残酷さは、僕がよく言う「寂しさ」とはまた別の故郷を持つもので、
もっと何もない荒野のようなものです。
感情を打ち払ううちに、夢に夢を重ねていくうちに見える虚空です。
だから細部まで書き込まれた弾丸が飛び交う中で、終末の世界がぽっかりと青空を見つめているような気分になるのです。

そうそう、今年読んだガルシア・マルケスの「愛その他の悪霊について」という作品がありました。
その異国の凝縮された蜜のしたたる究極の愛と、松本さんの「善良なる異端の街」に収録された「カーミラ」という作品は、ストーリーは違えど、非常に似た雰囲気のお話なので、マルケス・ファンの方にもお勧めです。

物凄く好きなのだけど、松本次郎さんの素晴らしさを伝える筆力がないのが、悔しいです。
少しは文章上達するように、来年はもっとまともなこと書けるといいなあ。



愛その他の悪霊について (新潮・現代世界の文学)愛その他の悪霊について (新潮・現代世界の文学)
(1996/05)
G. ガルシア・マルケス

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善良なる異端の街 (GAコミックス)善良なる異端の街 (GAコミックス)
(2010/01/07)
松本 次郎

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Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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