2017-08

古本をめぐるエトセトラ

三週間ほど前の土曜の夕方。
西田○行と伊○蘭がナレーションをつける「人生の楽園」という番組を眺めていたら、金沢の古本カフェが取り上げられていた。
この番組、定年後の第二の人生を如何にエンジョイしているかを主眼に置いているのだけど。
カフェのオーナーは長らくの転勤生活を経て早期退職し、まずはネットで自分の本を売り出したという。
でも売れない。
そこで、自宅を改装して古本屋兼カフェを開いたという話だった。
間口に比べて奥行きが長い構造は、天井から床までびっしりの棚をうまく配してあって、さらに穴がそこここに設けられていて、飴色の光源に照らされた木の空間もめっぽう素敵だった。
奥方がお茶とケーキを出し、ご主人がカレーを出す。
その二人が初めて神保町に繰り出し、古書会館の市に入札するというシーンが映されていた。
鏡花の全集など計十数本に入札して、約半数を落としていた。
西田○行は、宝くじに当たったみたいに喜んでみせていたけど、本当は違うと思う。
そんなにせり落とせるということは、入札価格が高いのに決まっているのだ。
店の特色を出したくて金沢にまつわる作家と鏡花全集を選んだみたいだったけど、現在作家の郷土にまつわる書誌って、一風変わったものじゃないと「特色」なんて言えなんじゃないかなとか。
もともと自分の愛読書を店に並べていて、愛着ゆえの値付(「話の特集」に結構な値段がついていたものねえ)とか。
私みたいな一買い物客はいうべきじゃないんだろうけど。
お店の雰囲気はとってもいいのだけど、いいだけに心配してしまったりした。
ちなみに件のお店はこちらです。

深夜番組で草刈○雄がナビを務める「エコラボ もったいない博士の異常な愛情」というのがあって、こちらはブックカバーにまつわるお話。
もったいないお化けが常に背中に乗っているのか、素氏もチラシは元より包装紙や紙袋を捨てないので(本の修復の時の見返しになるとかなんとかで)、こっそり捨てていたりするのだが。
書店でもらうブックカバーは捨てられるのはもったいない。だからどうすればいいのか、という提案番組。
絹子が最近最も利用している生協書店では、一切袋もカバーもつけてはくれない、付けたいやつだけやれとばかりにレジの向こうに積まれている。
確かにこれが一番無駄がないと思うんですよ。
さて番組内でちょっと目を開かされたことといえば、ブックカバーとは、本を守るためにあるのと同時に、中の本を他人に知られたくない。。。なるほどねえ。
草刈さんは、涼宮ハルヒを隠していらっしゃった(笑)。

捨てられないブックカバーとは何か…。
その一つの解答として、ブックカバー自体が本になってしまうという代物で。
外して畳んで、一番傷みやすい背の縁の辺りをミシン目に沿って切ると、豆本になると。
地図よし、写真集よし、長編の分割よし。
確かに工業デザイン的に優れていたんです、可愛かったんです。
でもなあ、全十数枚揃いにならないと読了できないカバーって、、さらには下手すりゃこれ自体に怪しい値が付くんじゃないかと。
まだ見かけていないけど、しばらくすると最近大流行の、R25とかmetro minといった読み応えたっぷりのロハ誌が値段がついて動き回る気がしてならない。

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というわけでもないんですけど、先月末創刊された都営線配布の「中央公論Adagio」をね、素氏にねだられて創刊日の朝、出勤前から最寄り駅で三冊掴んでいったわけですよ。
折れ曲がらないように、職場でビニール梱包までして。(実はエスカレーターで二度ばらまいた)
なのに昨晩もまだ住吉駅にはわんさと積まれていた。
乱歩と浅草っていっても、みんな興味ないのかなー。
まあちょっと広告臭がきつくて、読み物的には今一歩感は拭えない代物なんですけど、次回以降もいい特集が出ることを祈ってます。

さて最後は連休後半に岐阜→郡上八幡に向かったお話。
事前調査でどうやら郡上には古書店がないことは掴んでいたので、電話帳を繰る(ネットが盛んになる前は、もっぱら新しい町へ行くと電話帳でさぐったものである。電話ボックスの中で汗を拭きながらメモをとる、時間がなければ破る…スミマセン、この手段は十代の中古レコードサクサクツアーからの引継ぎ、とはいえ、昨今は電話ボックスが見つからないんだよねえ)こともなく、ただただ、こんな町並みの中にこそ、古本カフェが似合いそうと別のワクワクに浸った次第。
初日のわれらがご用達の東横インでは、もしも(ここ傍点)最終日の岐阜古書ツアーが祝日の呪いなどでぽしゃったら、、、という妄想もとい妄念に近い危惧を吹き飛ばすために、ロビーのパソコンで名古屋駅周辺の古書店まで調べて印刷していたのであった。
結果的には、岐阜駅周辺で三軒回ってへとへとに。

南方の古書センター。
センターというより、不思議な二階家になった店舗で、埃多量系。
入ってすぐに、ほるぷの復刻シリーズがダンボールにぎっしり、オール300円に飛び上がる。
復刻にも良し悪しがあるのだろうけど、基本的にイラストがいっぱいの児童書関係は掴んでしまいがち。
小ぶりでもハードカバーには違いないので、一軒目では我慢すべきではなかろうかと、白秋とかプロレタリア児童文学などは、ぐっと堪える。
それでも山村暮鳥「ちるちるみちる」や、初山滋挿画の児童書、明治期の男色文献「当世少年気質」の和綴じ本は外せない。
さらに漫画の群れの中に、三冊200円の雑誌の山が。
みづえだ、みづえだ。
今はあんな風に軟弱になってしまったけど、80年代のみづえはよかったと、建築関係を掴む。
問題は、あとの二冊。
絹子が「ぱふ」のさべあのま(A5版の時代)か、みづえの芋銭特集にするか唸っている脇で、レジにて親子が争い始める。
「三冊で200円だから、もう二冊選んでください。そうじゃなかったら、一冊200円」
レジのおばさんの言い方が気に食わなかったというよりも、おそらく後二冊選ぶことが面倒で、家に本が増えることが面倒なのだろう。
「さ、それ置いてもう帰りますよ」
母親の容赦ない言葉に泣き始める子供、さらに父親もぐいぐい腕を引く。涙はさらにぼろぼろとこぼれだした。
なんだかなあ。
選んだのがどんな本なのか漫画なのかまでは分からなかったけど、父母そろってあれはないんじゃないだろうか。
奥にはいい絵本がいっぱいあったのに、なんで選んであげないのかな。

そんな憤りを胸に、狭い文庫棚の通路を抜けて、二階へ。
素氏は既に、埃にまみれて本を積み上げている。
ここは以前は奥に棚が繋がっていたというが、今は壁面だけしか棚がなくて、まるで女主人がドレスの裳裾をしゃなりしゃなりと揺らしながら階下に集まった若いツバメたちを見下ろすような奇妙な造りになっているが、中身はオール300円である。
素氏いわくここは、岐阜の古書店の元締めらしいのだが、なんとなくわざとセドってくださいと投げ出しているような、見る人が見たら嗚呼というような戦前、戦後直後の本が微妙な雰囲気で並んでいる。
絹子さんはむむむと悩みつつ、アナトール・フランスを一冊掴んだのであった。

名鉄岐阜まで戻ればよかったのに、「同じ道は通りたくない」という散歩狂の素氏にそそのかされて大回りした後、市役所近くの商店街の一角に二軒の古書店を発見。
まずは、我楽○書房。
うーん普通プラスちょっといい感じ。
普通というのは、見やすくて値段もそれなりにつけてある(我々にとってはつけすぎている)。
見やすいお店は安心する、けど掘り出し物には欠けることがある。
それにしても、たとえば荻窪の線路沿いにある某所みたいに、カウンターの前に積み上げられた本がぐちゃぐちゃにしわしわになっていたり、まるで棚に近づくなといわんばかりに足元に堆く在庫か商品なのか分からない状態で積まれている(せめて背中を見せてくれれば狭い店内でも「見せる」につながるのに)のをよく見かけるけど、あれは売る気があるんだろうかと思わずにはいられないものです。
で、こちらのお店では今江祥智の絵本評論と、コクトーの映画論を廉価で掴んだのであったが。。。。最後に泣きを見ることになる。
もう一軒は角を曲がって二階にある岡本○店。
まあここは、フツーです。フツーにいい本が、フツーの値段だったので、何も買わずに階段を下りてみたのでした。

さて、脚力が許せばぶっくおふにも参じようと思っていたのですが、さすがに連日の強行でヨロメキ。
岐阜駅に戻ってミスドで茶をしばく。
さらに一時間後、周到に用意されたカートに土産や本を積めて我らは名古屋駅の待合室でだらけていたのだが。
その時ふと絹子はミスドでこんな本買ったよーの素氏とのみせびらかし会で、二冊の本を出していなかったことに思い至ったのである。
え、まさか?
必死にリュックを探る、カートを探る。
おお、そういえば岐阜駅のコインロッカーで詰め直していたときに、あのガラクタで買った紙袋を見なかったじゃないか。
ミスドだ、ミスドしかない。

普段携帯は持っていてもほとんど使わない絹子さん。
悪い汗を流しつつ、iモードで電話番号を検索。
めちゃくちゃ使い方が分からん。でもバイト情報で、なんとか電話がつながった。
ありました、ありましたよ。
親切な店員さんに着払いで送ってもらうことに。
もうその送料入れたらフツーの値段を超えるかもとか、考えない。
店先で諦めて元に戻すのも、一つの縁が離れていく瞬間だけど、こんなアホなことで二冊と縁切りになるのは悲しい。
とりあえず、ミスドのお姉さんが苦笑いを浮かべつつも無事に発送してくれることを祈っている次第である。
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