2017-09

ジュリアンらしからぬ

ウツの雲が少し晴れて、人と喋れるようになった。
でも、喋りすぎると必ず反動が起きるので、抑えるべし。
人と話すと、悪い瓦斯も抜けるが、内省が減り、ふと気づくと新たな瓦斯が補填されている。
この抜き加減、バランスがとても難しいと思う。

「モイラ」の主人公ジョゼフは結局、本物のモイラに二度しか会いませんでした。
一度目の出会いで、非常なる嫌悪と同時に、恋を知りました。
二度目の出会いで、「恐ろしく純粋な」彼はそのアンビバレンツに耐え切れず、モイラを消しました。

このお話、性愛を完全否定する潔癖青年の破綻とも読めますが、
実は本人自覚のないまま、男女ともに惹き付けてしまう魔性が非常に巧く隠されているのがミソです。
もし彼がわずかでも、自分の魅力を知っていたなら、この話は成立しません。
いや完全に無自覚、未発達だからこそ、謎のフェロモンを出ているのでしょうけど。

そして巧みに隠されている、最初からジョゼフをかまい続ける、
彼を苛立たせ続ける男・プレーローとの関係こそかジュリアンが書きたかったものかもしれません。
ひたすら何も見えていない主人公視点ではなく、
この男の内面から描いても非常に面白くなった気がします。

もし「モイラ」で二次創作するなら
(もうそんな力は僕にはないけど)
プレーローが、ジョゼフが唯一それなりに(ほんと、少しだけ)信頼をおくデヴィットとの関係に、ヤキモキしているところとか、モイラ消滅後、ジョゼフを救おうとするシーンとか、プレーロー側から書きたくなるのですよ。

で、続けてジュリアン77歳の作品 「悪所」も読了。

あーー。これ本当にお勧めできないです。
ジュリアンらしさが、すっかり枯れてしまって。
陰々滅々、闇夜に泥沼に突っ込むような暗さだっていいじゃないかのジュリアン。
そこには必ず、執拗なまでの内面との闘いがありました。
でも、「悪所」にはもうその影さえないの。
いつも醜悪な人間は出てきたけれど、必ず被害者の子供たちは、時には幻に逃げつつも、内なる声を発し、昇華していきました。
この作品にも悲しい少女は出てきます。
けれど、彼女は何も物語らず、心の声も聞かせてはくれません。
緘黙したまま、最後の行動をおこしただけです。
彼女を毒牙に掛けようとした叔父さんも、血の海へと果てました。
(いつもジュリアン作品の自殺方法って、静けさに反比例するように凄まじい)

ま、最後のお楽しみ的に取っておくほうがいいと思います。


悪所 (1981年) (ジュリアン・グリーン全集〈13〉)悪所 (1981年) (ジュリアン・グリーン全集〈13〉)
(1981/10)
ジュリアン・グリーン

商品詳細を見る


スポンサーサイト

透きとおる «  | BLOG TOP |  » もいら

プロフィール

絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
Twitter account:@quinutax

最近の記事

FC2カウンター

カテゴリー

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

月別アーカイブ