2017-08

grappa

須賀敦子『トリエステの坂道』は、イタリア人で早逝した旦那さんと、その家族親戚にまつわるエッセイなのだけど。
「重い山仕事のあとみたいに」と題された章に、密造グラッパという酒が出てくる。

話の中心となるのは、洒落た山男。
この老人は、旦那さんの弟のお嫁さんのお父さんにあたる。
「チロルに隣接したトレント地方の海抜千メートルの山の共同体に生まれたフォルガリア人」という説明が書かれているけれど、まったくピンとこない。
フォルガリア人とは、民族のことなのか、それとも県民的な地域性を表しているだけなのか。
欧州では国境が密接していて、永い歴史の間で多くの民族が入り乱れているのが当然で、他民族感覚が日常に混淆することにとても鈍感な僕たちは、ついつい攫みきれず読み飛ばしてしまう。

須賀敦子のエッセイには、多くの人達が出てくるけれど、
ただ仲間や知人がよく観察されているだけでなく、日本の自分の血縁者、旦那さんの血縁者、もう次から次へと出てくる。
それぞれにわだかまりや、距離が置かれて観察されているけれど、「逃げてしまう」疎遠さはなく、ただ脇に坐っているだけであっても、深く交わっている姿に驚かされる。
旦那さんが亡くなっても、イタリアを離れても、ずっとその人たちと繋がっている。
時には、会うことのなかった、既にこの世からいなくなってしまった人の思い出を(例えば、旦那さんに出会う以前に亡くなった、彼の父や兄や妹)、まずは姑の言葉を通して、さらに須賀敦子の想像と読み解きによって、人々が蘇ってくる。
もうこの世にいないひとたち。
ほとんどが不器用で、巧く世の中を渡れなかったひとたち。
目の前にいれば腹立たしいような、けれど思い出してしまうと、物悲しさが募る人々。

ずっと雨の音を聴いているような、
肌寒いので、一枚毛布を首まで引き寄せたような、
そんな感覚が、ずっと読んでいる間つづいていく。

で、その山男さんは。
遊びにきた須賀敦子に、家族ですらどこに隠してあるのか知らない、密造グラッパをくれた。
直接手渡すのは照れるので、息子に託して。

グラッパとは、ワインの搾りかすになった葡萄の実と種と皮を原料にした、蒸留酒らしい。
度数は50前後でかなりきつい。
昔は医者に見放された肺炎患者に飲ませて、喉に詰まった細菌を消毒させて、生き返らせたこともあったという。
いわく「農村や山の民だけが口にする野卑な酒」

飲んでみたいなー。
気になるなー。
もちろん、日本にも輸入されてるけど、やまやとか行ってもないだろう、通販じゃないと難しいかもしれない。

しかし、なぜボトルが奇妙な形をしてるのが多いんだ・・・。
贈答用っていっても、これは・・・。
かなり迷走してるな。

img61573143.jpg img60928305.jpg




スポンサーサイト

岐路 «  | BLOG TOP |  » そふとくりーむ

プロフィール

絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
Twitter account:@quinutax

最近の記事

FC2カウンター

カテゴリー

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

月別アーカイブ