2017-09

目を開け

元旦に放映されたNHKの「1914幻の東京 よみがえるモダン都市」をようやく観る。
予告を見るだけでは、これはレトロ建築ミーハーの心をくすぐるような映像作品になっているかと思っていたが、内容はかなり違っていた。
もちろん、新橋、銀座、浅草、東京駅周辺とCGで風景が再現され、そこに蠢く市民は実写で組み込まれるという手法は美しく、活気に溢れたあの時代をよく伝えていたし、建築も凌雲閣(十二階)をはじめとして、見ていて楽しいものだった。

でも、NHKの伝える姿勢は、単に郷愁を誘うものではなかった。
大正時代というのは、僕の最も憧れる時代であり(虫太郎は14歳の青春まっさかりですね)、なぜかと言われれば、来るべき崩壊へ向かって壊れる寸前の頽廃に満ちた、世紀末の様相を持っているからなのです。
NHKは、その崩壊の道筋を、明確に描き出していました。
大正デモクラシーが盛んになり、欧州文化の流入で街は一気に華やいでいく。
豪奢な洋風建築が立ち並び、三越が開店し、映画館は連日大満員。
一方で、物価はあがり、貧民窟では残飯屋が職工の腹を満たし、格差は広がってゆく。
そして、九年後には、関東大震災がやってくる。

番組では、現代のリーマン青年が、1914年の月給取りのしがない男性の生活を覗くという設定がなされていた。
常に瞳は、現在から投げかけられていた。

この番組が、元旦に放映されたことに大変な意義を感じる。
一度も言葉には出されなかったが、これがNHKの鳴らす警鐘であることは痛いほど判る。

1914年、国会議事堂にデモで押し寄せた民衆は、三越に遊山にでかけ、青島制圧の報道に湧き、日章旗を振って大騒ぎする。
その姿は、どこへでも列をなし、反核のデモをなし、同時に五輪招致にヤンヤする民衆に重ならないか。
景気は一過性の上昇を見せて、成金を生み、またたくまに大恐慌へと落ちた。
今また格差は広がり、国家は再び「戦争は好景気を生む」という幻想に取りつかれて、どんどんと右傾化してゆく。
そして大震災。

百年後の今、再び同じことが起きている。
その恐ろしいシンクロナイズを彼らは問いかけたかったに違いない。

***

幻想的な芸術を志向する多くの人が、
同時代の政治に対しては無関心を装い、
一方で、過去の政治思想や革命に関しては決して無知ではなく、
むしろ精通していることがいつも不思議でならなかった。

いわば過去のそれらの闘争は、事象として深く認識しながら、
目前の彼らを阿呆の踊りと冷笑し、ひたすらの絶望と諦念を表には出さない。
ここではないどこかへと、逃げすさぶ心。
非常にスマートで、ある種、非常に狡い心。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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