2017-07

第三回 ズンドコ杯争奪 読んでみやがれ!感想文の会

第三回 課題図書

☆『球体の神話学』 高橋睦郎 河出書房新社 1991

出題者:絹山絹子
コメント:10年位前貪るようにこの辺りを読んでいた。詩人が鋭敏な感覚を丁寧に丸めていく過程のようなもの。過程とは過程自体が面白いのであって、丸まりきったら苦いんだけどね。

 
☆『贋金つくり 上・下』  アンドレ・ジイド 山内義雄・訳 新潮文庫 1952

出題者:素天堂
コメント:プリティボーイズメルヘン(vvv)←ハート

◇ 提出期限 4月25日


ズンドコ杯については、こちらを参照のこと。


性懲りもなく第三回です。
また上下本かよ!と睨んでいます。
天麩羅が食べられるくらいにお腹の調子が回復してきたので(相変わらず一日三回以上ですが)…というわけではないのですが、久々に感想文で身悶えてみたいと思います。

本当は復調宣言ということで、今月は岩波文庫月刊と題して、(目標は「中学生の私よ甦れ」ということで)一日一冊岩波文庫一人感想文の会をやろうと思ったのですが。
既に初日にして、やられました。


あきらめ,木乃伊の口紅 他4篇 あきらめ,木乃伊の口紅 他4篇
田村 俊子 (1952/04)
岩波書店
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1952年発行となっていますが、94年の復刻フェアで復刊されています。
それでも、もう品切れの可能性大なのかな。

田村俊子といえば、田村俊子賞ですが。
森茉莉、武田百合子、倉橋由美子と、受賞者は大好きなのに賞を冠した人の作品には触れたことがない。
しかしねえ、非常に苦しかった。
正直にいえば、胸が悪かった。

例えば、普段ファッション全般に全く興味がない器だけは女性の箱に入った女の子が、異性という目で恋愛をするのではなく、むしろ中性体として独自の審美眼によってごく限られた他者に心を開くような女の子が、女性専用車に閉じこめられて、その中ではひたすら化粧を続ける女の子たちと、漬け物石みたいなファッション誌を読みあさる女の子たちと、男たちを冷笑しつつも策略を練り合う女の子たちの集団に突っ込まれた感覚。
とでもいいましょうか。

『木乃伊の口紅』のように、田村俊子自身が作家を目指し、一方で女優にも転じた自伝的要素を多分に含んだ作品だけでなくとも、いずれの作品にも共通しているのは、主人公の女性がひとつのプロトタイプを示しているということ。
彼女たちは風景を愛しています。
風雨は、こぼれ落ちる日の光は、またそこはかとなく漂ってくる匂いは、すべて感情の細やかな変化を映す鏡となって存在してくれるからです。
また彼女たちは、思い出を愛します。
自分の体をすり抜けていった男たち、あるいは自分たちを慈しんでくれた導き手たちは、遠い蜃気楼になったとき、ひたすらに浄化されて涙を誘ってくれるからです。
けれども彼女にとって、現時点目の前に存在する男とは、たとえ美しい顔をしていても、退屈で芸術の欠片も尊重しない、愚鈍なものにすぎないのです。
彼女たちは自分に確かに選ばれるべき「光」があり、それは自分から掴みにいくのではなく、すべからくすれば誰かが見い出してくれる存在であると信じているのです。

これは、まさに一つの粘性の「女」を描いた作品群なのです。
『木乃伊の口紅』で主人公のみのる自身がこう述懐しています。

こんな日の間にも粘りのない生一本な男の心の調子と、細工に富んだねつちりした女の心の調子とはいつも食ひ違つて、お互同士を突つ合ふやうな争ひの絶えた事はなかつた。  270p



退屈と叩きつけたくなるよりも、人の胸を悪くさせることができる作品の方が、感興を促しす力があるという意味では、差異があるのかもしれません。
もしかしたら、フェミニストな人たちには受け入れられるのかもしれませんしね。

と久々にズダボロにむっとした本だったのですが。
いつもどこかで、「その気配」には鼻が利く絹子なので、こうした女たちの一つの型として、おそらくは絶対美は異性にはないと信じる傾向が生み出すレズビアンな発現を抜き出してみましょう。

京子――と思つたはずみに、幾重の胸に放埒な恋が燃えるやうにきざした。あの可愛らしい娘ごころを今夜一晩で何うにかしてやりたいと思つた。赤い色彩で埋つてゐる京子を、幾重はどうしても今夜気儘にして見たかつた。牡丹の花の崩れるやうに、自分の抱かうとする手に崩れてきさうな京子の風情などを描いて、幾重は、自分の肉が震へるやうな気がした。
『春の晩』226p



(引用に際し、旧漢字は新字に改めています)
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