2017-07

露のフォークロア

ロシア異界幻想 (岩波新書)ロシア異界幻想 (岩波新書)
(2002/02/20)
栗原 成郎

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知りたいことは山ほどある。
かの国は、謎めいていて、かつての抑圧されていた時代の謎はさらに深く
そしてまた民衆の根はさらにさらに深く誘惑する。

これは、ロシアの民がいかに死と日常をつないでいたかを描いた、新書ながら読み応え満点の一冊。
ロシアの農民は迎えが来ることをよくよく知っていて
むしろ潔いほどに準備を整えているとも感じられる。
その派生として、死と生の境界では様々な伝承がうまれている。

たとえば、日本でも白秋の詩で有名なペチカは
家屋のひとつの中心をなし、母胎を象徴するものである。
そこでは毎日パンが焼かれているのだが
パンを生地から焼き上げることは変性を意味し、
それが発展して「赤ん坊の焼き直し」という呪術めいた民間療法がおこなわれていた。
クル病が蔓延し、一才生存率が五割を割ってしまう地では、
赤ん坊を救うために、実際に子犬とともに赤子を窯の中に入れて焼いていたという。
再生の、健康な子供に生まれ変わるメタモルフォーゼの儀式だったのだろうけど
実際には、死んでしまったり(間引きの意味もあった)、ひどい火傷を負ってしまったり。

あるいは、家つきの妖怪ドモヴォイДомовойというのがいて。
毛むくじゃらの老いた小人さんなのだそうだが。

domovoy_hozyain_v_dome.jpg

井戸に落ちた幼子を救ってくれたり、不幸な結婚を予言してれたりして家族を守ってくれることもあるし、
ドノヴォイの毛色をこっそり盗み見して、同じ毛並みの綺麗な家畜を買ってくると、よく繁殖するように手助けもしてくれる。
けれど、時には家族に変身してその人の死の予告を行い
気に入らない家畜は殺してしまい
夜中に住人の体をつねって、痛みを伴わない青痣を作り、死の予告や吉兆をもたらしたりもする。

また死神は骸骨で三日月鎌を持って現れるのは欧州によくある姿だけれど
ここでは、死神は女性=老婆と考えられている。
例の「死の舞踏トーテン・タンツ」のイメージが中世後期に移入された後、
ドイツから来た散文詩が『生と死の論争』という題名で大きくロシア風に改編されたという。
生と死が実体をもって、チャンバラをやっているイメージだ。

死神は鎌だけでなく、剣やノコギリ、斧などあらゆる武器をもって突進してくる。
チャンチャンバラバラやれればいいが、
姿は老婆でも、死神の動きは俊敏ですぐに捉えられてしまう。
両足は大鎌でざっくり切られ、斧で両手が切られ、体が細切れにされ、ついには頭も切り落とされる。
最後には苦汁を飲まされて、頭に残っていた「霊魂」が引っこ抜かれる。

すると霊魂は、死神ではなく鳥の姿をした、天の御使いによって上昇する。
ふりむくと、もう「生」の入っていた肉体は腐臭を放ち始め
固執していた肉体を厭わしいものに感じる。

全体的にイメージの発露が残酷な気もするけど
常に身近に死にアンテナを張りつづけている感覚の鋭さ、真剣さが面白い。

で、この『生と死の論争』から派生してできた『無敵戦士アニカ』という伝承があるのですが。
都市や教会を破壊し神に逆らうアニカと死神の対決が書かれています。
罪人ゆえに、死を潔く受け入れられず、名声や金品で命乞いするアニカ。
しかしこのタイトル、
どうもアニメちっくな美少女戦士キャラみたいな名前だなあと感じてしまったのは、どうでもいい話。
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Author:絹山絹子
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