2017-05

湯水を泳ぐ

心がざっくり切られて
刃が研がれ過ぎているために
一瞬、血液自身が噴き出すのをためらうような
吉野朔実の旧作を読んだ後この本を読むと
それはもう、
で、君は何が楽しくて漫画を読んでいるのかいと云われそうな。

楽しくなくて大いに結構ですが…。
第一巻の最後、突き落とされた姿で止まっていた思考が
二巻の最後まで行くと、
ある意味全く予想だにしなかった終局に驚かされて、言葉を失う。

これは、「少年は荒野をめざす」で
狩野と陸が飛び降りて、次号へ続くとなったあの日に似ている。
ぶ~けの発売日が待ち遠しくて、同時に怖くて。
そして二人の死を待ち望んでいる自分に気がついた。
今回も、死を
そうでなければ、復讐の代償を
期待している自分がいた。

すべて裏切られ?たというのではなく。
かつて「少年は荒野をめざす」では
そんな「まやかしの美学」は醜悪に帰結する、ただの夢にすぎないと断罪されたが。
今回我々はもっとひどいしっぺ返しにあうことになる。

少年少女は決して純粋に結晶化などしないと。
肉体は汚れても心だけは穢れないなどとは幻想であると。
誰もその時間に留まっていないのだと。
ただぬるく、体温よりやや低い湯水を不自由なバタ足でも、教えを受けずとも泳いでいけるのだと。
そうやって、自然と殻ははずれていくものだと。

ここには固執だとか、哀惜だとかはほとんどなく。
ただ海辺のコンクリートに腰かけた新しいあの一組の恋人の後姿を見る視線だけ。
それだけが、小さな感傷を残すだけ。

これがきっと現実なのだと、
今のまさに現時点の現実だと、
鈍い刃は、ギザギザの不整形な傷で読者を苦しめる。
ふう。

そんな漫画でした、これ。

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(2013/02/21)
浅野いにお

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狸穴幼稚園の図書委員

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