2017-10

めもめも

あとがきまで読んで、訳者の千種堅さん自身
「孤独な青年」というタイトルはおかしかろう、
むしろ映画の「暗殺の森」の方がしっくりくるぞと感じていたが、
でも出版社の意向で従来表記を踏襲してることがわかった。

サリンジャーにも「暗殺の森」っていう小説あるからね。
紛らわしいのかもしらん。
冗長かと思えたエピローグは最後に至って意外な結末を迎え、
少しだけ、「チボー家」のジャックを思わせたのだけど。
好きだけど、むしろ惹かれるけど、「孤独な青年」全体に広がったものすごい腐臭が。
最後には、精神にまで至るような感覚で、ちょっとかっこ悪かった。
いや、本当はかっこ悪いものです。
いつもいつも、涙流すような寂しい話ばかりじゃ世の中ないですから。

***

ちょうどプロローグを読んでいたころ。
まだこの作品に、
もしかしたら世界傑作悪辣聖化少年賞(自分が気に入った少年物に勝手になづける)の新規登録成るかと思っていた頃。
ちょっと変な話のネタが降りてきた。
最近、ネタが降りてもメモ取ってなかったので。
必要がなくなると、人間は腐るものです。

***

肥った夫婦に一人の息子。小学生。
彼は土曜の朝が好きで、土曜の夜が大嫌い。
というのも。
両親は不仲、ありがた迷惑にも少年の通う学校を基点にして等距離の位置に別居した。
彼らは、やはりありがた迷惑にも「均等に愛情をそそぐため」と称して、一日交代で二人の家に帰ってくるように息子に申し渡す。
朝母親の家をでて、学校へ行き、父親の家に帰る。
翌朝父の家をでた息子は、学校へ行き、今度は母の家へ向う。

二つの家は学校を中心に等距離とはいえ、かなり離れていて、
子供の足では歩くと学校からはそれぞれ一時間近くかかる。
だから、毎日、彼は同級生よりずっと早く家を出て、放課後の遊びもそこそこに歩きはじめなくては、ならない。
雨の日だからと云って、迎えがくることもない。
自転車を使わせてくれることもない。
ただただ必ず明日の夕方帰って来いというばかりである。

この無意味な習慣は休日も続いていて、
決して片方の家に連泊することは許されない。

だから、少年にとって土曜の朝はとても安らぎをもたらしてくれるし、
夕方になればふさぎの虫にとりつかれるのだ。
土曜の朝は、学校への道のりがない分、ゆっくり眠りをむさぼることができる。
でも夕方になると、普段の二倍の距離を歩いて、帰らなくてはならない。

小学生だって疲れるさ。
だから少年は、ついにクラスの委員長的存在のA君に相談をもちかける。
最初は理解してもらえない。
だんだん驚いて、首をかしげる。

「どうやったら、僕は疲れないように毎日家に帰れるのかな」
「一週間交代はだめなのかい?」
「だめなんだ」
「車で送ってもくれないのかい?」
「一度だってそんなことしてくれたことないよ」
「そもそも、なんでそんな算数の問題みたいになっちゃったの」
「算数みたいだから、君に訊くんだよ」
「でも、算数じゃないね、ほんとは」
「そうかな、タビビト算に似てない?」
「似てないよ・・・。お母さんとお父さんに交互に遇えて嬉しいの?」
「・・・」

***

例えば、二つの家は駅前にあって、両親はいつも便利な生活を送っていて、
けれど、たとえ休日の移動であっても、少年はなぜか電車の移動は許されないとか。

そんなバカみたいで不条理で、
それでいて、大嫌いな親像を色々膨らませて考えてゆく。
そういう、別の腐臭まみれの乾いたギャグみたいなのも結構好きだなあ。



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