2017-09

ナチスと映画特集 その1

よく過去に戻ってやりなおししたい時代はありますか。
みたいな質問があるけど。
それとか、江戸川コナン君の生活に耐えられるのか。
みたいな質問もありますけど。
ないわー、少なくとも高校生まではもう絶対戻りたくないわー。
勉強だけなら、いくらでもやりますが、学校生活はなし。

決まった時間に週5日も登校すること、
クラス皆で同じことをすること、絶対無理だわー。
文化祭、体育祭、キャンプ、合宿、修学旅行、ないわー。

思い出してみると、僕、成績云々ではなくて、どうしても小学校と同じ面子で
地元の荒んだ中学に行くことが耐えられなくて。
でも貧しいので私立はいけないので、某国立大学付属の中学に行ったんですが。
三年間。これが限界なわけです、同じ面子と顔を突き合わせていられる。
よかった、あの付属中学にエスカレータ式の高校がなくて。
(現在は、できたみたいですが)
それで、また、同じ中学出身が一人しかいない、地元の県立高校に入ったと。

大学はまあ、サークルにさえ入らなければ、なんとかなりますね。
一人で行動しても、単位落とすも拾うも勝手だし、
せいぜい実験くらいですから協力体制。

高校生までほとんど学校をフケなかった自分が今考えると凄いと思うのですが、
家にもいたくないので、ひきこもりもできなかったわけですな。
社会生活も含め、一度もイジメにあったこともなく、むしろ大切にされていたのに、
なんで不適合なのか、いまだに自分が理解できませんが。

そして現職を三年目を越えた現在。
ついに「空気化」に成功した模様。
誰とも喋りたくない、俺に近づくな、という棘オーラを出していてはダメだったのです。
空気、空気。
一分子が大きいけど、空気になりきること。
これによって、一日一語も発することなく、平和裡に立ち去ることができるようになりました。

分け隔てなくというのも大切ですね。
誰かとだけ喋っていては、空気にはなれないので、無言のままふわふわと漂うように生きる。
周囲の人が何を喋っていても、あからさまにイヤホンつけたり耳を塞いだりしてもダメ。
(たまに不調だと、吐きそうになるので、静かに逃げますが)
ふわふわふわふわ。
どうやら気体自体も無色化していきます。
これぞ葉っぱ変化、透明タヌキのできあがりです。

うん、落ち着いてきたぞ、僕。

***

そんなこんなで、休日はお外に一人で映画を見に行く。
土日は、初めての渋谷シネマヴェーラへ。
やった!「ナチスと映画」特集!楽しい! →こちら

二本立てで1400円。入れ替えなしなので、一日いてもOKです。
ただし休憩時間が非常にタイトなので、トイレもコツがいります。
鞄を席に残し、貴重品だけ握って4階から1階に駆け下り、煙草を一本ふかし、
空いている一階のトイレを使って4階へダッシュで戻って、ギリギリです。
途中入退場可なので、上映中に人が立ったりして、コラー!って気分になったりします。
オジサン率高し、プログラムによっては結構混んでる感じ。
席は前の方でもかなり見やすいです。
とはいえ、二日とも昼抜きで4時間観たので、首と腰がグキグキです。

まずは一本目。
始まってすぐに、あれこれって、フリッツ・ラング監督?
と気づくくらい、予備知識なく観たのですけど。
最高!!僕の人生の十本指に入れないとダメだ!というくらい大当たり!

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ブライアン・ドンレビー、ウォルター・ブレナン 他

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第2次世界大戦中のドイツ軍占領下のチェコ、プラハでナチスの地区司令官が暗殺された。
犯人であるレジスタンスの医師フランツ(ブライアン・ドンレヴィ)はマーシャ(アンナ・リー)一家のアパートに身を隠すが、ナチスは市民を無差別に逮捕・連行していき…。

というあらすじ冒頭なんですが、偶然に追われている男の逃げたのと反対方向を示しただけのことが、
ヒロイン一家全体の人生を大きく狂わせていく。
「死刑執行人」とは
その綽名で恐れられていたナチの高官ハイドリッヒのことなのですけど、
まず最初にこいつのサディストくねくね加減に観客総ムカツキ。

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犯人は身を隠すところがなく、唯一の手立てで夜間外出戒厳令の出ている時間に
マーシャの家にいき、匿ってもらう。
マーシャのパパは、かつては反ナチの活動をしていた大学教授で、非常に高潔な人。
色々ごまかそうとはしたものの、ゲシュタポから怪しいと目をつけられパパと400人が
人質として拘束されて、犯人を突き出さなければ、処刑していくと市民に脅しをかけられる。
マーシャは当然ながら、ちょっとした好意で嘘をついただけだったのに家族をめちゃくちゃにされて、
犯人を突き出そうとゲシュタポに乗り込んでいくわけです。

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いやー、かっこいいんだけど、真犯人で外科医役のブライアン・ドンレヴィ。
ただこの睫毛バシバシで苦み走ったところが、おかしくて。
変にチョンマゲ似合いそうなんだよなー。マツケン?
まあ、色気ムンムンだけど、マーシャがよろめいたりしないところが、いいんですよね。
つまり、安直なロマンスは不要と。

そして、憎みきれないのが、僕がニセ・ポアロと呼ぶ、雰囲気魯鈍刑事・グリューバー 。

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これがねー。間抜けそうに見えるんですけど、ものすごい敵ながらアッパレ推理力の持主でして。
酒と女と金に目がない、俗の塊なんだけど、実際にはゲシュタポ一番の切れ者でしょう。
そう、普通はナチといえば、残忍で狡猾な肉体的/心理的拷問で
白状しないと、毎日○人ずつ処刑していくぞ的な自白強要なんですが、
このグリューバーは、残された証拠をつなぎ合わせて謎を解くタイプなわけです。
つまり、ここで、単純なナチスの恐怖に対して、
チェコ全体か父親の命かいずれかを選択せねばならない、ヒロインの極限の緊張から、
観客は別の娯楽の方に息を抜かせてもらえるわけです。
ここに、ドタバタ喜劇が生まれ、推理の愉しみが生まれていくんですね。

画像の場面でも、ドクターの家にこそ怪我をしたレジスタンスの指導者が匿われているはずだ
と見抜いたグリューバーが押し込むと、婚約者があるはずのヒロインちゃんが半裸でいたと。
ドクターのこと好きになってしまったのと、嘘の不倫発言。
家探ししても指導者は出てこないけど、警部の後のカーテンの中に実は隠れていて、
ポタポタと血が滴り落ちる。
そこでドクターは酒を勧めるふりをしてわざと躓き、酒を零して血を隠す。
といった、丁々発止が、格別にハラハラさせられながらも楽しいわけです。

グリューバーが秘書とソファでいちゃいちゃしている背後に置いてある
ギリシャ風全裸の女性石膏像にも着目しましょう!
ありえない手の置き方をした像なので、笑えること必至です!

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本当はゲシュタポの犬として働くチャカ。
また観客にむかつく!感情を沸々と溜めさせるマグマの小壷の登場です。
チャカは、反ナチの地下組織に潜入して情報をもらし、
一度は組織の首脳部が壊滅に追い込まれそうになるわけですが。
このおバカさんは、本当に軽率な道化なので、最終的には全てのチェコ市民を敵に回して…。

前半に映画館で「死刑執行人」が暗殺されたという館内放送が流れ
全員が拍手喝采をするシーンがあり、
最初に拍手した奴は逮捕すると息巻くゲシュタポを皆でこけにする。
また、犯人を申したてようとゲシュタポに向かうマーシャを
お嬢さんが行く場所じゃないよと、大勢がからかい半分に留めるシーンがある。
そういう細かいエピソードの積み重ねで、観客の中に
逞しいチェコの人々の反骨精神への共感が膨らんでゆくわけです。

そして、ついにクライマックス。
表面的には笑って笑ってのチャカの大転落。
どこからどこまでが、申し合わせたことかは分からないけれど、
根っこにあるチェコ市民総反ナチ感情が結集していく痛快さがたまりません。

でもね。
笑い物にされたナチ側も、単なる間抜けではなく、やはり恐怖警察でることが最後にわかります。
ハラハラドキドキ娯楽活劇の側面も多分にあり
同時に決して笑うことのできない闇の過去、人間の最も卑劣な部分と最も高潔な部分が同時に観ることができる。

DVDもあるけど。
これは銀幕の光で、脇に人の呼吸や体温や笑い声を感じながら観るべきものだと思います。

ほんとこんな素敵な映画に出会えてよかったなあ。
残りの映画については、また後日。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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