2017-03

香りを読む

人にはそれぞれどうしようもない性質というのがあり。
僕はそりゃあ何度もこの業のせいで、友達ほぼゼロ人を誇っているのですが。

いわば距離の取り方がわからないぜ、
というのと変なエンターテインメント魂が混交すると
こういう結果に終わるという話。

例として一番起こりやすいのは、同人界である。
同人関係は萌えがある、普段喋りたいのに喋れない、
なので喋れる相手があると、爆発的にしゃべりだす。
では、萌えがあんまりなくて、普段溜まっていない、
躁は一年に十日もない僕はどうなるかというと。
とりあえず、疑似躁を作り出す、酒の力でね。
そして、関西人に眠る楽しませまっせ!によって、相手を調子に乗せてしまう。
ここで既に躓いているのである。

彼女たちは、突進してくる。
そりゃそうだね、絹太さんはオモロイ人みたい(あくまで【みたい】)だもんね。
そこからメールや手紙やなんやらかんやら。
突進突進。

でも、普通に考えると、別段突進していないんだろうと思う。
心遣いに溢れたプレゼントや言葉や感想がいっぱいだもの。
とはいえ。
僕の決死ラインは、非常に遠くにあるのだ。
そこには、勿論砦もない、石ころも、白線すら引いていない
と感じられるほどに、僕から離れた場所に導火線は埋められている。

だが、僕には日々、一人の人が馬に乗り、槍をもち、十人、百人、万人と
一個師団を構えた、ズサズサズサという足音が鳴り始めているのだ。
たとえば、ラインはこんな風に踏み越えられる。

合体サークルで、スパコミに参加しませんか?
一緒に中古同人屋巡りしませんか?
私のうちに泊まりにきませんか?

ね、ラインなんてちっとも踏み越えていないと思われるでしょ。
これがねー、爆発しちゃうんですよ。
きっとその日まであった小さな綻びが、だーっと一気に裂けてしまうのでしょうね。
初めから、違和感があったら我慢しなくて逃げちゃえばいいのにとか。
せめて爆発しそうになっても、ふ・ぇ・い・ど・あ・う・と
なんていう素敵な世渡り術があるんじゃないかと自分に指導してやりたいですが。

必ず、破裂します。
絶交だ、踏み越えるんじゃねーってあからさまに告げてしまいます。
困ったチャンですね、呆れますね。
相手が吃驚するのも当然ですね、別人に変わったとしか思えないですね。
なので、最近はこういう失敗を繰り返さないためにも
日々あえて自らをウツに置き、酒を飲んでもしずかーにしずかーに。
しているつもり。

まあ、どうしようもないこんな性格はさておき。
こんな風に僕にあっけなくふられてしまった一人の売り子ちゃんが
当時、木の実やスパイスで作った小さな造花やアクセサリーをプレゼントしてくれていました。
調べてみると、「ザルツブルガーゲビンデ」と本当は呼ばれていて
ウィーン滞在が長かった彼女が身につけていた趣味としておかしくないものだったと分かります。

仲がまだ良かったころ、彼女は僕に「香り」にまつわるお勧め本を尋ねてきました。
いわゆる幻臭ともいうべき、小説から匂い立つ香りではなく、
実質的な香料本を訊かれたので、当時は何も知識がなく返答に窮しました。

そもそも、僕は化粧品の一番大事なのは「無香料」、
香水なんてもってのほか、化粧品売り場は脱兎のごとくな人、
実質の一般的に「いいかほり」と言われてるものが苦手なんで、お話になりません。
僕の好きなのは、煙草と正露丸の匂いです。
正露丸はビンに鼻をくっつけて吸い込むと、くらくら恍惚感が味わえるほど好きです。
ついで、アセトン臭に近い有機溶媒系という輩なんですから、
ますますもって訊く相手が間違ってます。

が、あれから数年を経て、彼女に薦めるべき本に出会えました。
前置き長すぎだわ。

調香師の手帖 香りの世界をさぐる (朝日文庫)調香師の手帖 香りの世界をさぐる (朝日文庫)
(2008/12/05)
中村 祥二

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著者は長く資生堂の香料研究部に勤められ、チーフ・パフューマーから常勤顧問に至った方です。
この本の凄さは、昨今の文字だけでかいペラペラ文庫や新書など足元にも近づけないほど
内容が多岐に渡っていて、読んでも読んでも香料があふれてくること。
香料原料の基礎知識、科学的考察、調香の技、香りの歴史、香りにまつわる文学と。
おなかが破裂せんばかりのボリューム。

特に面白かったのは、自然香料をGC-MSにかけてるのですけど
クロマト分析の結果、香りの主要成分がわかり廉価な人工香料が大量につくることができるようになったこと、
しかしながらいまだに全ての成分を再現することはできないとか。
例えば、ブルガリア・ローズには600種類以上の成分が含まれていて
既に化学構造の判明している300種の成分で全体の95%を占めるが、
これらを組み合わせても香りの耀きも、酷も欠けていて、特に「磯臭さ」がでないとか。
そうか、薔薇って磯臭いのか、ホントは。

昭和の懐メロで有名な「夜来香 イエライシャン」。
こちらは、リュウゼツラン科の月下香やナス科の夜香木と混同する人が多いとか。
本物の夜来香は、ガガイモ科に属する黄色い花が房状をなし、
昼は薔薇+フリージア+ジンジャーの控えめな匂いなのに
夜になると青臭さと沈香の匂いが混じってまさに「夜の匂い」にかわるんだと。
一度嗅いでみたいけど、数年に一度しか咲かないんだって。
でも、歌の「夜来香」は筆者の見解によると、夜の匂いといっても本物は控えめなので
歌通りの妖艶さを醸すといえば、月下香でないとおかしいらしい。

Telosma-cordata.jpg 夜来香

TUBEROSE.jpg 月下香
 
聖書に出てくる「ナルドの香油」探しの話も面白かった。
マグダラのマリアがイエスの足/頭に注ぎかけたとされる高価な香油。
ナルドというのは、正式名スパイクナルド=甘松香といい、ヒマラヤ山系原産の多年生草木の根っこからとれるらしい。
古くから薫材、線香の原料で、芳香性の健胃剤にもなったけど、
現在は工業的に精油されていないから、入手が難しい。
もともとこの調査は、
クリスチャンの友人が死ぬまでに一度その聖書に書かれた香りを嗅ぎたいという願いを叶えたいとの
一読者の投稿に端を発していました。

さすがは、チーフ・パフューマー。
手を尽くして日本でわずかに扱っている香料商社を見つけ出し、早速その願いを叶えてあげたのです。
匂いは、干し藁の香りに近いらしく、高温乾燥地の地中海東部では、
きっと素晴らしい匂いに感じられたであろうとかなんとか。

Spikenard-berries1.jpg
spikenard

まあ、色々書いても、元々知識がない僕の紹介ゆえ
引用一辺倒になって、逆に風味が損なわれてしまうでしょうから。
ちょいと、自分のテリトリーに引っ張ってきまして。
ここ一年近くコツコツやってる虫太郎関連の某調査に絡めてと。

虫作品に出てくる香料の名前は、さほど多くはありません。
例えば、
麝香、素馨、沈香、丁字、馨香《マスク》、花の精《ブルーノガイスト》、肉桂
といった感じで、珍しいものではありませんが。

ひとつ、「魔麝香《ネツ》」という曲者があります。
使用例としては、こんな感じ。

またそこには沈香、魔麝香《ネツ》など甘美なにおいを放つ、香料をみたした黄金の爐を置きましょう。【新疆】

この、魔麝香《ネツ》のかおりを嗅げば、生き観音《ミンチクワンノン》になれる。【紅い喇嘛仏】


虫お得意の馬来語でしょうかね。
まだ抽出作業中なので、判明次第、お知らせしたいと思っています。
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Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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