2017-10

警句

じつはあのころ、ぼくはたえずこう自問していた。ぼくはどうしてこうも愚かなのか、もしもほかの連中が愚かで、やつらの愚かさがぼくに確実にわかっているなら、どうしてせめて自分ぐらい、もっと利口になろうとしないのか。そのうち、ぼくはさとったのさ、ソーニャ、やつらが利口になるのを待つとしたって、いつのことになるのかわかりゃしない……それから、またさとった。そういうときなんかぜったいにやって来やしない、人間なんて生まれ変われるもんじゃない、まるで意味がないとね!そう、そうなんだよ! それがやつらの法則なんだ……法則なんだよ、ソーニャ! そうなんだ! …今になってわかるんだ、ソーニャ、頭も心もつよくてしっかりした人間だけが、やつらの支配者になれるってことがさ! いろんなことを思いきってやれる人間だけが、やつらのあいだじゃ正しいってことになるんだよ。よりたくさんのものに唾を吐きかけられる人間だけが、やつらの立法者になれるんだ、だれよりも正しいのは、だれよりもたくさんのことを思いきってやれる人間だけさ! 今までもそうだったし、これから先もそうなんだ! その見わけがつかないのは、ぼんくらだけさ!

『罪と罰3』 第五部 146p



で、ご存じですかね、やつが分離派《ラスコーリニキ》の出だってこと? いや分離派なんてもんじゃなく、異端派ですよ。(略)
さて、そこで監獄に入れられるっていうと、どうもミコールカは尊敬する長老のことを思い出したらしくて、聖書がまた顔をだすことになった。で、ラスコーリニコフさん、『苦しむ』ってことがああいう連中の一部にとってどんな意味をもつか、ご存じですか? それはね、人のためにっていうんじゃない、たんにひたすら『苦しまなくてはならない』、つまり、苦しみを受けるっていうそのことが必要なんで、それがお上からのものであれば――それにこしたことはないわけです。

『罪と罰3』 第六部 238p



《それにしても、あいつら、なんだってこうもおれを愛するんだ、おれにそんな値うちなんてないのに! そう、もしおれがひとりきりで、だれもおれを愛してくれなかったら、そして、このおれもだれひとり愛することがなかったら! こういうことは何ひとつ起こらなかったろうに! (略)
彼は深く考え込んだ。《いったいどういうプロセスをたどれば、理窟ぬきでもうやつらの前に屈服する、信念によって屈服するってなことになるんだ! でもなぜ、そうならないって言える? むろん、そうなるに決まってる。なにしろ、二十年の絶えまない圧迫が、最終的に何か目的を果たさないなんてありえない。雨だれだって石をうがつじゃないか。それがわかっていながら、なぜ、どうして、今さら生きていく必要があるんだ、どうして、おれはこうして歩いてゆくんだ、すべて本に書かれているとおり、そうなる以外にないとわかっていながら!》

『罪と罰3』 第六部 398p

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