2017-10

歩こう歩こう

頑張れ、頑張れってみんな言う。
頑張る、頑張るってみんな応える。

でも、頑張りすぎないで。って思う。
泣くことも甘えることも、これからは必要だ。
いまこちらでエールを送る側にいる人間は、
余裕を与えてもらっている人間は、
頑張りすぎるより、パニックに陥るより、
すこし昔の生活にもどった日常を楽しんで、わいわい過ごすほうがいい。

アルコールランプのサイフォン珈琲を知らない同僚ちゃんに説明する。
魔法瓶を持ってこよう。
停電の間は、ブランケットをもって日光たっぷりの踊り場で本を読もう。

乗り入れがなくて私鉄や地下鉄の乗換えが不便だった時代の話を素氏から聴く。

そして、湯たんぽを使ってみる。
我が家の小さな薬缶では、4回沸かさないといけないことを初めて知る。
低音火傷が心配だから、先に布団を暖めて、眠る前に足から離しておく。
人は導眠の際に暖かければ、とてもよく眠れるから。
肩口までは熱は来ていなかったけど、ほっこほっこに暖かくなった布団は気持ちいい。
明け方、まだまだほっこほっこの湯たんぽを抱きしめると幸せ。

***

僕の住む23区内の地域は計画停電が来ない。
だからとても申し訳なくて、節電するしかない。

職場は500床をこえる病院だけど、びっちり三時間停電が来ている。
オペも外来も大混乱で、停電前から、院内の電燈は絞りに絞られている。
昨日は昼時に始まった。
エレベーターが使えないから、階段に看護師さん達がならんで、
バケツリレーの要領で配膳を9階から順に降ろしていった。
外来は時間を後ろにのばして、19時まで開いていた。

信号が消え、千葉の南からわざわざ買い物にきたおじいちゃんは、
病院前のスーパーが一時閉店しているのを見て呆然としている。
おじいちゃんと話をしながら、煙草を吸う。
自宅がいまだ計画停電のどのグループに属しているか分らないって。
ネットが出来ない人は、いまや情報難民になっていることを改めて知る。
おじいちゃんの煙草を入れた小さな巾着が可愛い手作りで、
ありがとうありがとうと、僕にとってはなんでもない情報をあげただけで何度もお礼を言われて
こちらこそありがとうって思う。

市街部から都内へ苦労して出勤しているたくさんの人たちも大変。
僕はありがたくも、ほぼ正常化した地下鉄で苦労なく出勤している。
てくてく、いままで通りに歩けるところは歩く。
11日も、途中まで車で送ってもらえたので、三時間歩くだけで帰宅できた。

てくてくてくてく。
音楽を聴きながら。
人の流れと反対方向だけど、みんなのてくてくする顔が心なしか楽しげで上気しているのを見ながら。
江戸川や荒川を渡るとき、観たこともない美しい夜景を観ながら。
歩くことの楽しさを感じていた。

***

当日。そしてそれからの日々。
いろんな優しさを新たな喜びを見つける一方で。
非常時、追い込まれたときに人は本性をみせるのだと、否応なく知った。
それが身近な職場の人だから、本当に悲しくなった。

こんなときにも、保身や偽善を振るう人。
長であるにもかかわらず、なんの情報収集もせずにパソコンの世界に逃げ込む人。
それから、狂ったように買いだめする人。

ガソリンがないないって毎日文句を言うより。
ダイヤは少し乱れていても、ちゃんと電車は動いているんだから、電車通勤すればいい。
当たり前のように一人しか乗らない車で通勤して、水を買いに走って、ないないと歎くなんて
ナンセンスでしかない。

歩こう、歩こう。
歩けば、体も暖まる。
見えないものも、沢山見えてくる。

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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