2017-03

フィクションも度を過ぎれば

僕はいわゆる腐女子の湯に足をつっこんでいた一員なので多くは否定できない
一応大きな「女子」の中の一人ではあるが
おっさんにはなれても、おばはんにはなかなかなれそうにもない人である。
その理由のひとつに、ガールズトークと呼ばれるものが、非常に苦手だということがある。
一対一ならなんとか凌げても、三人寄れば倒れそう、
同時にコスメもファッションも噂話もダイエットも、その辺り一面範疇にない。
変に映画や本の話もしないほうが、無難。
むしろ、メカ、エンジン、ノコギリの刃、ねじ山の種類、あるいは絞りについて
聞かせていただければ、喜び勇んで瞳を輝かせますぜ。

が、そんな世界の端っこの話をしてくれる人は実際にはなかなかいない。
だから、僕はいつも考えてあそぶ。
これは、妄想と呼ぶものとは、少し性質を異にする。
なぜなら、妄想は、大なり小なり、思考する人の「快」に属するものだからだ。
たとえそれが、世間的にはスプラッタであったり、えげつないものであっても。

僕のそれは、情報処理でいうところの、フローチャート。
フラグを随所に立て、1か0の条件を与えた上で、頭の中で絵を動かす。
例えば、条件1「職場の病院で刃物を振り回した男に、自分が腹を刺された」
条件2「仕事復帰まで一ヶ月かかる」
条件2’「復帰不能」
などのフラグを瞬時に立て、そこで周囲の人間がどのように変るかを頭で動かす。
動かすとはいっても、実際には動くである。
ここに意志の力も、想像力も働かない。
勝手に頭の中で、ニュースの映像、個室の映像、メールの文面などが
ザーーっと、長いときには、十数分流れ続ける。
僕は、それを淡々とみている。
遊んでいるというよりも、歩きながら本も読めないので、その映像を見ながら、長い徒歩の慰みとしているだけだ。
一つの映像が終ると、今度はフラグ2が2’に切り替わり、映像が流れる。
感興はめったに起きない。

あるいは 条件3「母親の葬式」
条件4 「喪主になってしまう」
条件5 「和解しないまま死に至った」
の時も、勝手に弔辞を読む自分の声が頭をめぐる。
こちらもただ延々と映像が流れるので、時々この無軌道TVの電源を
看板の文字を読み上げることによって、オフにしてしまうときもある。

あるいはまた、小さな言葉の種が落ちてくる。
その種が、勝手に頭の中で増えていき、目的地につく頃に、日記が頭の中で書き終っていたりする。
だから実際にPCの前で日記を綴る時間は、調べものや引用がない場合は、
少しの推敲を除いてただ打ち込むだけの時間となる。
ただし、頭の中で書き終わったものが、実際にここそこのBlogで公開されるかは、
夜に棲む、別の僕に委ねられていて、小さなメモリしかない僕の脳は、
さきほどの多くの映像も音声も、彼方の光の中へ四散させてしまうことのほうが遥かに多い。

***

では、もっと能動的な遊び、能動的な妄想をひとつ。

僕が所属した学校にはどこにもなかったのだが、
かの鉄道研究会と称された部活では、目的地を決めて、
分厚い時刻表を片手に、分刻みの旅程を組んでいく楽しい遊びがあるという。

日曜美術館のアートシーンを見ていたら、
静岡県三島市の佐野美術館で、
10/11まで「没後120年記念仕掛けの絵師―鬼才・河鍋暁斎」をやっていると知る。
ちょいと見てみたい。
でもちょいと遠い。
三島なら、朝出れば余裕でこれだけ観て、日帰りできるんじゃないか。
などと能動妄想の旅を計画する。

もちろん、交通費は安いが一番。
最初に思いつくのは、ぷらっとこだま計画である。
しかし、この割引プランは、停車駅が、新横浜/静岡/浜松でしか通用しない。
決まった駅で一度改札をでないといけないらしい。
三島も新幹線の駅だけど、静岡から引き返すなんていう馬鹿らしいことになりかねない。
ならば、通常のこだまで行くか、あるいは特急踊り子か、あるいは二時間かけて在来線である。
JR在来線で2210円、こだまで1時間4400円である。
むー。

そこで、急遽バスに眼を向けることにする。
平日なら1000円高速の呪縛もなく、それなりのスピードで行けるはずと思ったのだが。。。
ここで僕は大きな落し穴にはまったのである。
ネット上で、「東京 三島 高速バス」とぐぐって見るとヒットする、
東静高速鉄道/東静バス→これこれ が大変な曲者だった。
というか、僕が、非常にオバカちゃんだったのかもしれないけど。

なになに、結構夜間だけでなく、本数出てるじゃないの、ドリームみしま号。
東名御殿場からいったん三島に下りて、また東名に戻って静岡に向かうんだ。
これなら、朝出て夕方帰ってくるっての、ありじゃないの。
運賃1900円か、JRより安いし、途中で乗り換えなしなのもいいかもねー。
とか、すっかり素氏の公休日をカレンダーで見比べたりして。
乗り乗りになってきたのだが。。。。

ここで僕は次の文字に眼を留めた。
「この路線は3月上旬頃の運転開始を予定しております。」
この3月って今年のこと?ちゃんと運行開始されてるのかな?
そこで頁頭に書かれた一文に、腰を抜かす。

このページの内容は全て架空のものです。

涙。
えーーーーーーー?
つまりこれは、このHP全体が、妄想の産物だったのだ。

きっとバスマニア、時刻表マニアな人たちからはすべからく周知のサイトに違いない。
でも、僕は完全にくるくる踊りましたよ、腹鼓鳴らしてましたよ。

気を取り直して再調査して分ったことですが、
三島は、東名から離れている関係で、高速バスが滅法少ない。
僕が確認できたのは、
富士急行バスの「みしまコロッケ号」(この名前・笑)が新宿/渋谷⇔三島
東海バスの「三島エキスプレス」が新宿⇔三島
しかありませんでした。
料金は、回数券を使うと片道1700円まで落とせそうです。

ただし、本数が一日2、3本なうえに、
基本的に三島側の人が東京日帰りしたいという感覚で作られているとみえて、
下り始発が東京をお昼に出て三島に二時半、上り最終が三島を五時とかっていう設定で。
これじゃ、暁斎一つ見るだけでも、かなり厳しいのですよ。

ということで、僕の妄想三島行きは、あっけなく妄想に終るのでありました。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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