2017-11

何度でも、あなたなら本当のことを

またも知恵くだる。
今日は久々のオペで、緊張したからなー。
どうして疲れや緊張がこうもおなかに来るのかしら。

もうすぐ読了するぞ、『平凡パンチの三島由紀夫』。
ええ、昼休みと17分間x2の通勤電車の中しか読んでいないので、滅法遅いんです。

しかし、この本は不思議な感覚に襲われる。
三章に入った位からデジャブが炸裂する。
時間軸を追うのではなく、ミシマに似ていると著者が考える人物との少々突飛な比較論が、様々な角度から差し込まれ。
(コクトー、ベルグソン、北野武、チェ・ゲバラ…)
何度も死の予感に震え暗い炎を立てるほどに死に焦がれる姿が描かれ、
そして幾度も最期の日に戻る。
生々しく、まるで介錯の刃が振り下ろされる瞬間を目の当たりにしている気分になり、眩暈を起こす。

ここまで読んでも、たとえ難解な哲学や社会学をミックスされたとしても。
やはり僕には「分かりやすい人」という印象はいっかな拭えない。
でも。
きっとこの人は、困っている。
探して探して、窮している。
薬でもやらせてみたら、ゲバラの軍に志願していれば、、、、と極論めいたことを書き。
その実、最期を回避できなかった理由を探しつづけている。
角度を変えても、リフレインは極大化してゆき、切なくなる。
恐らく「分かる」などといったら、バカヤロウと浅薄だと怒るだろうねえ。

時代を嗅ぎ取る所作として、こんなエピソードが面白かった。
面白がってはいけないのかもしれないけれど。

最期の年。
一度だけ著者はミシマに会ったという。
「英霊の声」の朗読レコードを抱えた彼を、既に平凡パンチからananに異動していた著者は、レコードを聴こうと編集部に誘う。
ボリュームを大きくして、何度も繰り返し聴いていたところに。

 二人でものもいわず、聴きいっていた。突然、入口のほうで足音と人の声がして、四、五人が編集部に入ってきた。足音以上に彼らの服装が、喧騒を視覚化した。イラストレーターの宇野亜喜良は、茄子紺のベルベットのパンタロン、トム・ジョーンズ風ブラウスシャツ、デザイナーの松田光弘と編集者の今野雄二は、ロンドンポップファッションそのままの、紫色と藤色のスカーフを首にまき、タイダイTシャツにジーンズという格好だった。セツ・モード・セミナー校長の長沢節は、いつものロングブーツに、クレージュ風のジャケットを羽織っていた。
 前から知りあいだった長沢と三島が、ぎこちない会話をしている。まだレコードは途中だった。今野が、ぼくにむかって「ヤマト、なにこのオンガク、キモチワリィー」とホモ口調で明快にいった。ぼくはあわてて、同僚の今野に小声で説明した。
 三島は急にソワソワしはじめた。低い声で帰る、といいながら、レコードをつつみ直しはじめた。「まだ、いいじゃありませんか。彼らは、これからすぐ映画の試写会へ行ってしまうんですから」といったが、三島は、帰る帰る、という。四人は出ていった。もう一度、プレーヤーの針をスタートに戻して、朗読を聴いた。三島は「やっぱり帰る。これは、こんなところには似合わないね」ぼくは、おざなりに聞えるかもしれないと考えながら、「そんなことはないでしょう」となぐさめた。三島は憑依から覚めたような、ひよわな表情で、ドーナツ盤一枚を残して帰っていった。ぼくは、レコードにサインして下さい、ともいわなかった。
 五ヵ月後、三島が切腹したのち、宇野亜喜良は、あの日の自分たちの登場が、三島を死に追いやったのだ、と信じこんでいた。 
p115-6

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狸穴幼稚園の図書委員

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