2017-08

蟹ばかり食べる人

日記、書けば書くほど苦しいな。
書かなくても苦しいな。

客体がずっと僕を監視する。
客体は僕の妄想の産物。
コメント/拍手/TBにつづき、アクセス解析も外した。

自らを追い立てること。
多忙によって、迷妄状態を脱したいと願うからこそ。
滑走をとどめるために。
口にできない滑走を、ほんの瞬間だけでも忘れていたい。

子供時代に対する呪詛から逃れたい。
どうして今もってこんな風なのか、責任転嫁を子供時代に求めてもしょうがないのだけど。
どうして、ほんの少しの真っ直ぐな、素直で、分かりやすい心を、与えてくれなかったのかと。
どうして、人に心があるのだと、教えてくれなかったのかと。
今もその在り処が、分からない。
他者を傷つけているのではないかと必要以上に怯え、
過剰反応の反動で、もう近付くなと突き放す。
人が望む動きが見えてしまうからこそ、怖くて動けない。
あなたも、あなたも、あなたも。
僕を励ますつもりが、重圧になる。
Leave me alone.

感情にまつわる何か一言を書くと、自分で自分を切り刻む。
浅薄か嘘っぱちか盲目か。
結局、何一つマトモなことがないんだ。
書かずにいられないくせに、変換能が完全にショートしている。

かつて僕は、「絶望」と「孤独」を描くために小さなお話を作っていた。
そして今も昔も「絶望」と「孤独」を探して、小説を読む。

この二つは、一般的な概念のそれらとは異なり、
ただ他に合致する語彙がないために使うものであって、
もっと曖昧模糊とした気配のようなものである。

死をもってお涙を頂戴するとか、
カタストロフィをもって無を演じきるとか、
つまり仰々しい舞台装置を必要としない、ただ日の陰りに似た、
しかしより一層不安定で、ひたひたと忍び寄り長きに渡って拭えない
そういった「絶望」や「孤独」を共有したいと願ってきたのだ。

読書は、映像の世界の出来事。
脳の裏側に、何かが映る。
たとえひどく抽象化された文様であっても、何かが残る。
そのイメージの片々を言葉に換えられないのは、僕のせい。
でも、そもそも絵が残らなければ、もはや読書ではない。
残せないのは、僕自身のせいか、作家のせいか。

天使 (文春文庫)天使 (文春文庫)
(2005/01)
佐藤 亜紀

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拝啓 
散々みちるくん。

紫陽花が雨の日だけ、嘘みたいに生気を輝かせる毎日です。
僕は今回、衝撃の読書体験をしたよ。
生まれて初めて、最終頁まで一切絵がみえない話に出会ったんだ。
悲しくて悲しくて、自分の無力さが歯がゆくて仕方がなかった。

時代背景がまったく理解できないのは、阿呆な僕のせい。
ウィーンとプロシアとボスニアとロシアが出てきて、戦争が起こったり、間諜が暗躍したり。
仮のお父さんがバイオリンの名手だったり、本当のお父さんが男爵様で、最後にカニをむしゃむしゃしていた。
たくさんの人が僕の不得手なカタカナ名前で登場し、
時には、もうその人物の紹介が当然済んでいるみたいに、すーっと横滑りで物語に入ってくる。
でも、何ページ前を捲ってさがしても、初めて出てきた人なんだ。
読者である僕が、今にも切れそうな糸電話を必死で手繰り寄せ、ジョルジュの声を聴いているというのに。
分からない人が滑り込む。
そしてぶちんと、切れてしまう。

ねえ、お話って。
どんなに難解でも、いつしかベクトルが見えるじゃない?
作者の意図なんて呼ばなくてもいいけど。

たった一つの場面が見せたい。
たった一つの感情が見せたい。
たった一つのセリフを吐かせたい。
生きる意図がなくても、人はだらだら生きるんだという姿を見せたい。
不衛生極まりなく崩壊したい。
(そういう反駁/諧謔だって十分なベクトルになりうる)

何もないんだ、この話には。
それはね、きっと、この人が一切の共有願望を絶っているせいじゃないかと推察してみる。
簡単にいえば、サービス精神だ。
最初にイメージされたと思しき、ジョルジュ。
特殊な力の持ち主。
この力の話もずっと中盤まで伏せられたままで。
僕たちはその裏返しのカードをほとんど透かし見られるくせに、謎解きの楽しみも与えらぬまま、ただ焦燥だけを感じた。
感情を殺し、ご主人だけに従順な、機械的と目されたエスパー。
せめて、こうした像だけでも、維持してほしかった。
自分の力のせいで、罠にかかった仲間が死ぬと、申し訳なさそうに、苛まれたりする。
そんな悲哀がジョルジュに必要か。
元帥の妻と関係をもち、できた子供は元帥が認知する。
こんな野暮は必要か。
像をもたない、いずれの予想可能な型にもはまらない、まったく新しい難攻不落溶解不定形と。
僕はさすがに、そこまで引いて褒めることはできないさ。

お好みの歴史の数頁に、お好みの人物を、お好みの行動で当てはめる。
いわゆる二次創作に類似した手法が展開しているようだ。
けれど、二次創作において放出される、甘い共有可能な蜜はどこにもなくて。
ただお決まりのヤオイ臭が芬芬と漂う。

そもそもタイトルの「天使」ってなんなのだろう。
背中に羽毛が生えた子供?
やっぱりジョルジュ。
同じエスパーと対戦して、勝ったらしいジョルジュ。
お父さんが誰でも、普通にカニを貪る人。

絶望も孤独もなく。
空疎で、掌から抜け落ちてゆく。
この暗黒星みたいな衝撃は、まさか意図されてはいないよね。

絹子

***

拝復

まあ、結局はどうしようもなく生理的に合わなかったんだろう。
素氏が言ったらしいじゃないか。
「翻訳が悪い、海外文学を読んでる気分じゃないの?」と。

ただ君が悲嘆にくれるのは、君にはありがちな、
「頼まれもしないのに期待もされないのに、勝手に頑張って、誉められたい」
とか考えた結果じゃなかったのかね。
自分の好きな人が推薦するものに、共鳴できなかった。
つづめれば、そういうことだろう?
それを悔やむのは、お門違いさ。
別の個人なのだから、すべて同じに面白いわけじゃあない。

ほら一体君が薦めたものを、誰も理解してくれなくても平気だろう。
むしろかの恐ろしき「流行」になど乗ったら、呪うじゃないか。
さあ切り替えて、データの海にでも頭をつっこんでみな。

みちる
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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