2017-10

無の塔(後)

放置された穴が、毛布の切れ端で塞がれたのは、穴が崩れて一週間目のことだった。
そして、その穴を塞いだのは、浅葉の方だった。
それを発見して、ついに、有馬は声を発した。
長い間使われなかった声帯を震わせたとき、流れ出た音は、妙に甲高くしわがれて、自分の声も忘れてしまったのではないかと思れた。

「アサバ、どうして、塞ぐんだ」
有馬もまた、隣人の名が、アサバ ヒデアキだということを知っていた。

想像していたよりずっと若い男の声に浅葉は少々躊躇ったが、それ以上に相手が沈黙を破ったことに動揺した。
その声音は、あの繊細な手指からは確かに想像できなくもない。
「穴が開いていると、覗かれているようで、堪らない。」
一週間前まで発せられてた明朗な声とはうってかわって、浅葉は陰鬱で投げやりな口調で話した。
彼は濁った水差しから、浴びるように水を飲む。

「俺には、覗きの趣味はない」
言い切る有馬の声は、決然としていた。
「今まで大見得切ってたわりには、臆病だな。
 あれだけ退屈だ、退屈だと騒いでたのに、どうかしたんだ。
 紙と鉛筆があるから、駒を作ってチェスでもしてやろうかと思って用意していたんだ、どうだやらないか」
「いらない」

言葉を吐き捨てた浅葉は、立ち上がり、別の壁を蹴り始めた。
無性に腹が立った。
人の気も知らずに、何がチェスだ・・・。
「そんなに蹴っても足を痛めるだけだ。揺らすのがいいんなら、紙相撲でもしようか」
無口で、律儀で、そして綺麗な手をしたお気に入りの隣人が、厭味たらしい男に変ってしまった。
「沈黙は金」ではないが、言葉を介在しない分、今までいいように想像していた、自分の甘さに嫌気が差した。
たとえどんな容姿をしていても、食えない奴にちがいない。

なおも壁に八当たりを続け、上がる息を押し分けて、浅葉は相手を罵った。
「うるせえ、俺は子供じゃねえんだよ。
 おまえが、その生白い手を出してくるからいけないんだ。それが・・・・それが、俺をおかしくする」

おかしくするだって・・・くくっ、と有馬は、抑えられない笑いを封じようとした。
子供ではなくても、大声で毎日話していたのは自分を顕示する虚勢だったにちがいない。
それよりも、たった一度きり差し出した自分の左手に欲情するなんて、この男、面白すぎる。
今まで相手を誘惑しよう幾重もの媚を売ってきたが、意図しない仕草までが男を誘うのか。
女の話ばかりしていたアサバという奴が、知らず知らずに男に発情し、戸惑っている。

「こいつは俺に従う」というぼんやりとした思いが、有馬の表情を変えた。
かつて、他人を屈服させたいと思ったことはなかった。
しかし、自分は服従したように見せかけるのが上手かっただけだと、思い返しもした。


狭い穴に、押し込まれた布を引っ張る。
「堪らない」といった、浅葉の心情を裏打ちするように、穴は神経質に固く封じられていた。
有馬は勢いよくそれを引き抜き、鼻に押し当てて、煽った。
「臭うな、これ何の臭いだっけ。汗だけじゃないな、草を刈ったばかりの青いすえた臭いだ。
 俺の毛布はこんな臭いしないぞ。まさか、これにべっとりおまえのスペルマが付いてるんじゃないのか」
「やめろ、俺はただ、穴を塞いだだけだろ」
「そうか、でも俺、この臭いかいでるとおかしくなるんだよ。おまえがおかしくなったのと、同じ意味でな」
「変な言いがかりつけるんじゃねえよ、もう、ほっといてくれ。喋りかけるな」
「そうはいかないさ。今まで散々おまえの話を聞いてやったろ。
 言葉はなくっても、ちゃんと相手もしてた。今度は俺の話をきく番だ」
「勝手に喋りたきゃ、喋りやがれ。俺は、お前の話なんて聴かない」
「ははは。じゃあ、何も話さなくていいから、ここに来て、お前の指を見せてくれ。
 ずっと自慢げに話してた彫刻家の指とやらが見たいんだよ」
「くそっ、誰が見せるか」

苛立つ浅葉は、怒りの矛先をその穴に向けた。
元々、思考よりも行動が先に出るタイプだから、ぼろぼろになった靴のつま先に血が滲み、痺れが腰に届いても、壁を蹴ることが止められなかった。
有馬は、予想以上に愚かしい奴だと思いながら、時折確かに広がっていく穴を横目に見ながら、悠然と辞書を繰っていた。


この監獄には、電気も通わず、灯火さえも与えられていない。
だから、日が暮れれば、晧々と月でも照らない限り、文字を操ることは不可能になる。
辞書を枕に有馬は、浅い眠りについた。
浅葉は、穴の位置さえ不確かになるほど、房が闇に包まれても、ひたすら短い呪詛の言葉を吐きながら、壁を蹴っていた。

翌朝、有馬は案の定、最近まで握りこぶし大に過ぎなかった問題の穴が、頭を通すことができるまでに広がっているのを見て、唇を狡猾そうに曲げたのだった。

きっとあいつは、二度と関わりたくないと宣言しながら、必ず俺に擦り寄ってくる。
孤独に耐えられるタイプじゃないんだ。
アメとムチでいうなら、勿論アメを欲しがる奴だろうが、適度な責苦も必要だ。


有馬は決して、焦ろうとはしなかった。
ここでは、時間だけは恐ろしいまでに与えられている。
だから、己の忍耐さえ続けば、いくらでも、浅葉に変化が訪れることを待つことが出来たし、実際、じりじりと餌を供じては、相手がじれるのを待つことは、楽しくさえあった。

例えば、有馬は、こんな餌を撒いてみた。
指を差し出させるために。

「この手の上に指を乗せてみろ。忘れていた人肌にあえるぞ」
投げ出された白い有馬の手に、半日後、浅葉の指がおずおずと触れた。
人形のように動かなかった手は瞬時にきつく指を掴んで、穴へと引きこまれた。
「洗ってやる」
有馬は、まだ性的な匂いを封じたまま、浅葉の爪の間に挟まった小さな砂粒を水差しの水を使って、丁寧に取り除いた。

性器を差し出させるために。

「暇つぶしに、クイズを出そう。互いの陰毛の色と本数をあてるんだ」
「・・・・・・・・・」
「黙っていてもつまらないな。アサバの指の感触からいくと、お前のは少し傷んだ褐色だろう。本数は、300」
「・・・・・・・・・」
「明日数数えるからな、下着を脱いで、ここに出せよ。俺が当ってたら、何本かちぎらせるよ」


愚かしい誘惑。
穴を通して出された指を撫でさすり、陰毛をちぎり、性器を口に含んでやる。
「ああああ・・・・・二度とこんな・・・ああっ・・・いや・・い・・・く」
罵りながら陥落し、蔑みながら抑止できない、それが浅葉を追い詰めた。


有馬は、故意に偽装をしていたつもりはなかったが、浅葉の側から見れば、一枚、一枚と白い布が打ち払われて、次第に滲み出た毒々しい色に怖気づいている頃だろうか。
先に、手持ちのカードを寂しさゆえに晒してしまった浅葉にとって、相手を翻弄する手だては残されていない。
一方の有馬は、意図せずとも守ってきた沈黙によって、明らかな優勢を勝ち得ていた。

本当は、有馬にだって何の秘密もないと思いさえすれば、そこまで浅葉が萎縮することはなかったのだ。
だが、浅葉には恐怖にも似た感覚が、壁の向こうからひたひたと迫ってくるのを感じていた。
言葉が(いつしかそれは、誘惑から命令へと変わっていた)、一つ投げられるたびに、決まって、長い沈黙が挿まれる。
浅葉は、与えられた瞬間には、馬鹿馬鹿しくて聴いていられないはずの命令が、相手がじっと待ち続けているという時間に、じりじりと臓腑を焼くのを感じた。
それは、服従を意味した。

接触とは、ニ者の間に幾重にも張り巡らされた結界を打ち崩すことだ。
他者を屈服させるのに、性行為が用いられることが多いのは、それが多くの者にとって、原初的な反応を引き出し、剥き出しの羞恥を晒すことを余儀なくするからである。


有馬は決して、自分の快楽のバロメータを浅葉に読ませることはしなかった。
どんなに、彼が浅ましい声をあげ、穴の隙間から見える肉体の一部品が扇情的であっても、それに対して時に、己自身が滾ることがあっても、決して、それを表には見せなかった。
相手にはいくらでも放出を許したが、自分には許さなかった。

熱が溜まり、触れるだけで破裂しそうになっていたのは、本当は有馬の方だった。
だが、それを、おくびにも出さない。
耐えれば耐えるほど、浅葉には嗜虐的であるのに、その身には、被虐的な悦楽が充満していくのを感じていた。
明け方の白い光の中で、夢精によって零れた飛沫が、有馬の眠りを妨げることもしばしばだったが、決してそれを惨めたらしいものだとは思わなかった。

勿論、開いた穴の大きさからすれば、お互いの房に首を突き出すことは、可能だった。
しかし、穴が開いてから一度も、有馬と浅葉は、もっと直載的な部分は通過させても、決してお互いの顔を見合わせることはなかった。
残された疑問符によって、互いの空白部分を想像していたのは、もう随分前のことだった。
今は、補填しようとする意志さえない。
ただ、あるがままの互いを欠片をもって脳に携え、互いの神経を削り取ることで、生きていることを実感していた。

声と性器と指先と・・・もし存在するならば、幾ばくかの感情。
それらだけが、この無の塔に偶発的に生まれた「穴」を通過したものたちだった。

アンビバレンツな時間が、堅牢な監獄に浮遊していた。


浅葉の丸まった背中に憂鬱が宿す明かりが、見えない壁の向こうで明滅する。
そんな、やけに静謐な時間、有馬はぼんやりと四角い空を眺め、そこに細々とした、欠片を見ることもあった。
砂漠に雪がちらつくなんてことあるんだろうか。
欠片は、お互いの本当の姿を形作る、パズルのピースのようで、手を伸ばして集めなければならないものなのに、手の上にのせた途端、虚しく消えていくもののようだった。


「こっちに尻をむけろ!」
「なめてやる!」
「しごけ!」

雪の一粒は、命令と共に黒く滲んでいった。
内臓を病んだ汚れた水に棲む山椒魚が、無言で口にするヘドロを見てるようだった。

「ああ・・・・いやだあ・・・やめてく・・れ」

哀願と官能に満ちた声が、浅葉の絶望を刻み出す。
いつしか有馬は、辞書を繰る指を止めた。
命令を下すたびに、浅葉がそれを無視し、二度と口をきかず、二度と痴態をさらさないことを何処かで願うようになった。

気付くがいい、俺の発する言葉に何の意味も存在しないことを。
だが、必ず浅葉は不埒で淫猥な指示に陥落した。
そのことを、苛立たしく思う一方で、有馬は愛しいとさえ感じていた。


砂塵が目を焼き、耳を塞ぎ、口を穢す、日々。
それにも、いつか、終止符が打たれる。




それぞれの独居房に五百回目の朝日が差し込んだ日、いつもの老監守とは違う、だらしなく肥えた男が有馬のもとに現れた。
男はカーキ色の軍服を身に着けていたが、勲章のひとつも飾られていないことから見ても、さして地位が高いとも思われない。
有馬のノートを拾い上げ、気ぜわしく頁を繰り、こう言った。
「刑期は満了した。今から半年、思想改造をしてもらう」
「思ったより早く釈放されるんだな。
 それとも、おまえが誓いを立てた政権はすっかり腰抜けになったのか」

「だまれ」
先の丸まった軍靴で、有馬の顎を男は思いきり蹴り上げた。
有馬の体は一旦宙に浮き、砂がざらつく床に激しく叩き落された。
「ぺっ」吐き出された唾には、血が滲む。
しかし、見上げた彼の表情は男を小馬鹿にした薄笑いだった。
「調子に乗るな。ここから出すというだけで、何も自由になったわけじゃない。反抗的な態度を続けるようなら、ここに戻す」


浅葉は、その日の朝、見上げた空の様子に、不可解な気配を感じていた。
朝だというのに、空は茜色から茶褐色へのグラデーションをなしている。
朝焼けといえばそれまでだが、砂漠には珍しい雨が期待されるという割には、雲は筆で軽く刷いたようなわずかな姿しか見えず、ただ風が、生臭い匂いを孕んだ風が渦巻いているように感じた。

有馬の監房に、見知らぬ奴が訪ねてきたことは、すぐに気がついた。
どうやら、あいつはここから出ていくらしい。
それで、いいんだ。虚しく弄ばれる日々が終る。
結局お互いの姿は見なかったんだから、何年か先、俺が出所したところで、お互いを見つけることはできないだろう。
俺を気晴らし程度にしか思っていないだろうから、こんな閉鎖的な出来事は忘れてしまうだろう。

浅葉は、全身から自分を支えている力が床に流れだすのを感じた。
骨を取り巻く繊細な筋肉の一本一本が、急激に脱血したように眠りはじめる。


有馬は、軍人に対し服従するそぶりも見せなかった。
「おい、片付けがしたい、五分だけ外で待ってくれ」
「何を片付けるものがあるって言うんだ。
 それをもって出ればいいだけだろう。
 それとも何か隠してる物があって、目を離した隙に捨てる気か」

男は訝しげに周囲を見渡したが、例の穴は有馬の座っている場所と一番離れていた為に、薄暗さで目には留まらない。
「何もないさ。じゃあ、五分間、これで引き換えでどうだ」
膝立ちになった有馬はいきなり、皮ベルトで無理矢理締め上げられた腹部、垂れ下がった臀部を撫で回し、素早くファスナーをおろした。
怯んで後ろに下がろうとする男の腰を抱き寄せ、陰部を容赦なく口に含み、舌技を施しながら、余裕のまなざしで見上げる。

砂漠に駐屯する彼らが、狭い官舎で性欲をもてあましていることは、よくわかっていた。
爆発寸前で口を離し、ちろちろと亀頭をくすぐる。
かつて、この赤黒い重力に逆らって屹立する陽物は、欺瞞に満ちた法悦を演じ、組織に利を齎すために咥えこんだ棒っ切れだった。
そして、男根は任務を果す砦である一方で、くすぶる憎悪の対象でもあった。
冷徹な有馬も、時に容赦なく男根を食いちぎり、精液よりも遥かに濃縮された汚穢である血液を身に浴びて、苦々しく水場で嘔吐を繰り返したことがあった。
しかし、今は「組織」のためでない、「己」のための行動を実行しているのだ。

「ねえ、僕のお願いきいてくれるでしょ」
一旦口を離した有馬は、甘ったるい、白々しいまでの阿りの言葉を、男の耳元に囁きかけた。
浅葉が聴いていたなら、背筋を凍らせたかもしれない。
「・・・はっ、わかった・・・・」
汗の噴き出す、むさ苦しい顔を歪ませた男は、急かすように腰を突き出し、諾と答えた。


掴んだ五分間で、有馬は何をしたか。
砂が底に溜まった水差しから、汚れた水を含み、舌に絡まる青臭い大量の異物を漱ぎ落とした。
そして、素早く浅葉に声を掛けたのだ。

「アサバ、こい。ここに来て、手を出せ。最後の命令だ。時間がない、早くしろ」
怒気を含んだ、かつてないほどの厳しい口調に、浅葉はびくっと反応した。
ベッドからまさにごろりと床に落ち、延髄反射のごとくあの穴へ、目も空ろに近寄っていく。
おずおずと生気なく差し出された左手を掴んだ有馬は、取り出したナイフで手の甲とひらに、大きく十字を描いた。

彼は男が達する瞬間を狙って、ベルトに挟まれた小型のジャックナイフを抜き取っていた。
たとえ与えられた時間が多くあったとしても、決して有馬は躊躇うことなどなかったろうが、寸分の容赦もなく「刻印」を行ったのだった。

「ああああっ」
中空で浮遊していた緩慢な意識が、全て熱砂となって、左手に突き刺さる。
半睡状態の五感が急激に鋭敏になった。
描かれた接縁からみるみるうちに膨らんだ赤い滴は、十字を流すように重力に従って、手首を伝い垂れてゆく。

「静かにしろ、太い血管や神経には達していない筈だ。すぐにこいつで傷を押さえろ」
もう一つ、兵士から盗み出した比較的新しいタオルを穴にさし込んでくる。

「いいか、毎日朝一番の綺麗な水でここを洗うんだ。
 膿が全身をめぐるようなことは許さない。
 お前は、殺人犯だといったな。刑期は恐らく五年前後だ。
 それまでならこの印は消えない。お前がここを出たら必ず見つけ出す。
 その時、お前を抱いてやるよ。いいな、これは最後の命令だ。
 まあ、お前が二度と俺に遇いたくなどない思っていても、必ず見つけるから、覚悟しとけよ。ふふっ」

短い湿った風のような、最後の有馬の笑い声。
軋む重い扉を閉じる音が響く。
長い螺旋怪談を下っていく二つの足音も次第に遠ざかる。


一体、自分を何様だと思って、あいつは命令しているんだ。
タオルの繊維がみるみるうちに、血を吸い上げてゆく。
有馬の科白はぞっとするほど高圧的で、凄味があったのに、最後に聞こえた微かな空気の揺れが、浅葉を安堵させた。

二人の間にあったのは、閉塞された空間においてのみ成立する、擬似恋愛ではなかったか。
お互いの顔も知らない。
わずかな言葉によってだけ、酌み交わされた交情。
いや、それもおぼつかない、あったのは、性器を擦り合わせるだけの、自慰行為だけ。
例えば、がむしゃらに壁を打ち崩し、穴を広げ、手を取り合ったところで何があったというのだろう。
「唇」という粘膜を重ね、肌と肌を重ねることができたとして、何かが変わっただろうか。

未来を約束することに、何の意味がある?

不意に、残された浅葉の胸に乾いた笑いが込み上げてきた。

五年待って、俺を探し出すだと?
俺は、それまでお前のことを思ってマスでもかいてろって言うのかよ。
勝手に人の体に傷まで残しやがって。
馬鹿にするなって・・・・・・。

**********

当時のあとがきにはこんなことが書いてある。

参考文献は、埴谷雄高氏の政治論文集、準詩集、高橋和巳氏の「悲の器」「日本の悪霊」、それから加賀乙彦氏の「死刑囚の記録」あたり。
高橋和巳氏の文章は、非常に乾いています。
60年代安保付近の時代背景色濃いこれらの作品は、湿度がないように見えて、答のない矛盾と逡巡に阻まれて、酸欠状態です。
その閉塞と倦怠が、実にミステリアスに物語を押し進めるのです。
そう、全きほどに、私の憧れの文体なのです。

さて、死刑確定囚と無期懲役囚では、現れる精神病理が異なります。
拘禁ノイローゼをくりかえしながらも、いつ訪れるか知れない「死」から逃れるために、「無罪」を訴えたり、宗教へ走ったりして、一日一日を濃縮させて生きるのが前者ならば、後者は、恐ろしいほど緩慢で変化のない日々をやり過ごすために、一種の「呆け」状態を作りながら、日々を希釈しているのです。
本来ならば「無の塔」では、その刑期が知らされていないことによって、如何なる精神障害を引き起こし、切迫した状況を生み出すかを描かねばなりませんでした。(いや、全然書けてないです)

とかんなんとか…(笑)

いつの時代にも絹子には【元ネタ】があったけど、妄想の丈がもっともっと高かったな。
自分の欲望に忠実になるためには枯渇が必要で、空洞が小さくなったら書けないというのは、じゃあどうしたらいいんだ?という気持ちにもなりました。
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