2017-04

ませまなる

えー、今日も今日とて。
ドクターからひどい仕打ちを受け、開いた口も塞がりませんの絹山です。
なんで明日のオペの予定があさってに変更になるかもっていう超重要事項を
関係のないコーディネータさんから偶然に聞いて目を白黒させないといけないんでしょうか。
加えて、9月のビッグな連休が露と飛び散りまして。
まあ期待なんぞしていなかったけど、単純に土日祝休みをフツーに休ませてくれといいたい。
ちなみに僕の夏休みは、10月に三日平日もぎ取るのが精一杯でした。

さて。
お絵かき原稿をしていたときのお供は、音楽。
懐かしのVenusPaterやPenpalsを引っ張り出し、
素氏がもっていたPentangleがあんまりいいので、涙する。
このよれた女性ボーカルどっかで聴いたなと思っていたら、
15年近く前に妹が、聴け!と送ってくれたカセットテープに入っていた人たちだった。

で、音楽以上に、文字書き原稿なら絶対聴けない、落語CD三昧でありました。
落語は同じ話を何度聞いてもおもろいです。
いや、むしろ話の流れをつかんでいる二回目以降、
くるぞくるぞ~とツボを待ち受ける瞬間とか笑いに飢えた喉の奥がきゅっと小爆発する。
あるいは、最初は苦手かもと思った小さんの声が全然気にならなくなったり
志ん朝もいいけど、馬生の方がもっといいわあと、騒いだり。
集中線が震えんばかりに、笑い転げていました。

何度も同じ話を聴くので、まだ落語入門の駆け出しといったところですが、
僕が好きな言い回しが、
「眼ん玉くり貫いて、銀紙でも張っとけ!」っていうやつ。
深く絵を想像するとちょいとグロテスクな雑言ではありますが、
往々こういうきつい投げ付けが、複数の人から、バッカヤローの罵りのあとに飛び出す。
一回目よりも二回目、三回目。
ついには云われてる本人も、「ああ、銀紙張っとけってんだろ!」と逆切れする面白さ。

僕の好きな話の傾向としては、
勝気なおかみさんが出てくるのがいいですね。
亭主のことをバカだ、情けない、もう我慢ならないとか文句を振りまきつつ
心底では惚れ抜いていて、駄目な旦那をいいように導こうとチョコマカしている。
「火焔太鼓」とか「藪入り」とか「抜け雀」のおかみさん、大好きだな。
お馬鹿ちゃん同士の掛け合いも好き。
「笠碁」の喧嘩しつつも、早くまた碁を打ちたいなと思いあい、素直になれず格好つけては臍を曲げる。
ようやく友達が戻ってきたら、家人に羊羹出せ!と叫んでるご隠居、いいなあ。
友情も恋に似たるかなってくらい、可愛い。

と、大部分は好きなんですが、
どうも僕はまだ歌舞伎を題材にした話のよさが、まだ分かりません。
「中村仲蔵」「淀五郎」とか、基礎がなってないせいか、しんみりこないんだな。

定期購読している小学館の「昭和の名人」シリーズには毎回冊子がついていて
落語のハイライト・語彙の説明も載っています。
で、僕は「宿屋の仇討」を三回聴いたあと、耳に残るある語をその冊子で探してみました。
ありませんでした。
ある語とは、「ませまなる宿屋」という言葉です。

お話はある宿に武士がやってきて、泊まるところから始まります。
宿の若い衆イハチに、今まで泊まっていた宿はうるさくてかなわなかったから
部屋はどんなのでも構わないから、静かなところに泊めてほしいと頼むのです。
それがこんな科白。

「相州小田原なにわ屋と申すませまなる宿にとまりしところ
有象無象一緒に寝かしおる
巡礼の親子がご詠歌を唄うやら
駆け落ち者が夜っぴいていちゃいちゃ話をするやら
相撲取りがいびきをかくやら
とんと寝つかれぬ。
今宵はませまなるところでも構わぬ、静かなところに案内せい」

その後同じ宿にやってきたのが、三人の江戸からの旅人。
陽気な輩で芸者衆を呼んで大騒ぎ。
すると隣の部屋の武家から「イハチ~、イハチ~」と呼び声がかかる。
堅物の武士は、「相州小田原なにわ屋と申すませまなる宿にとまりしところ」と説教がはじめた。
イハチは仕方なく引き下がって、隣に文句を言いにいく。

三人は怖い武家が静かにしろといっているからと云われ
宴会をやめて、布団を巴に並べて、相撲の話を始める。
話高じて、三人はドタンバタンと相撲をとり始める。
ハッケヨイハッケヨイの最中。
またも「イハチ~、イハチ~」の掛け声。
拙者泊まりの際、お前に申したなとドスを聞かせた上で、
またも、「相州小田原なにわ屋と申すませまなる宿にとまりしところ」と説教だ・笑。

怒られた三人衆、再び声を潜めて、色事の話を始めた。
三人のうち一人が、急に神妙になって3年前に川越で起こした事件を語る。
おちゃらけた男に見えたのに、立ち寄った侍の家のご新造に気に入られ、
一緒に酒を飲んでいるうちに抜き差しならぬ関係になったと言い出した。
主人は不在だったが、そこに主人の弟が帰ってきて不倫発覚。
弟に不義密通で切り殺されそうになったが、逆に弟をめった切りにした上に、
ご新造が大金をもって一緒に逃げようというのを、彼女も殺して金を奪って逃げたというのだ。
興奮した二人はまた、大騒ぎになる。

さあ待ってましたとばかり、「イハチ~イハチ~」の声。
イハチも寝られやしないと恐縮して、
「相州小田原なにわ屋と申すませまなる宿にとまりしところ」
でございましょう?と先にたって申し上げたのだが。
今度は武士の様子がどうも異なっていた。
自分は、三年前に妻と弟を殺された武士で、ずっと仇を探していたという。
そう隣で騒いでいるやつらが自分の仇で、明朝成敗するから縛っておけときたもんだ。

泡をくったのはイハチばかりじゃyない。
二人殺したと鼻を高くしていた男も、泡だらけ。
だって、そいつは別の宿で聞いた他人の身の上話を、ただいっぱしの色男になりたくて
さも自分のことのように喋っていただけだったから。
偽の仇討ちで殺されたらたまったものじゃない。
でも、結局三人は、宿の奉公人に縛られて夜を明かすことになった。

翌朝、武士はまるで昨晩のことはなかったようにすっきりとした面持ちで
宿をあとにしようとする。
イハチは慌てて、あの三人はどういたしましょうと質すと。
なに、あれは余興じゃ、嘘じゃと大声で笑い出す。
よく眠れてよかったなっと。


話が長くなったけど、この「ませまなる」とは、「間狭なる」のことなんですね。
貧相な宿屋を形容しただけの語だったんですね。
でも、どうもこのお武家のこもった、四角四面のしゃべり方で聴くと、
とんでもない雅た、気取った言葉に聞こえるんです。
そう、僕はずっとこの「ませまなる」は「やんごとなき」みたいな意味だと思い込んでいたのです。
マセル、マサルの語感に似てるからか。
素氏に「ませまなる」って何?って尋ねたら、普通に答えを返されて、
ええーっとなりました。
喋り方ひとつで、こんなに違って聞こえるのも、落語の醍醐味でありましょうか。

さて本日もグダグだなので、「ませまなる宿」ならぬ「本に埋もれてませまなるお家」で
早くごろごろしたい、「ませまなるタヌキ」でございます。

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Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

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