2017-06

落ちてくる影

部分日食の太陽を背負ったように、その道は奇妙な影を落としていた。
影の本体が見当たらないのに、歩く人の頭上がひどく暗いのだ。
道は緩やかな勾配の坂になっていて、幅は人が四人ほど並んで歩けるくらい。
幅を区切っているのは、塀や壁ではなく、頭にかかる影である。
我々が進んでいるところだけが、やけに明るい。

僕の横には、くたびれた黒地に細かな杉目の入った背広を着た男性。
頭はもじゃもじゃとした癖毛の黒髪で、肩幅がやけに広い。
広いというよりも彼の体は足元に向うほど極端な遠近法をもっていて、地に向えば三角錐のように小さくなる。
顔は判然としないが、どうやら大学の先生によくある顔のようで、
僕はずっとその人のことを、本の中では知っていたけれど、初対面であるようだ。
年齢は五十前後、本に載っていた写真では小柄に見えたけれど、
やけに背が高く歩幅が広いので、喋りながらついていくには、こちらは駆け足寸前である。

会話は経済の話のようである。
僕はなにか答えねばと、接ぎ穂を見つけねばと、
浅薄な知識をもって、さして内容に興味ももてないのに、ありきたりな実例を語る。
すると彼は、急に足をとめて、僕の浅さを見抜いたように短い単語で、話を終わらせようとする。
もじゃもじゃの髪の毛の上を漂っていた影は、そうして一歩立ち止まり諫めの言葉が振りかけられると
数センチ下にさがり、顔を隠す。
そのうちに、僕の首にも影がさがり、だんだん視界が遮られてゆく。

追いかけて、話をしようという努力はまだ続いている。
けれど、遮った影の中に、モニターめいた長方形の枠が浮かび上がり
僕の声を掻き消す大音響で、映画の宣伝が始まる。

知っているような知らないような芸人が、白い背景に立って体を揺する。
メトロノームの左右の振り子から、重力に逆らった振り子のように回転をはじめ
そのうちに四肢と首はまったく人間の不可知の動きによって、四方八方に回転する。
そして、千切れてゆく。
千切れたけれど、周囲に飛び散ることなく、肌色と髪色と服色が混じった滴になり、
既になくなった体躯の中心に、数十の部分が回転を始める。
そう、エッシャーのほどけた包帯の顔のように、ぐるぐると回転する。
僕が呆気にとられて、ついに話すことをやめて立ち止まると、
映像はさらに複数の人間の体を珈琲カップの中で回転するミルクみたいに分散させる。

重低音のビートの上に興奮した叫びがまじり、ますます映像は激しさをまして回転する。
僕はただただ見とれている。
モニターの数も次第に増えて、縁取りとなった影はついに爪先まで降りてくる。
そこで先生と思しき彼が、「これが素晴らしい金融というものです、掴めない未来というものです」
とのたまった。

***

本日の夢より。
目覚めてなお、耳の中ではその反響するBGMが続いていたけれど。
数文字の聞いたことのないカタカナは、もう思い出すことが出来ない。

今日は冬コミの申込をしました。
今朝も早朝出勤で人のおくちと戦っていたので、やっと二時半に昼休みをとって
郵便局に向う途中、日傘の内側で眠ってしまいそうになりました。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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