2017-06

とっておきの羽根

僕は知っている。

毎日、悪いことが重なり続けても。
奈落へと、落ち続けても。
ほら、子供の頃によくみた、背が伸びるという落下の夢の先。
落ちても落ちても、僕は一度たりとも底は見ることがなかった。
ジェットコースター大嫌いだから、あの足元が掬われる浮遊感は、たまらなく気持ちが悪いけど。
あれは重力のいっときの気まぐれで、たとえ頭が重みに耐えきれず真下を向いたとしても、底には到達しなかった。

もう少し、いや僕は延々と落ち続けても、
何かしらの羽根をもって、加速を緩め、視界をごまかし、底を知らずに浮遊しつづける。

その羽根のひとつは、ラム漬けのブルーベリー色した堕天使の羽根であり、
もうひとつは、ホンモノの本である。
「小遊星物語」は一週間以上、僕に読了を許さず、一行、一文字ごとに瞼に花火をあげさせた。

もう一度、昔習った手法で花火を。
クレヨンの全ての色を使って、画用紙を野放図に塗りつぶす。
その上から、真っ黒のクレヨンで、極彩色を塗りつぶす。
おもむろにニードルでもって、黒の上に、決して下書きできないまま、花火を描く。
どこに二層下の色を塗ったか忘れてしまっているから、
僕たちは鮮やかな驚きをもって、まるで遠雷を聞きながら、
すぐそばにある嵐の予感に震えながら、めくるめく花火が打ち上げられるのを見上げる。

あの四散八散してゆくおのおのの火の粉の行方を、誰が知ろう。
あの火の粉もまた、到達点を持たぬもの。
重力の存在を知りながらも、一方で浮揚や遠心力の存在にも耳を傾け、
恐れることなく、飛びすさる。


僕に「本」と呼ばれるものを無理に貸していった彼等。
彼等のことは、別段何も感じるにも及ばないけれど、
あれは「本」などではないよ。
○○賞・ベストセラー、そんな惹句になんの真実があるのか。
自ら作った枠に縛られ抜け出すことの出来ない文字たち。
日本語を使っているように見えても、何十枚と原稿用紙を汚しても、
なんの意味ももたない、ひどく下賤ななりたち。

僕は、羽根とならないものは、もう何も望んではいないんだ。
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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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