2017-06

ナメクジのおじょうさま

途中、水溜りががあるたびに、ナメクジは自分が今夜第一の美人になれるかと案じては、しばらく姿をうつして眺めるのだった。それかあらぬか、途中歩きながらも、彼女は雲母の粒、ガラスや陶器の破片といったような、小さいながらも光るものを拾い集めて、わが身を飾り立てていた。彼女がそれらのものを、頸のまわりの頸輪にしたり、背中を飾る宝石にしたり、素性の正しい軟体動物なら誰もが誇りとする多少粘着性のある分泌液の効果でそれらのものは、彼女の脇腹に定着するのだった。

「どう、あたし美しくって?」
と、こう、彼女は自分のパートナーに尋ねた。

「ふふうん!随分貧乏たらしい宝石だね。安ぴかものばっかりで」
と、こう、カタツムリが答えて言った。

これが、このお嬢さんのプライドを傷つけた。これがこのお嬢さんを誤らせた。毛虫の中の第一の美人さえが嫉妬で色を失うほど素晴らしい装身具が見つかるまで、彼女はやめなかった。彼女はゆくゆく途中に、鳥の羽根や花びらを拾い集めて、前立毛にしてかざしたり、花束にして頬の上、額の上、さては角の間に挿したりした。

「今度はどう?相当なものでしょう」
と、彼女が言った。

「つまり」と、この慇懃な騎士は答えて言うのだった。
「どこから見ても成金としか見えませんね。なにしろそれほど思いきって、いきな渋さというものに正反対な装(なり)もまず無いでしょうからね。せっかくですがこれで、お相手は御免こうむりましょう」

やむなく、この安ぴかものは諦めなければならなかった。何度となく風呂を浴びて、洗い落とさねばならなかった。そしてまた、何か他のものを見つけなければならなかった。

モーリス・ブデル「毛虫の舞踏会」
堀口大学訳

****

漫画チックな景色が好き。
このあと、「生きた宝石」ことツチボタルを背中にのせて、舞踏会へと乗り込みます。
入浴剤含まれる塩分で溶けていないといいけど。


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