2017-02

quartzite

水曜の夜9時に布団に入る。
睡魔に勝てず。
朝、6時過ぎに目が覚めた。
薬飲み始めて変わった一番のことは、やたらに夢を見ることだ。
おそらく誰でも夢を見ているが覚えていないことが多く、せいぜい目覚めの数分前に見たことくらいしか残っていない。
僕も今まではあまり覚えていないことが多かったけど、ここ一ヶ月見ない日はない。
それも、亜悪夢ともいうべきものか。
最悪とまではいわないが、出てくるメインの人物が往々三種類しかいないので、
どれも軛のような存在なので、さらに夢見ている最中に「これは夢だ、早く醒めろ」と思ってるのがもっとしんどい。
そのくせ目覚めると、全身気だるく背中や腰に激痛が走っているので、一日の中で最強の絶望感を浴びている。
だから夜を越えるのが苦しい。
薬がどういう作用で愚鈍な夢を誘っているのか、機序が想像できない。

**

仕方がないので一番早く出勤する時より10分早く家を出た。
電車は遅延していた、が、二本前の電車だった。
乗り換えた京成はなぜか乗ったこともない早い電車に乗れた。
すると1時間15分かかるところが50分で到着するという奇跡。
なんだか、損したような気分である。
仕方がないので早々にネズミたちにご挨拶。
みんな病気持ちになってるので、毛並み悪いし食欲もなさそう。
なのに毎回尻尾切られて可哀想なんだけどね。
一日がやたらに長く、雪がざんざんと舞う中、帰宅。
ようやく今週が終わりました。

**

バラード、読めば読むほどかっこよさに痺れる。
情景描写の荒涼感がたまらん。
ゴシック建築とかバロック風という語彙をこのような風景に用いた比喩がかつてあっただろうか。

面白い小説の登場人物は、反体制である。
「体制」がなんであれ、抗う人である。
抗う方便は、戦うことだけにあらず。
怠ける、疎む、逃げる、怯えるであったもいいのだ、アンチであれば。
そこに沸々とした孤立が浮かび上がってくれば。
そういう意味でも、バラードはかっこよすぎると思う。
抗わせておいて、放置プレーする、救いなく、冷ややかに壊れた世界を見おろしている。

「砂の檻」という一編で、後半になって明かされる、砂まみれの地球の成立過程と、なぜ疎開を拒んだ三人が拿捕されようとしているのか、判然とした時、本を落としそうになった。
電車の中で、わーーと叫びそうになった。
今更、基本文献で騒いでいる、僕はなんとも愚かしいのだが。
もっと早くに出会いたかったな。

些細なことだけど、ヴェールをベールと書かないで済むなら、ビールスはないだろうと思う。

**

およそ五十年前、惑星調査ロケットや宇宙船がぞくぞくと打ち上げられ、大量の物資や装置類が火星に運ばれた結果、地球の重さがごくわずかだが低下して、太陽をめぐる軌道がよりせばまるのではないかというおそれが生じたころ、数百トンの火星の表土がそれを補うために地球に運ばれた。地球の軌道が太陽に接近する距離は数ミリメーターの範囲を出ず、したがって大気の温度もほとんど不変であると推定されたが、その極微な温度上昇も長期間にわたって累積されると、希薄な外気層と、地球の生命圏《バイオスフィア》を生存可能にしている放射線ヴェールが宇宙空間に消滅してしまうことも考えられた。

そこで二十年間にわたって大型貨物船団が地球と火星の間を往復し、ケープ・カナヴェラルの着陸場付近の海に積荷《バラスト》を投下した。これと平行してソ連は、カスピ海の一部を埋めたてた。当初の予想ではバラストが大西洋とカスピ海の水に呑みこまれてしまうだろうというつもりだったが、まもなく火星の砂の微生物的分析が不十分だったことが判明した。

かつての大気中の水蒸気が凝結した場所である火星の極冠では、古代の有機物の残滓が表土を形成していた。それは数百年万前まで生き残っていた火星最後の有機体である巨大な地衣類や苔の化石した胞子を含む微細な黄土層であった。これらの胞子の中には、かつてそれらの植物を餌食にしていたビールスの結晶格子《クリスタル・ラティス》が内蔵されていた。それがケープ・カナヴェラルやカスピ海に投下されたバラストといっしょに地球に持ちこまれたのである。
 
それから数年たって、アメリカ合衆国の南部諸州とソ連のカザク共和国およびトルクメン共和国において、広範囲にわたる植物病のおびただしい増加が認められた。フロリダ各地で枯凋病とモザイク病が発生して、オレンジの木は枯死し、道ばたのシュロの葉は乾いたバナナのように枯れ、マニラ麻の葉は熱気のもとで硬化して紙の槍のようにめくれあがってしまった。数年以内にフロリダ半島全域が砂漠と化してしまった。エヴァグレーズの湿原ジャングルは白っぽく干あがり、乾いた河床には白く輝くワニや鳥の骨が散らばり、森は完全に生命を失った。

ケーブ・カナヴェラルの旧発射場は閉鎖され、それからまもなくココア・ビーチは立入禁止区域に指定されて住民は疎開し、何十億ドルもの値打ちのある不動産はビールスにゆだねられた。さいわいこのビールスは動物宿主に対しては無害だったので、その影響力はビールスを含む火星の黄土を投下した狭い範囲に限られていた。ただしそれが人間の体内にはいりこみ、宿主に対しては害を及ぼさず、したがってその存在にも気づかれないままに、腸内のバクテリアと共生し、やがて排泄されて土に還った場合は、ケープ・カナヴェラルから何千マイルもはなれた土地の植物に壊滅的な被害を与えることが予想された。

『永遠へのパスポート』 創元推理文庫 1970 永井淳 訳 255-256pp


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