2010-09

フィクションも度を過ぎれば

僕はいわゆる腐女子の湯に足をつっこんでいた一員なので多くは否定できない
一応大きな「女子」の中の一人ではあるが
おっさんにはなれても、おばはんにはなかなかなれそうにもない人である。
その理由のひとつに、ガールズトークと呼ばれるものが、非常に苦手だということがある。
一対一ならなんとか凌げても、三人寄れば倒れそう、
同時にコスメもファッションも噂話もダイエットも、その辺り一面範疇にない。
変に映画や本の話もしないほうが、無難。
むしろ、メカ、エンジン、ノコギリの刃、ねじ山の種類、あるいは絞りについて
聞かせていただければ、喜び勇んで瞳を輝かせますぜ。

が、そんな世界の端っこの話をしてくれる人は実際にはなかなかいない。
だから、僕はいつも考えてあそぶ。
これは、妄想と呼ぶものとは、少し性質を異にする。
なぜなら、妄想は、大なり小なり、思考する人の「快」に属するものだからだ。
たとえそれが、世間的にはスプラッタであったり、えげつないものであっても。

僕のそれは、情報処理でいうところの、フローチャート。
フラグを随所に立て、1か0の条件を与えた上で、頭の中で絵を動かす。
例えば、条件1「職場の病院で刃物を振り回した男に、自分が腹を刺された」
条件2「仕事復帰まで一ヶ月かかる」
条件2’「復帰不能」
などのフラグを瞬時に立て、そこで周囲の人間がどのように変るかを頭で動かす。
動かすとはいっても、実際には動くである。
ここに意志の力も、想像力も働かない。
勝手に頭の中で、ニュースの映像、個室の映像、メールの文面などが
ザーーっと、長いときには、十数分流れ続ける。
僕は、それを淡々とみている。
遊んでいるというよりも、歩きながら本も読めないので、その映像を見ながら、長い徒歩の慰みとしているだけだ。
一つの映像が終ると、今度はフラグ2が2’に切り替わり、映像が流れる。
感興はめったに起きない。

あるいは 条件3「母親の葬式」
条件4 「喪主になってしまう」
条件5 「和解しないまま死に至った」
の時も、勝手に弔辞を読む自分の声が頭をめぐる。
こちらもただ延々と映像が流れるので、時々この無軌道TVの電源を
看板の文字を読み上げることによって、オフにしてしまうときもある。

あるいはまた、小さな言葉の種が落ちてくる。
その種が、勝手に頭の中で増えていき、目的地につく頃に、日記が頭の中で書き終っていたりする。
だから実際にPCの前で日記を綴る時間は、調べものや引用がない場合は、
少しの推敲を除いてただ打ち込むだけの時間となる。
ただし、頭の中で書き終わったものが、実際にここそこのBlogで公開されるかは、
夜に棲む、別の僕に委ねられていて、小さなメモリしかない僕の脳は、
さきほどの多くの映像も音声も、彼方の光の中へ四散させてしまうことのほうが遥かに多い。

***

では、もっと能動的な遊び、能動的な妄想をひとつ。

僕が所属した学校にはどこにもなかったのだが、
かの鉄道研究会と称された部活では、目的地を決めて、
分厚い時刻表を片手に、分刻みの旅程を組んでいく楽しい遊びがあるという。

日曜美術館のアートシーンを見ていたら、
静岡県三島市の佐野美術館で、
10/11まで「没後120年記念仕掛けの絵師―鬼才・河鍋暁斎」をやっていると知る。
ちょいと見てみたい。
でもちょいと遠い。
三島なら、朝出れば余裕でこれだけ観て、日帰りできるんじゃないか。
などと能動妄想の旅を計画する。

もちろん、交通費は安いが一番。
最初に思いつくのは、ぷらっとこだま計画である。
しかし、この割引プランは、停車駅が、新横浜/静岡/浜松でしか通用しない。
決まった駅で一度改札をでないといけないらしい。
三島も新幹線の駅だけど、静岡から引き返すなんていう馬鹿らしいことになりかねない。
ならば、通常のこだまで行くか、あるいは特急踊り子か、あるいは二時間かけて在来線である。
JR在来線で2210円、こだまで1時間4400円である。
むー。

そこで、急遽バスに眼を向けることにする。
平日なら1000円高速の呪縛もなく、それなりのスピードで行けるはずと思ったのだが。。。
ここで僕は大きな落し穴にはまったのである。
ネット上で、「東京 三島 高速バス」とぐぐって見るとヒットする、
東静高速鉄道/東静バス→これこれ が大変な曲者だった。
というか、僕が、非常にオバカちゃんだったのかもしれないけど。

なになに、結構夜間だけでなく、本数出てるじゃないの、ドリームみしま号。
東名御殿場からいったん三島に下りて、また東名に戻って静岡に向かうんだ。
これなら、朝出て夕方帰ってくるっての、ありじゃないの。
運賃1900円か、JRより安いし、途中で乗り換えなしなのもいいかもねー。
とか、すっかり素氏の公休日をカレンダーで見比べたりして。
乗り乗りになってきたのだが。。。。

ここで僕は次の文字に眼を留めた。
「この路線は3月上旬頃の運転開始を予定しております。」
この3月って今年のこと?ちゃんと運行開始されてるのかな?
そこで頁頭に書かれた一文に、腰を抜かす。

このページの内容は全て架空のものです。

涙。
えーーーーーーー?
つまりこれは、このHP全体が、妄想の産物だったのだ。

きっとバスマニア、時刻表マニアな人たちからはすべからく周知のサイトに違いない。
でも、僕は完全にくるくる踊りましたよ、腹鼓鳴らしてましたよ。

気を取り直して再調査して分ったことですが、
三島は、東名から離れている関係で、高速バスが滅法少ない。
僕が確認できたのは、
富士急行バスの「みしまコロッケ号」(この名前・笑)が新宿/渋谷⇔三島
東海バスの「三島エキスプレス」が新宿⇔三島
しかありませんでした。
料金は、回数券を使うと片道1700円まで落とせそうです。

ただし、本数が一日2、3本なうえに、
基本的に三島側の人が東京日帰りしたいという感覚で作られているとみえて、
下り始発が東京をお昼に出て三島に二時半、上り最終が三島を五時とかっていう設定で。
これじゃ、暁斎一つ見るだけでも、かなり厳しいのですよ。

ということで、僕の妄想三島行きは、あっけなく妄想に終るのでありました。
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タヌキの嗅ぐ山

腹いてー!
といまだ一時間に数回悶えつつも。
なんとかここまで回復。

昼過ぎて熱下がりにけらし白妙の洗濯干すてふ小名木の川端

っていうか、末句は「タヌキの嗅ぐ山」の方がいいかしら。
って何を嗅ぐの。
どうも二日間高熱で頭が少しおかしいようで。
さらになんとか職場にいったら、逆に頭が冴えました。

帰りの電車の中で『航続海底二万哩』に収録された
「月と陽と暗い星」という虫太郎の短編にぶっとぶ。
この本、結構変な短編オンパレードなんですよ。

青空文庫にすでにUPされている、「一週一夜物語」は
主人公をMr.O'Grie(オーグリー)と名づけて横浜から印度に渡らせヘミングウェー嬢との
ドキドキ恋物語を描かせておりますし。

「美しい鱒」は虫太郎が新青年の『運命の書アンケート』で青春の一冊として回答した
ミューラーの「ドイチェ・リーベ」を引き合いに出したもの。
さらに虫太郎作品の中ではいままで一度しか見ていない、企業乗っ取りが舞台でして
加えて、主人公の女社長にして航空機設計士の紀伊子は初恋の年下の男性を娘に奪われ、
逆に腹いせに娘の婿にしてやろうと考えていた男から告白されるという、
珍しいドロドロ恋愛ドラマ。

「紅い喇嘛仏」は美しい幼年期の王子様と日本人少女の恋が、ピカレスク取り替え譚に変化。
もちろん、あの虫のレズものの最高傑作「方子と万起」や江戸時代探偵もの「岳太郎出陣」も入ってます。

でも、この「月と陽と暗い星」はそのいずれも退けるほどの、大ギャグ!!
このタイトルからは全く想像不可能なほどの。
何しろ、世にも珍しい平安時代が舞台なんですよ。
主人公は赤染衛門ちゃん(笑)。
三十代というのにおそろしいほどの童女づくりだとか。
最初に笑ってしまうのは、衣装や小道具は平安時代にしていても、喋る言葉が現代語そのまま。
さらに、地文に、虫ちゃんお得意のカタカナルビが踊り始める。
そして、話は世を騒がせる孤独の変革者・百済根童子〈くだらねどうじ〉に移っていく。
いつの世も、孤高の反逆分子、悪漢に対しては、世のオバサマたちはキャアキャア云ってしまうもの。
赤染衛門も、おしゃべり仲間の伊勢大輔も、悪くは思っていない上、大輔から策略の片棒担ぎまで頼まれる。
おしゃべり過ぎて、夜は更けて、赤染衛門の旦那様・匡衡がお迎えにくる。
帰路、警護が厳しくなっているのをみて、お堅い匡衡はイライラ。
そこで赤染衛門がちょっと百済根を持ち上げるようなことをいったものだから、夫婦喧嘩勃発。

僕の平安時代の女性のイメージを覆すような展開が進んでゆく。
赤染衛門は全く負けることがなく、検非違使がヘナチョコだからとか、挙句は旦那に向かって「羊」と弱虫扱い。
最後は、自分の方が才女で五位(匡衡は六位)で位が高いのだと、旦那を蹴飛ばし蹴飛ばし、池の端まで追い詰める。
すげー!

まあ、この後、安部晴明まで出てくる展開は皆様に楽しみにしていただくとして。
さきほど、地文、ルビならまあ許せるかと思った外来語/カタカナが縦横無尽に飛ぶ様を引用して
大笑いで終わりたいと思います。

今日も素氏と話していたのですが。
一斉に100人が黒死館から虫太郎世界に突入したとして、生き残るのはよくて10人
そののち、法水シリーズに入って残るは、二、三人。
そして、こんな辺境の面白短編に辿り着くであろう変人は一人いるかいないか!
という予測が立っております(笑)。
かくいう素氏も辿り着いていません。
ということで、奇人うれしや、変人たのしや、
貴方も是非奇人の一人になってみませんか?

では、昭和14年に「オール読物」に書かれた平安時代ということをよくよく頭に描いてご賞味ください。
僕は、これを岡野玲子の『陰陽師』を百年先取りにした作品と呼びたいです!

その翌日、空前の賑やかさで性空上人の行列が、京の西郊から繰りこんできた。
陽気で派手好きな上人はバンドをつくり、法螺貝に、ピストンをつけたホルン様のものや、大型の、バス・チューバ型、トロムボーン型、横笛〈フルート〉に、篳篥〈しょうしちりき〉の木管に銅羅に鼓をくわえ、輿をまもらせ堂々と乗りこんできた。香煙、銭雨、念仏のなかで、侍僧どもが合唱する。

 仏は無差別祈祷のほかに
 尊卑あまねくめぐむは薬。
 大黄、キニーネ、苦味丁畿〈くみチンキ〉。
 これは快楽無退薬、噛めば宝の響きあり。

小栗虫太郎『航続海底二万哩』桃源社 115p

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プロフィール

絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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