2009-10

チクタク通奏底音

昨日の「村のエトランジェ」の中で。
若き小沼丹が「白い機影」という話で使っていた技巧が、瞼の裏を掠める影だった。

実際には戦時中、日増しに頻度を増していく空襲警報、実機の飛来、防空壕への避難、そして地響きと紛うすぐ脇に落ちる爆撃音は、いずれも現実であったが。
同時に語り部の僕が見上げた空にひらりと白く認める機影は、半ば幻の蝶のように自身の瞼の中にも飛んでくるようだった。
戦時下の緊迫感はおかしいほどに感じられず、病に冒された画家を振った女(求婚直前に姿を消してあっけなく人妻になった女)が、画家の元を執拗に訪れる緊迫感の方が、よほどに生々しい作品になっている。
かつて、画家は彼女の肖像画を描き上げたら、プロポーズしようとしていたのだ。
けれど、女は一度は男の元を去り、二度と触れられぬ状態になってから戻ってきて、残酷にも、自分の絵を仕上げてくれと請う。
男が病だけでなく、心も冒されて行くのは当然である。
そして、僕の目には、画家の不安の色彩の中に、白い機影が何度も重なる。

また「白孔雀のいるホテル」では。
このいかにも瀟洒な物語を期待させるタイトルに比して、実際には、「白いホテル、白孔雀がロビーを練り歩くホテル」を夢見て、ガタガタのぼろ宿を経営する男と、宿の管理を任されたにわか管理人の青年(語り部)と、たった四人(一夏に)の宿泊客の物語。
白いホテルの設計図、孔雀の優美な姿だけが、同じく幻になって、実在の荒んだ宿と異様な対照を見せながら、話は進んでいく。

そう、どちらも、粗筋の全体には一切関与しない影が、通奏底音になって流れていた。
小沼丹は、どちらでもこの影を上手に使い分けていたけど(前者では不安げに、後者ではコミカルに)、結構使いづらい代物だと思う。
こういった影は、音であるときもあるし、匂いであったり、肌触りであったりすることもある。
ただいずれも、過不足なく使わねばならない。
適時に適当量ふりかけないと、胸焼けしてしまうのだ。

いま、半分ほど読み進めてきた、S・エリクソンの「黒い時計の旅」では。
当然ながら、チクタク時計の音がする。
また同時に、時空と空間を認知しながら飛翔するために(ちなみにSFじゃないからね)、そして読者を謎の海に落とし込むために、「彼」と「彼女」といった指示代名詞が横行する。

黒い時計の旅 (白水uブックス)黒い時計の旅 (白水uブックス)
(2005/08)
スティーヴ エリクソン

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まだ読了していないから、ちゃんとは言えないけど。
現時点で、チクタクと指示代名詞の効果は最大限、魅力を発揮し続け。
僕は、諸手を挙げて叫んでいる。
「かっこよすぎでしょ、この小説。憎々しいほど、かっこいい!」

ケルアックの「路上」とか読んだことないくせに引き合いに出してしまう、ビートニク。
ええ、チクタクが文字で流れる音だとすると、文字なしでずっと低く音速のビートが刻まれている。
頭と腰にガンガンくる。
このままの状態で最終章まで突っ走れ!と頁も通常の数倍の速度で飛んでいます。

素氏に勧められつつも、長らく放置していたのには理由があって。
それは柴田元幸さん訳ということ。
実は柴田さん自身は、僕かなり好きなんですけど。
最初に手につけた、ミルハウザー、さらにポール・オースターがかなり合わなかったので。
翻訳家というのは、もちろん請負仕事もあるだろうけど、自分の好きな作家の作品を訳するというのが本当だと思うので。
その点、二者合わなかったということは、エリクソンもなにしろ南部系以外のアメリカ人だしと、逃げていました。
でも、どうやら杞憂だったようです。
ま、僕の苦手なアメリカ的ぶっ潰しだゴー、な雰囲気はありますが、暴力の好ましい面がこの本では非常に洗練されて(汚穢の美学的に)いるので、個人的には受け入れやすくなっているのでしょう。
ということで、後半も楽しみです。
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そは不可解なもの

先週末、なぜか借り出された無給無交通費のイベント受付係で、10月とは思えない日差しの下、千鳥が淵公園に立つ。
しかし、巷の健康ブームとやらにはぞっとする。
なんでこんなに狂ったように皇居の周りを多勢で走り続けるのか。
お堀の景色はスモッグでけぶり、警察官は仁王立ち、脇の道路は車びゅんびゅん、日常ランナー多すぎで、普通に歩行もままならず。
マラソン好きは一日に二大会出場するツワモノもいるらしいけど、やはり、汗ダックダックで受付に来る人あり。
僕には未来的な計測用ICチップもみんな慣れたもので装着していたのには、驚きでした。

腰痛発生で全てのスタートが終了した時点で退散し、昼寝しようにも副業のせいで肩こりがひどく寝付かれず。。
あとで聞けば、脱水で倒れちゃった知人や先生とかいたようですが。
僕的にはせっかくの秋晴れ、どこかにお散歩行きたい気分でした。

***

ということで、今日は横浜の近代文学館へ大乱歩展に出撃。
空腹と、連日の仕事疲れで桜木町到着次点で既にご機嫌斜めな絹山さん。
相変わらず下調べしない素氏に連れられていった点心のお店は、まだ開店まで30分もあり。
喫煙場所を求めて10分歩いて辿り着いた公園で、さらに機嫌が斜めになり。
戻った飲茶の店のメニューが高すぎるとケチをつけ。
結局、聘珍樓茶寮で簡易飲茶をして終了。
ええ、胡麻揚げ団子と豚角煮飯、蓮葉チマキ、点心各種食べました。
あー、でも昔、香港で連れて行って貰った、あのワゴンで山ほどいろんな点心が回ってくる、ああいう雰囲気もう一回、味わいたいなー。

でも、血糖値上がって機嫌良くなったので、元町を抜けて、半端ない急坂をのぼりつつ、外人墓地を横目にみる。
そしたら、本日は墓地は特別公開日だという。
持参した手に吸いつくデジカメを握りしめた素氏と、順路を外れていろんな墓石に吸い寄せられていました。
そこに眠る方達の偉業よりも、墓型に惹かれていく二人。
ケルト十字だ!ギリシャ正教だ!と。
枯れかけた蔦にも似た野葡萄の絡まりや、蜘蛛の巣も余計に雰囲気を醸し。
すっかり、時間を忘れて、墓地を堪能させていただきました。

その後、いそいそと文学館にたどり着き。
紀田順一郎さんの講演が始まる直前に会場入りされた、アリャマタ先生の姿に、オオと唸り。
全体に漂う眠りガスに誘われて、前半何度かうとうとしつつも、乱歩が戦時中貼雑年譜を作成しながら、また海外ミステリの研究を押し進めながら、自己を再認識し、再コード化した流れなどを聞いているうちに、再びオオと目が覚めてきました。
長編に向かない、初期作品を超えられない自分を、どう活かす道を模索したかとかね。
海外に目を向けて、自分の適正が、幻想怪奇に近かったのだと認識したとかね。
正直、講演の間口を広げるためにつけられた、少年探偵ものという視点と、本当のテーマであった乱歩コードの間には、距離があって、少年探偵=引きになっていなかったようにも思えるのですが。
でも、語り尽くされた大御所ではないのだと、改めて認識させられる講演で、面白かったです。

展示物は、やはり整理癖が尋常でなかった生の資料が面白く。
自筆原稿よりも、チェスタトンのトリックを整理したメモとか、カードで一枚一枚整頓された目録とか、思わず文字を追ってしまうので、わくわくさせられつつ閉館ぎりぎりまでおりました。
外に出ると、やはり雨が降っている。
運良く山手駅行きのミニバスがやってきたので乗り込み、帰りに錦糸町の居酒屋で満腹になって帰宅しました。

****

大事に残しておいた小沼丹の「村のエトランジェ」を先日、読了。

村のエトランジェ (講談社文芸文庫)村のエトランジェ (講談社文芸文庫)
(2009/07/10)
小沼 丹

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確かにこれは若書きの作品が多く収録されていて、いまだ「物語を紡ぐ」こと=「気の利いた筋を組み立てる、落ちを際立たせる」ことに躍起になっている一面がありますが、とはいえ小沼色は既に確立されていて、たゆたう日常の寂寥感がちゃんと出ているのが、嬉しかったです。

もう一つ若さという面で感じることは、この時期の小沼氏にとっては、異性が非常に不可解な生物であったのではないかということ。
登場する女性がいずれも年上の、いわば娼婦に属する人なんです。
肉体的娼婦もあれば、精神的娼婦もある。
そして語り手である僕(小沼氏)は、彼女と彼女に関わって身を滅ぼすいずれも芸術家肌の青年達の光景を目で追う。
同時に、女性の理解しがたい、安直に言えば、恋人を嫉妬させたいという欲望に、僕も巻き込まれ、毎度、えー僕は何も関係ないのにと困惑する。
語り手は、当時、小沼氏が感じていた、捕らえ所のない女性というものを肥大化させた象徴にうろたえるウブな青年をひとつ描きつつ。
一方で、不可解ではあるけれど、芸術に身を狂わせつつ、同時に不可解な彼女たちに翻弄されてしまうことを、願っているといった二つの迷いが、余計に不思議な余韻を生んでいるように感じました。
これは、後年の作品とは大きく異なる触感ですね。

あと、ミステリへの憧憬を強く感じさせる作品とかも結構あるし。
素氏が、「それは、逆『杜子春』だ!」と粗筋を話したら叫んでくれた、「登仙譚」がかなり黒い落ちになっていて笑えます。

仙人になりたいお坊さんが、お友達のお坊さんから松葉を食べれば仙人になれると聞き。
一生懸命松葉を食べてガリガリになって、そのうち弟子も目をむく奇行に走りはじめて(木に飛び移ってみたり)。
ついには自分は本来仙人だったのだが、訳あって地上で暮らしている内に仙人感覚を失っていたが、ようやく仙人に戻る日が来たと、大事な書物や身の回りのものをみんなに分けてしまう。
で、噂が噂を呼んで、和尚が仙人に戻る大イベントデーには、近隣住民押し寄せて見守る。
最初は、ぽーーんと岩から岩へ、木から木へと飛べるんです。
だから、みな、おおおおと拍手喝采。
で、サービス精神旺盛な彼は、もうちょっとみんなに仙人のすばらしさを見せるぜと、さらに難所に飛び移ろうとして、、、真っ逆様に落ちる。
みんな、待ってるんですよ。
和尚が、なんちゃってって、起きあがって、ひょいひょい木を登るのを、天に向かうのを。
でも、待てども、べちゃっと潰れたまま、起きあがらない。
結局お寺へとみんなに担がれて戻り、ほぼ半身不随の偏屈和尚と化した彼は、無償で配ったものをガリガリと取り返すといった次第。
うん、初期には、こういうくっきりとしたイヤミ風味の作品もあったのが、非常に驚きでもありました。


旅のおさらい・その2

さてさて、最終日。
チェックアウト正午でOKの伏見(丸の内からも至近)近くのホテルで、
餡トーストを愉しんだ僕は、ネットを開きつつ、その日の予定を検討していた。

候補に挙がったのは、INAXギャラリー名古屋と、トヨタのテクノミュージアム。
で、出力してきていた古書店巡り。
とりあえず市営地下鉄土日周遊券をゲットして、その辺を廻ろうかと思っていたのですが。
あろうことか、素氏が笹も落ちていないのに鼻を利かせて、古本市情報をゲットしてしまいました。
嗚呼。そう。
題して博物館古書市。
勿論、日本史興味の薄い僕たちには、博物館本来の展示などどーでもよく。
名古屋駅コインロッカーに荷物を突っ込んで、まずは桜通線で一気に桜山へ突進だー。

最初は、博物館の余剰図録とか、歴史関係ばかり目に付き、ふーんといなしていたのですが。
なぜか、ゾッキ印の本たちが、僕を手招きしはじめた。
世の中(?ってどんなに狭い世界じゃ)、「モダニズム」ブームでありますが。
僕もなんとなく潮流に乗っているかいなか、その匂いに惹かれがち。

09.jpg

ということで、注目を充分に受け切れていないご当地にも、いやこの地の古書市だからこそ、
こういうモダニズムに着眼した本が出てきてもおかしくないわけで。
かの「ボン書店の幻」を読んだときに出てきた「火串戯」(我が家にも復刻版あり)の
山中散生ちゃんも、ご登場の「周縁のモダニズム」、滅法面白そうです。
素氏の見立て、チリュウというPNは本当に知立からきているのかもしれませんねえ。

で、昨日も書いた、きしめんでなく鍋焼きうどんを食した僕は、
ここから足もげ寸前の、古本メッカに突入していくのです。
まずは大変親切な名古屋古書組合の、この地図をご覧あれ。

鶴舞線・鶴舞から大須に伸びる一直線の道路沿いに、13軒もの店があることが分るでしょう。
普段我々は新しい地に乗り込むときも、同様の地図を持参します。
けれども、無店舗ネット専門店、あえなく閉店、はたまた見付からない、そしてカッスカスのヘボ店と言った具合に、地図の半分が元気なら御の字といった確率なのです。
しかーーーし。
名古屋は違った。

まず、どの店もめっちゃ見つけやすい。
団地とオフィスビルが混在するこの近辺は、土曜日、ひどく人通りがまばらで、お店はほとんど見当たらず、飲食店などまったくといっていいほどない。
けど、なぜか古書店だけは、生き生きと朝も10時過ぎから営業しているのだ。
加えて、最後には、もうカッスカスでOK!と叫び出したくなるくらい、一瞬店頭の均一棚では怯まされても、中に入れば、異様に趣味のいい本屋ばかり。
中には人一人通るのも精一杯の通路満杯の店も一軒あったけど、他はどこも、きちんとジャンルごとに整理されていて、同時にその並べ方には歴然とした拘りあり。
普段なら一日一軒こういう店に出会えればいいなのレベルが、激流となって押し寄せるでありんす。
幸せー。
でも。。腕も財布もちぎれるー。
喉がからからー。
でも。。喫茶店ないし、あっても閉まってるー。

そうそう名古屋の喫茶店のルールなのか。
昔なつかし喫茶店に限って、看板に、黄色いクルクルがついている。
うーんと、消防車や救急車の上についてるクルクルね。
どうやら水無し砂漠地帯で喫茶店探しをしている最中に気づいたことには、
営業中=クルクル回ってるということらしい。
最後には、クルクル乗ってない喫茶店に入り、となりの常連おじさんが、
ウスターソースだだかけのナポリタンをおかずに白米食べてる横で、
我々はアイスコーヒーにほっと一息ついていました。
あと、名古屋近辺では、必ず、ピーナッツがタダでついてくるのも、笑えました。

さて、スーパー地下で唯一閉店となっていた亜希書房をのぞき、全店しっかり見て回ることができたのですが。
僕的オススメのお店は。
鶴舞駅に近い、山星書店。
ここは、理科系のオモシロ読み物と、ひねくれたミステリ関連が素敵。
もう少し西へ進んだネットワークという、非常におしゃれさんなお店も棚が滅法面白かった。
で、ここで僕は、素氏も羨む一冊を、速攻ゲットしたのです。

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えへへ、アルスの最新(とはいえ、昭和五年の本だけど)科学図鑑、「機械時代」だ!
可愛いー、もう撫で回したくなるー。
造本も素敵だし、なにしろメカメカ大好きっ子には堪らない、精緻な図版が目白押しなのだ。

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でへへ。これで千円なんてタダみたいなものだよ。
素氏は、安いが今回の買い物の目安だったみたいだけど。
僕的には重い荷物抱えて、こんな遠方まで来てるなら値段よりも、普段見つけにくい本をゲットすることが主眼なのだ!の心意気で進んでいました。

なので、素氏がいったんは手に取りながらも置いてしまった↓も、
なぜか僕が惚れ込んで入手し、自宅でカート開いてびっくり。
「買ってくれてありがとーーー」と叫ばせた一冊でありました。

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あと、縁が縁を読んだのが、次の賭博本三冊組。
ええ、日頃、法政大学出版のこのシリーズを、秘かに出版界のランチパックと呼んでいますが、
(あのヤマザキの大ヒットサンドイッチ・ランチパックシリーズは、余りにも新製品が出過ぎて、会社自体が、全体像を把握していないという)
まあ、法政大学出版は、目録把握しているでしょうが、
なにしろ「ものと人間の文化史」シリーズは、年々細分化を遂げているように思われます。
我が家にも、「からくり」「色」「箱」なんていうのがありましたが、
今回は、「賭博」の三冊本です。
「つぶて」「海藻」「箸」など出ているこのシリーズにしては、ある意味、視点が広すぎるかも。

で、僕は今回、博物館の方で、第三巻をゲットしていました。
そして先程の、山星さんで、なぜか、1&2だけ紐でくくられたのを、発見したのです。
おーーーと内心、大声で叫ぶ。

そうそう、このお店で、僕が中野美代子さんの中国風景論的な本をパラパラ捲っておりますと。
裏の棚で、ぞぞぞぞぞーーーーっと雪崩が起きました。
勿論、本の雪崩。
そっちの列には素氏がいたもので。
瞬間的に僕は、うわ、やりやがった!助けに行かないと!と
いつものズンドコ振りですっかり素氏が原因だと思い込んで、泡食って一歩前に出たのですが。
すみませんと、謝る声も聞こえず。
二人の店員さんが、堆い平積みの山を直している気配。
後から聞いたところによると、どうやら、自然誘発で、雪崩発生だったらしく。
ほっと胸を撫で下ろしました。
なので、僕は第二の雪崩を起こしてはと、びっくびっくで「賭博」を引っこ抜いたのでありました。

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うーんと、あとポーラ研究所のISが100円で転がっていた千代田書店とか。
新刊と古書併設売りとか言いながら、めっちゃ趣味趣味の三松堂書店とか。
驚異の映画・演劇関連の、猫飛横町とか。
書ききれないほど、おなか一杯の古本行脚でした。

この日、初めての大須観音周辺。
大道芸を囲んで黒山の人だかりができていて、商店街も「手ぶら」「軽装」でありさえすれば、きっと愉しいわくわく散歩道になるはずだったのですが。
ご想像通り、我々は脇目もふらず、帰りの新幹線目指して、地下鉄へと消えたのでありました。

旅のおさらい・その1

今回の旅行では、直前に職場の同僚ちゃんからデジカメを安く譲って貰いました。
これが充電ばっちり、素氏いわく「手に吸いつくよう」な逸品で、取説なくとも使いやすい。
ので、300枚以上パチパチ撮っていました。

旅行の模様は素氏の日記でかなり詳細に記載されているので、
僕なりにおもろかったエピソードなど取り留めもなく。

01.jpg
名古屋市美術館の日本の表現主義展の看板前。
嵐の予感ふつふつとしてます。
素の横にいる姐さんが、展示されていなくて地団駄踏んだ、岡本神草 《拳の舞妓》。
不気味に可愛いよねえ。

二泊目も宿泊客は僕たちだけだった民宿Yのお風呂は、民宿なら当然の家庭風呂だったが、かなり薄暗く怖かった。
トイレはとってつけたように洋式がひとつだけあったけど、紙の補充が二日目になってもなされず、戦々恐々で和式トイレに残っていた紙を回収した。
ゴハンはおいしいのだけど、なにしろ普段、朝ご飯はパン一枚程度、夜は酒のつまみ主流の我々にとって、あまりにも多く、ついには帰宅後、いつもの智恵下りになる。

二日目。
どうやら都内ではJRが完全に麻痺していたらしく、職場の人も通勤に3時間かかったーと叫んでいたけど、犬山は10時頃にはすっかりいいお天気に。
如庵・犬山城共通券を購入し、それで後のからくり館や資料館もロハで入れることになっていた。
が、急勾配のツルツル犬山城階段を上り下りするうちに、われらがズンドコ教信徒は、チケットをどこぞに置いてきたらしい。
ええ、いつものことですから、リュックひっくり返しても出てきません。
事情を説明したら、ロハのまま入場させてくれた、資料館のお姉さん、ありがとー。

02.jpg
如庵の庭の竹林にひそむ、珍種サカサパンダ。

03.jpg
お城に向う途中の民家の前で、すっ転がっていたタヌキたち。
こののち、ご近所の電気店とは思えぬ電気店で、剥製タヌキ2体を見かけ、タヌキ族は震え上がる。

04.jpg
五平餅に齧り付くパンダ。
いや、この旅行で一番美味しかったのって、実はこの五平餅かも。
米粒の食感を残しつつ、焼きたての香ばしさが満点なのさ。
加えて、碧空はますます澄み渡るし、周りは石畳と昔の町並みが連なって、犬山で一番のほっこりスポットです。

あー、僕は変な時に吃音になるのだけど。
脳と口がこんがらがるのだけど。
今回も名古屋近辺で食べたい!と切に願っていたひつまぶしにはありつけず。
もうひとつ心惹かれていたきしめん屋に入ったというのに。
きしめん単品370円では寂しいけど、さんざん民宿でご飯粒食べたので、定食はいやで。
そこで注文したのが、、、「鍋焼きうどん」だった。。。
素氏におかしいと散々言われました。
その上、僕の中で鍋焼きの定番であるところの、甘い牛肉が入ってないー。
カマボコと大量の油揚げと少々の鶏肉。。。そんな。。。
トホホとなりながら、ちゃっかりきしめん定食をとった素氏から二本きしめんを貰ったけどね。

05.jpg

宿泊した犬山遊園の目の前に民宿があった。
そして反対側には、ゲイバーがあった(笑)。
この犬の置物の化粧が、かなりドラッグクイーン的で笑えます。
「新しい出会い」「ゆうき」「ニューハーフでーす」の宣伝文句に着目。

で、この犬山遊園駅には昨年末まで短いモノレールが走っていたそうで。
ぶった切られた高い線路の末端部分が衝撃的な景色でした。

そして三日目。
ピーカンに輝く空の下、念願の明治村へ。
いやー、前日の休園で遠足延期になったのか、恐らく8校以上の小学生が、走る走る。
なぜに子供は、二秒後にはわーーーっと無闇やたらに駆け抜けるのでしょうか。
スタンプラリーと弁当と、乗り物しか興味がないようで。
思わず、黒死館でもおなじみの建築方式rib vaultの美しいパウロ聖堂で、子供達に二階に上がってみなよ、と声をかけてしまう。
大人になって明治村のことほとんど覚えてなくても。
あんな素敵な建物が、えんえんと周囲を埋め尽くす夢のような景色、
ステンドグラスを通して入ってくる色のこと、少しでも覚えていてくれたらと思う。

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特にこの帝国ホテルを左手に見て、右手の丘に川崎銀行本店の切り取られた一部が城郭のようにそびえ立つ五丁目の広場は、
ほんと、夢の空間としかいいようのない場所なのだ。

先に浪漫亭で、またも間違った注文をしてオムライスを逃したまま満腹になった絹山は、
帝国ホテルロビーでのお茶もできなかったのだけど。
この景色を目の当たりにすると、やはり桜井京介シリーズを思い出さずにはいられませんね。

ほんとは閉園までねばろうと思っていたけど。
二人とも三時には足が死んでいたので、
平日一便しかない名古屋・栄直行高速バスに乗ることになりました。
でもここは、ほんとパラダイスです。
東海地区に住んでいたら、一ヶ月に一回は来たい、TDLなんて大嫌いだけど、ここには住民登録して年間フリーで入場したい場所なのです。
ゴミ箱に隠れて、夜明けの誰もいない建物とか見られたら、さぞかし素敵だろうに。

そうそう、血糖値が下がると機嫌が悪くなる僕のために
素氏が犬山で買ってくれた、栗大福ですが。
夕方素氏のリュックから出したら、、、、、ぶちゅーーと煎餅のように平べったくなって
クリームも栗も餅も踊りまくっていたのも、まあご愛嬌でしょう。

で、最終日の古本行脚になってしまった話は、また後日。

帰還

帰ってきましたーー!

えー二日目の犬山散策、
三日目の小学生にまみれて明治村大満喫、
そして最終日、名古屋古書市までいったぜ古本三昧(鶴舞から大須観音まで10軒以上の驚異の古本パラダイス!)。。。

歩いた歩いた。
おそらく連日10㎞近い距離を歩き倒しました。
湿布貼ったり、ロキソニン軟膏ぬったりしたので、足の破壊はなんとか免れました。

めっちゃ愉しかったけど、めっちゃクタクタ。
赤福食べてご満悦のまま、本日はおやすみなさいです~。

待てば海路の日和ありやなしや

現在僕は、愛知県犬山市の民宿Yに投宿中。
えー外では風がびゅーびゅー泣いております。

ぷらっとこだまで名古屋に到着したのがお昼前。
ドリンク引換券で缶ビール二本と、昨日ダイエーで仕込んだ缶チューハイでほろ酔い気分の素氏とともに、まずは伏見方面へ突撃。
本来は最終日に行く予定だった名古屋市美術館を、前倒しで行った訳です。
今回の目的は、夏に栃木県で行われていた「日本の表現主義」展が行けなかったので
こっちで観てしまおう!というわけだったのです。
えー、がらがらでした、当然ながら。
萬鉄五郎(僕は、今でも彼の名をマンテツ・ゴロウと呼んでいる)とか東郷青児とか、建築関係とかめっちゃよかったんですが。
先に図録は入手していたもので。
本来出品されるべき、見たいなーと思ってた絵がなくて、悶えたりしました。
秦テルヲが一枚しかなかったよーー(涙)。

その後次第に雨がきつくなり。
犬山の古本屋までちぇっくしたのですが、やはり今夜は早く宿にいくべということで、移動。
途中名鉄の番線表記が全然理解できず、悶え、小田急とどっちが難しいかと素氏と思案したりしながら、問題の民宿に到着。

ふふふ。
玄関に並んでいたスリッパの数、二足!
そう、宿泊は僕たちだけ(大笑)。
そしてこの宿は、上がったり下がったりの大迷路の上、かなりボロくて笑えます。

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部屋の壁が、置かれた家具が・・・。
いまや探そうと思っても探せないレトロ物品満載。
お風呂もトイレも、かなり怖い。
犬山には温泉があるみたいだけど、湯船のお湯が鉄錆ぽかったのは、蛇口に「飲料水ではありません」と書かれていたのは、決して温泉ではないはず。
で、二人だけでしーーーんと静まり返った座敷で晩御飯。

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僕の奥の床の間の右手にあるのが、カッチューーー。
こわーー。

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で、極め付けが、この歯ブラシだ!
馬の歯ブラシやねん。
ねっばねっばの歯磨き粉が最初からついてんねん。
先ほど使用した素氏いわく、「喉まで洗えます!」(泣笑)

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と、こんな民宿でなぜ日記をUPしているかというと。
名古屋のホテルでネット繋ごうかなと思って持ってきたノーパソが、この嵐の中もふわふわと飛ぶ、無線LANの電波をキャッチ。
運のいいことに、ロックのかかっていない無線LANだったのさ。
えへへ、ネット繋いで、デジカメデータ吸い上げて、YouTubeからDLしまくったアジカンの映像流しつつ、台風の行方を追うことができております。
大変笑かす、ラッキーな状態。

さらに、どうやら明日の昼にはなんとかなりそうなので。
明治村への道が土砂崩れでもしないかぎり、大幅な旅順変更なしで驀進できそうです。
明日も、色々起きそうで楽しみです。

あの日のオシャレさん

お久しぶりです。
トリプルワーカーならぬ百足のわらじちゃんこと絹山は、この一ヶ月バッタバッタしておりました。
肉体疲労は募るものの、珍しく精神は至って健康なので、問題なし。
そして三ヶ月前から叫びに叫んでもぎとった夏休みが明日から始まるのであります。

が、しかし。
悪魔はフフフと笑ってくれました。
僕たちの猛烈な愉しみに対して、大嵐がぶっかぶるのです。
嗚呼、明治村が、近代建築がーーー。
伊勢湾台風並みって、なんですか、それ?
大嵐は大嵐でも、高校生の頃、部活の閑散期にやりまくった、あのウソツキイス取りゲームみたく、ふかしてどこかに立ち去ってくれればいいものを。
とはいえ、僕たちは邁進するのだ。
閉園にでもならない限り、猛然と村を巡るのだーー。

さて、最近読んだ本、伊藤俊二の「裸体の森へ」も滅法面白かったのですが。
なんで今までちゃんと読んでいなかったのか!の狂喜の一冊がこれ。

お・それ・みを 怪奇探偵小説名作選(3) 水谷準集 (ちくま文庫)お・それ・みを 怪奇探偵小説名作選(3) 水谷準集 (ちくま文庫)
(2002/04)
水谷 準

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なんて、おしゃれさんなの、君は!
「お・それ・みを」「空で唄う男」「七つの閨」といった青い虚無、青い絶望を裏返しにファルス的に読み込んだ第一部も勿論素敵だけど。
イマイチと呼ばれた第二部だって、そりゃあ面白かった。
水谷準は、ハイカラさんなの、おフランス小説読んでるみたいなの。
ピカレスクとは異なる仄かな悪徳の匂いを、ロマンチスト全開で包み込む。
第一部でその爽快な空中遊泳を楽しみ、第二部は、確かに舞台自体は俗っぽいのだけど、その浪漫の羽根で頁を繰らせること必至です。
そう、下手な恋愛小説よりも数倍ドキドキします。

あとね、彼はきっと絵がとっても好きだったのだろうと思う。
戦前からこんな風に自然に比喩の一端として絵画のことを頻繁に引き合いに出し、また登場人物に迷妄する画家が多いのも気にならずにはいられようか。
僕はよく短編を読んでいると、もったいねーと叫ぶことが多いのだけど。
それは、こんなプロットが壮大なのをギュウギュウに詰め込んで、長編にしろ!という意味なのだけど。
水谷準の場合、もったいねーと一度も叫ばなかった。
また氷川瓏みたく、同じプロットの使い回ししやがってーとも、叫ばなかった。
どの話も時代を超えて新鮮で、短編に凝縮された濃度が濃すぎず薄すぎず、拍手喝采なの。

一体このオシャレさんを放置し、有能な編集者としての側面ばかり光を当ててきたっていうのは、如何なものかと。
そりゃ拗ねて、そっぽ向いちゃったのも自明の理でしょう。


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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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