2009-05

さらばパチパチ

星占いは最低だし、朝からやけどはするし。
(全面ステンレスのおたまを煮物と一緒に温めていて、思いっきり握った
それでなくても、ピンセットぶるぶるデーなのに・涙)
仕方がないので。
火傷に塗るメンタムが見付からず、一体いつだれに貰ったか不明な
別府温泉の血の池軟膏を塗りたくり、保冷剤を抱えて出勤。
バンドエイドから、赤黒いものがのぞいて、不気味。

そういえば、僕の両親の新婚旅行先は、別府でした。
もうもうと煙が巻き立つ地獄風景に、不機嫌に並んだ二人の写真が印象的。

オペが二件に培養開始が一件と。
お腹がP必至の本日、なんとか一年経っても職人芸が習得できない剥がしに成功し。
夕刻回収にいったならば。
13:40開始のはずが、17:30に始まるという異常事態が。。。
手塩にかけた細胞ちゃん、死んじゃうよー。
あー、と崩れて、じゃりん子ちえが見られない(毎晩animaxで観てる)と悶える。
ようやく19:00過ぎに解放されて、ぐったり。

**

うんと。
僕、リアルでもそうですが、ネットでも人付き合いが下手なので。
掲示板潰したり、コメント欄なくしたりしてきたのですけど。
最近、唯一残していた、拍手にスパムが頻出しまして。
アクセス解析と見比べても、実際の来訪者もいない時間に入ってるし。
無節操に泡記事にまで一日何回も拍手が入ってるしで、よくわからない。
まあ、こんなスパムプログラムの何が面白いのかも不明なので、拍手も消しました。
と、一応、ご報告。

ご用事のある方は、メールしていただければ、大丈夫です。

**

今日から「小遊星物語」の宇宙空間に突入。
わーー、これアニメ化したい。
というか、絵もロクに描けないけど、ここまで子細にゴムゴム宇宙人の姿や、星の成り立ちが書かれていたら、絵を描かずにいられようか。
ってことで、一端読了したら、お絵かき楽しんでみよう。
「爆裂商人」っていう、可愛い宇宙人頻出のゲームを思い出してしまった。

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グロテスクにもいくつかあって

昨晩、NHKの「あの人に会いたい」の中島らも編をたまたま観た。
NHKに残された映像で故人の名言を追うといった趣旨の、短いけどいい番組。

そこで、「その日の天使」という話が出ていた。
沢山の締め切りに追われて切羽詰まった夜半、どこからともなく、
「いしやき~~いも、おいも~♪」と聞こえてきたそうな。
最初は、こちとら忙しいのに、どこで呑気にそんな声を上げやがると思ったそうだが。
ふっと思い返すと、その瞬間、ぐつぐつに煮えきっていた頭が緊張から解かれていたという。
そんな風に、本人は気づいていないけど、
人は毎日、どこかしらで誰かとすれ違って、ささやかな出来事で救われている。
それを、「その日の天使」と呼んだのだという。

そうか。
そんな風に考えると、昨日のケーキ屋さんのおじさんも、プチ天使だったのかも。
延々と治らない眼の話を聞かされたけど、
(眼球の一点が感染?でやられて、視界の中心だけが真っ黒なんだって)
何度もその左目をぐりぐり動かしては、訴えていた。
「ほら、ここに来た時だけ、真っ黒なの。でもちょいとずらすと大丈夫なの。
ね、オネエサンのきれいな顔が、一瞬真っ暗になっちゃうんだ」

いや、別にオネエサンでも、きれいでもないけど。
するっとああいう冗談を交えて話かけてこられるとね。
そんなすごい研究やってるんだとか、いわれるとね。
悲しいことばっかり、やめたいやめたいと思ってる仕事でも、
ちょっとはいいのかなと、今頃になって気づく。

家の中には、ズンドコ教の堕天使ピカエル(お皿があたまに載ってるの)がいて、
いつも天使な羽根をおおらかに広げていてくれるけど。
らもさん風に考えると、プチ天使も、ちょいちょいいるのかもしれないなと
少し元気が出たのでした。

***

「薔薇のいれずみ」読了。
戯曲なので、一気にいけました。
でも、そうね、これ、僕にはかなり苦しかったです。

シシリー女が、ずっと旦那と愛し合っていると深く深く信じていた女が
急に旦那に死なれて、さらには、別に女がいたことを知らされる。
彼女セラフィーナは仕立て屋だったけど、夫の死と浮気を受け入れられず
どんどん周囲から浮き上がった存在になってゆく。
高校卒業を控えた娘が、水兵と付き合い始めたと知って家に閉じ込め、
卒業式の前日、娘は手首を切って、自殺を図ったかに装い、水兵と逃げ出そうとする。
娘もいなくなったと余計に崩れたセラフィーナは、
ふいに現れた、夫の幻影をかついだ若い男に惹かれてゆく。
ついには男との寝てしまったことを娘に知られ、娘は完全に家を出て行く。

といった粗筋なんですけど。
その、セラフィーナの崩壊があまりにもひどいので、
単純にいえば、「ひたむき」とか「素朴」などと解説されている域をはるかに跳び越していて。
スリップ一枚で路上で助けにきた娘の担任や、水兵に食って掛かるところとか。
自分の信じたものが覆されようとする瞬間だとか。
もう、、、キチガイなの。
グロテスクの極みなの。

ところで、絵画にしても、小説にしても、グロテスクに魅了される瞬間は、誰しもあるでしょ。
その瞬間が、本当の嘔吐に結びつくときと、
怖いもの見たさの覗き見風に好奇心を煽るときとの差異は何でしょうか。
もちろん、単純に好みだとか、生理とかいわれても仕方がないですけどね。
僕は、リアリティだと思うんです。
多く記憶や経験に裏付けられた何かが、全くの不快へと導く現実感だと思うのです。
「薔薇のいれずみ」の誇張された愁嘆場は、
現実世界で知りうる、あえて見たくもない陳腐で凡庸なグロテスクであり、
何よりこの悲劇は、僕の遠い昔の現実とあまりにも重なるので。
苦しかったのだと思われます。

あと、テネシー・ウイリアムズが目指した、「時のない世界」についてですが。
確かに彼がめざしたものを批評家が汲み取れなかったのも言いえて妙でありましょう。
セラフィーナが、夫の死後もその満たされた過去に狂的に執着しつづける姿とか、
近所の子供達の遊ぶ声が、クライマックスに近づくと、数字を数え始める声になるのも
娘の卒業祝いに買った時計を、どうしても渡すことができないまま、娘が出て行ってしまうのも
あまりにも寓意的、イコン的なんですわ。

こうした練りこまれすぎた象徴が、観客の視覚聴覚にスライスインした結果、
「時」という概念が頭にこびりついたとしても、「時がない」とはいえない構成になってしまったんですね。
むしろ、最後に。
夫がしていた刺青が、己の乳房に浮かんだ瞬間身ごもったと実感した奇跡が、新しい男によっても同じに引き起こされたと分かった瞬間と因縁の妙。
(これはもしかしたら、彼女の思い込みに過ぎないのかもしれないけど)
このようやく動き出した、彼女自身の活力の時計の生々しい息遣いだけを前面に押し出した方が、よほど、爆発力のある作品になったのではないかと思います。
「時が動く」その当たり前のことを表すには、もっともっと確実に「動かない瞬間」が必要なのです。

でもね。
テネシー・ウィリアムズのすごいところは。
普通、動かない=静的、動く=動的と描き分けるところを。
あえて、動かない=狂気と妄執のいわば、激動でもって描いてみせようという試みたことにあったんです。
うん、今度は、苦しくないグロテスクを求めて、↓で、彼の未読の小説でも読んでみよう。
だって、「呪い」は最高に美しいグロテスクの塊でしたから。

現代アメリカ短編選集〈第1〉 (1970年)現代アメリカ短編選集〈第1〉 (1970年)
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黄色い水銀

あんまりしんどいので午後から出勤したら、ろくな話はなく。

怖い秘書さんから怒っている「ような」メールが来ていて、
びくびく震えながら返信、ついでに社長たる講師の先生にCCしたら。
これがろくでもない展開をみせ。。。死亡。
むしろ、怖い秘書さんは、実は怖くないのかもしれないけど。
入所当初あんまりひどい仕打ちを受けたトラウマから疑心暗鬼になっていたことが
余計にあんまりな仕打ちを生み出したという。
瓢箪から。。。毒薬っていうか。
ウツ期にこういうことが起こると、トイレとかで独り言喋ってる自分に気づいて、かなり真っ青です。
なんかもう、、期限のある規範が真っ当な派遣に戻りたくなった。

帰りにふっと近くのケーキ屋に寄ったら。
病院関係者と見抜かれ、眼科だといったら、10分以上自分の疾患について語られた。
ええい、どこまでわしをめり込ませる気じゃ。
でも、40円まけてくれて、ありがとう。

テネシー・ウイリアムズの、「薔薇のいれずみ」に着手。
ご本人の前説に、マッカラーズの詩が引用されていて、おお!と思ったが、
非常に難解な自己解説で、煙に巻かれている気分になる。
時間のとらえ方がどうとかこうとか。
そういえば、昨晩の奇術探偵では、時計コレクターを奥さんにもつダンナが、
時間恐怖症で、せっかくの蒐集品から時計の針が全部抜かれていたのが、象徴的であった。

この新潮文庫の表紙は、なつかしい。
黄色の一面に、水銀が弾けた感じのやつ。
今でも、中学校の毎日通った図書室のどこにこの黄色い水銀があったか、憶えているよ。
狭い図書室だったから、文庫が中心で、すべての文庫の配列を憶えているんだ。
あの十数枚重ねてテープ留めした図書カードが、手元に残っていないのが、とっても寂しいです。

発条仕掛けの彼

体調悪し。
ウツがひどいと、朝が腐ってる。

プラモは組み立てが終盤に入る。
デカールは水に浮かべたら、生きていること判明。よかったー。
院生にプラモの話をしたら、最初に中性洗剤にひたして、油膜を取るべしと教わる。
あと、色塗りは枠が付いてたほうがやりやすいって、僕も思うけど、バリ取ってヤスリかけたらそこが汚くなるわなあ。

「一粒の麦」読了。
青年期以降第一部の後半、処女出版からピエール・ルイスやマラルメと交遊してるあたりが。
つまんなくて、つまんなくて。
鼻持ちならないを通り越した感もあり。

で、二部に突入すると、ここがいわゆるジッドの同性愛放蕩編なんですわ。
もちろん、幼少期から仮装パーティーでロシアの美少年にメロメロになったりしていた彼ですが
アフリカ旅行にいって、砂漠でアラビア少年と燃え上がると一気に爆発。
ワイルドの手引きがあって、さらに加速。
後にワイルドを窮地に追いこむ、恋人ボージイ(アルフレッド・ダグラス)のことが大嫌いなのに、彼がアラビア少年とホテルで遊蕩三昧の日々を送るのに、なぜかしら付き合ってしまうとか。
でも、最終的には、ずっと「愛している」とのたまう従妹へのプロポーズがようやく受けいられたところで、完結と。

まあ第二部はそれなりに面白かったけど。
この人は、同性愛への不徳とかはちっとも感じていないはず。
少年の肢体の美しさや快楽と、家族への愛情は同じ地平線に浮かぶ太陽
(ここまでいえないかな、星くらいかな)
であって、本人は、疑問の余地など抱くことはない。
それにジッドは同性愛者というよりも、こういった社会的に勝手に名付けられたカテゴリからはみ出した、独自の好みに合うもののみを選び取る、むしろバイセクシャルな人である。
プロテスタントの底流はあっても、彼には揺るぎない自己信仰めいたものがある。

読もうかなと思って本棚から引き出した「ジイドの日記」の帯に
【感傷を許さぬ苛烈なる今世紀にヒューマニズムの精神を守り続けたジイド】
なんて書かれてますが。
本当に、彼をヒューマニストなんて呼んでいいんだろうか。

ジッドは、人間ぎらいじゃないけどね。
あらゆる事象・人物を分析せずにはいられない性格だと思うんだ。
視点が冷淡とか温厚とか、温度の問題じゃなく、もっと理科的な能力。
特に、自己分析は自己も全きフェーズとして見ているようで、その時々の感情を異様なまでに掘り下げてみている。
曖昧模糊とした意識の流れを、たとえ遠い過去のことであっても、厳然と振り分けてしまう。
子供時代の記憶の美しさもまた、彼自身が眠っていたという大きな膜をかぶせることによって、分析し、再展開されたものだったのだと気づいた。
そうヒューマニストじゃなく、機械たるヒューマノイドなんだよ。

ダグラスは、アリと一緒に彼を連れて、毎日馬車で、ホテルの平屋根(テラス)から、砂漠の茶褐色の街頭の上に置かれた色の濃いエメラルドのように見える、あのシュトマとか、ドゥロとか、シディ・オクパとか、そう言った余り遠くないオアシスまで、出かけて言った。ダグラスはしきりに私を連れて行こうと頑張ったが無駄だった。私は、彼がこの二人の侍童の間で屹度感じているに違いない倦怠に対して、――この倦怠はまた、私には快楽の償いのように思われるのだった――いささかの憐憫も感じていなかった。君は好きでやってるんだ! と私は思っていた。とかく余りにも易々と承諾しがちなことに対して、私は、技巧的な峻厳さで自分を武装しようとしていたのだ。で、私もまた同じく償いとして、一層仕事に熱中して行った。こうして何ものかを買い戻すのだという独りよがりの気持ちを味わいながら。歳月のおかげで素直な人間になった今から考えてみると、当時もはや心のなかで認めなくなっていた過去の倫理が、こんなにまだ隠然たる残んの力をもっていたかに私は驚く。然し、当時の私の心性方面の反射作用は、まだこれに依拠していたのだった。いかなる発条が、あんなにまで、まるで私の意志などお構いなしに、私の機械を跳ねあがらせたものかと、今それを調べてみると、そこに見いだされるものは、とりわけ無愛想と意地悪い意志であると私はここに告白しなければならない。
p418-9

脳を解放する

サライネスの「水玉生活」が文庫になったとアマゾンからメールが来た。
早速、何かと合体させて発注をかけねば。
って、発行は昨冬かい。
もっと、早う知らせてくれたまえ。
ま、「大阪豆ごはん」みたく、おもろいといいのう。

水玉生活―サラ・イイネス作品集 (講談社漫画文庫 さ 8-7)水玉生活―サラ・イイネス作品集 (講談社漫画文庫 さ 8-7)
(2008/12/12)
サラ・イイネス

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さてと。
脳が完全鬱血にみまわれ、青紫になっているので。
解放じゃ~~とばかりに、休出の帰りに秋葉原ドバシに直行。
プラモコーナーは、やはり女子はめっちゃ少ないけれど、パラダイスでした。

五年振りのプラモ制作です。
とりあえずは、スバル360で愉しんでいます。
ええ、今晩は本当に(笑)素氏がミスコンでお泊まりなので、夜更かし三昧。
8時間ぶっとおしで、全てのパーツの切り取り、紙ヤスリかけ終了、色塗り80%完了。

Image2441.jpg

ダイソーに平筆とニッパー買いに行ったら、ダイヤモンドポイントのルーターまであった。
100円じゃなかったけど、わーーと叫んで、購入。
あと、タミヤ御用達じゃないけど、アクリル塗料も結構あったので、
不足なシルバーや、クリアオレンジは、明日買いにいこう。
ピンセットは、昔の職場で、電顕用に使っていたnon magneticな高級品さ。

本日の敗因。
・ウインカーが、宙に舞い、どこかに行った。
・筆洗がいつの間にか倒れていて、デカールがビショ濡れに。
(糊面が死んでいたら、大泣きだ)
・やはりマスキングテープ使うべきかも。
・やはりアクリル系は、大きな面のベタには不向きじゃ。

ということで、元気が復活してきたと思いたい、丑三つ時であります。

灯火

頑張っても頑張ってもと、報われないことをなげくくらいなら、
一生懸命になること自体を放棄すればいいという。

そうだ、報いなどというものは、他者への過剰なる期待であって
他者を拒むという前提にあるのならば、最も求めてはならないものである。

僕は、XX歳になってしまう前に、消えてしまおうとずっと考えていた。
その年齢をあっけなく飛び越したとき、待っていたものは。
当時XX歳の自分が想像できないからという理由が一義にあったけれど、
その落とし穴は、外見よりもむしろ内面にあったのだと、歩き歩き考える。

GW明けから往復一時間歩くことにして、交通費をわずかでも浮かせようとしている。
歩きながら読書できるほど、通りに精通していないし、
また歩くこと自体を愉しんで、脇道にそれたり、新しい発見に目を奪われることもできず
ただただ考えて、頭が軋んでもはや考えきれなくなったころ、目的地に到着する。

外見は、なぜか誓いを立てた頃とほとんど変わっていない。
けれど、僕は、いつのまにか、「生活」という呪いに締め上げられる。
ぎりぎりなのは、ずっと同じなのだ。
心持ちだけが、僕を追い立てる。
生活必需品の価格帯は一円刻みで頭を啄み、
一杯の休憩も「贅沢」と耳の裏側の囁きで爪弾きにされ、家路へ急がせる。
他人が買うものにまで呪いで判別しようとする。
倹約を楽しさへと転化する術が、いつの間にかすり替わる。

そう、僕が何十年も前に予感していた黒い穴は。
あの逃げ出した家の中で絞り出された、黒い穴の奥からぬっと出された
「愛情」とか呼ばされた手にそっくりなのだ。
僕は自己犠牲などしていない。
そう信じたい。
誰もそんなことなど、望んではいないと知っている。
けれど遠い昔、自己犠牲によって自己を身ぐるみはぎ取り、
その報いに応えないと狂乱の果て叫び続けられた、あの声がこだまする。

僕はまだ楽しみを知っている。
そう信じたい。
たとえそれが、もはや受動的なこと、もはや読書しか残っていなかったとしても。
何世紀も何マイルも遠い世界の住人であっても
僕が他者の存在を唯一実感できるのは、
本の中だけであったとしても、まだ――――
呼吸くらい、していても、許してもらえないでしょうか。


****

「一粒の麦」が中盤を越える。
ジッドは、15歳になった。
選民である、詩人であると、鼻持ちならないことばかり言うようになってしまった。
素氏が辛気くさいと呼んだ、抑圧されるがゆえに清らかな、精神世界は遠のいていく。

****

読書は楽しければ、それでいいじゃないかと言われる。
どうして、孤独や鬱屈でのたうち回る、
ひねくれた深い深い淵にまで追いつめられないといけないのかと、言われる。
僕が結果的には、その共感こそが楽しみになっていたとしても、
他者にまで同意を求めてはいけないという。

そうなんだろう。
たとえ万人が、カポーティやマッカラーズを読んでも震えないように、
僕もまた、差し出された荷風に、何も感じないのだから。
自分とまるきり同じ人などいないと、よくよく空想であったとしても、認知していたはずなのに。

****

「法王庁の抜け穴」で僕が一番好きなところは。
ラフカディオの手帖の中に書き込まれた、秘密の暗号だ。

将棋でプロトスに勝ったために==一突
自分がイタリア語を話すというけぶりを見せたために==三突
プロトスよりもさきに返事をしたために==一突
言い負かしてしまったために==一突
フェ-ビーの死を知って泣いたために==一突



阿呆のジュリアス(ラフカディオは彼の父親である伯爵の隠し子、つまり義弟)は、この記述をみて、【突】を貨幣単位だと思いこむ。
純粋気取りの盲目精神の無感覚の作家なのだ。

病床の父親からラフカディオの様子を本人には知られないように教えて欲しいと頼まれながら、のこのことジュリアスは義弟の家におしかけて、不在と知るや、家宅侵入して手帖をのぞいたのだった。
戻ったカディオは、初対面でも平然と対応してのけ、彼が帰ってすぐに、手帖に新しく「一突」の文字を加えて、事に及ぶ。

彼は、かくしから、刃が非常に細長くてほとんど短い錐のようになっている小刀を取り出して、その刃をマッチであぶった。そして、ズボンのかくし越しに、一突きさっと腿に突き立てた。彼は渋面を禁ずることができなかった。だが、それでは足りなかった。さきの文句の次ぎに、腰かけないままで、テーブルにのしかかって、彼はまた書きこんだ。

そして、やつめに、それと感づいたふうを見せたために==二突

今度は、彼は躊躇した。ズボンをはずして、わきにたらした。彼は今付けたばかりの小さな傷が血をにじませている腿をながめた。彼は、まわりぐるりと、種痘の跡のように残っている古い傷あとを調べた。彼はまた刃をあぶった。それから、手早く、二度、またもや肉に突き立てた。
「もとは、これほど用心しなかったものだがな」彼はひとりでそう言いながら、薄荷入アルコールのびんを取りに行って、傷の上に数滴たらした。
p68-69



思春期/青年期の自傷行為は、他傷行為と同意であると、僕は思っている。
またこの危うい時期の彼等には、独自の戒律を、自己や他者に激しく求めることが多分にあるといえるだろう。
戒律は大人達からみれば、利己的で、無法なものではあるが、彼等は律することによってのみ、綱を渡り、ニセモノに見える世界の酸素の粒をつかむことができるのだ。

アンジェイフスキーの「天国の門」で淫らに行進をつづけた子供達や、三島の「午後の曳航」で動物を解体し、ついには「彼」に手をかける少年達は、徒党を組んでいたが、彼等を牽引したのもまた、独自の戒律であった。
また、「蝿の王」ではふたつの異なる戒律がぶつかり合いながら、原始の狂気へと少年達を駆り立てた。

引用した部分だけでは、人物紹介が不十分だから判りづらいだろうけど。
ラフカディオが罰していたのは、罪科を唱えたのは、世界へそりをあわせてしまった罰である。
大人たちの社会通例への迎合を罰とした。
また、のちにカディオ自身が呪縛から解き放つことになる、寄宿学校での神的存在プロトスを穢すことを、罪としていた。

だが、ラフカデイオは、いつまでも同じ戒律の中に安穏としていたわけではない。
この「恰好のよさ」に酔いしれているばかりではない。
まもなく手帖は暖炉の灰と化し、彼は母親の恋人達、自分を可愛がってくれた数多の「叔父」たちから学んだ洗練をまずは外見から纏って、進んでゆく。
そして、新たな戒律をもって、一人の男を列車から突き落とすのである。
しかしながら、以前に書いたように、ジッド自身の洗練は一貫することなく、カディオに手痛い恥をかかせることになるのだった。

魔除けは意外と近くにあるものさ

豚インフル拡大で昨日から、テレビを賑わす高校。
あれ、僕の母校なんですねー。
ちなみに、あの正面玄関は、在校生は通れないという、謎の御法度がありました。
外にもいっぱい、普通では考えられない御法度があったけど、
まあ県立なのに、軍隊みたいな学校で、みんなその雰囲気に酔いしれていたとも。
不謹慎だが、、、卒業生も一週間お休みにしてほしい。。とかなんとか。

ついでに、教授がGWのアメリカ学会は断念したのに、
いつのまにか、印度に旅立っていて、どうやらインフル関連で入国できなくなるらしい。
嗚呼。
僕の精魂込めて育てている細胞君にも、思春期がありまして(笑)。
青春ピチピチで使って貰わないと困るんだけどーー。
オペ延期の気配濃厚で、真っ青です。

えー、そんな黒雲をふきとばすべく。
日曜から頑張った、辞典アーカーブ、時計室「い02」をUPしました!

今回の目玉は。
逍遙7号で明らかになった、詩文の謎解きが二つ載っています。
それから、インゲルハイム呪術の謎が、半分くらい解き明かされました。

黒死館で魔法本のひとつとして採り上げられている、
ウェルナー大僧正の「インゲルハイム呪術《マジック》」のことですな。

Ingelheimはドイツの地名でありますので、その辺でつまづくと謎は解けません。
実は、ヴュルツブルクで司教を務めた、Anselm Franz of Ingelheimという伯爵がいます。
この司教、どうやら錬金術師でもあったようで、在位わずか三年目にして謎の死をとげていると。
そして、死体の上に置かれていたのが、こんな魔除けだったのです。

i02-21.jpg

むふー、怪しいでしょう。
この六芒星、ダビデの星とも、ソロモンの封印とも呼ばれる奴。
星の周りの謎の文字。
ますます怪しい。
で、これが魔除け=呪術として存在したということが確認できたのです。

僕は、当初google book(英語版)で見つけて、おお!と叫んだのですが。
素氏にその書影を見せると、、、英語版だけでなく、日本語翻訳版も我が家に存在していたという。
おっと、大陸書房もたまには頑張ったみたいな声が横から聞こえました。
「悪魔の書」エミール・グリョ・ド・ジブリ 日夏響訳 大陸書房(1975)って本です。

ちなみに、この本の作者ジブリ君は、ユイスマンスと間接的に交流があったそうで。
神秘思想に取り憑かれたジブリ君、「彼方」の妖気にメロメロだったらしいです。
おもろいなあ。

あと、今回これを調べていて、もの凄い紋章サイトを発見しました。
いや、奥が深すぎて、西洋史大の苦手の僕には、全く太刀打ちなりませんが、
お好きな方には堪らないサイトかと。

眼鏡文人再版分 通販開始

忙しくてできなかった、通販の準備ができましたー。
って、再版なので、あんまり気にしないでください。
眼鏡文人改訂新版で、懸案のエクセル表
(ノリハゼクマ三人はどんな人?って、10の事件の本文から洗い出した)
が縦書きで見やすくなったのと、支倉君の名前が肝だった証拠図を載せました。
あとは誤字脱字の修正。。。まあそれだけです。

虫太郎にこれから挑戦しようかなと考えている人にオススメと言ってみる。
実は笑えるんだ!と思って作ったので、あくまで眉間に皺をよせないよーに!

黒死館徘徊録通販頁と、黒死館古代時計室infoから取り扱い中です。



GW中に届いた素氏のダイナブックペラペラ君。
B5版ノートとしては最高に軽くて素敵。
これで二万なんて!と思ってたら、OSにちょいとトラップがあった。
恐るべし、中国経由。
でもまあ、色々ひねくり回して、現在超快適に動いています。
僕は、ネットで徘徊するより、こうやってパソの中身をごそごそやったり、プログラムいじくってるのが好きです。
今夜は素氏がMYSCONでお泊まりなので、休出から戻ったら、久々に辞典更新に向けて遊ぼうっと。

わははははは!
ズンドコ教の堕天使が舞い降りた!
詳しくは、明日の素氏の日記を楽しみにとっておこう。
僕、職場からの帰り道、笑い死にしそうでした。

まさに。

トラのふんどし ヒグマのパッチ
ムカデの歯ブラシ ぶらさげて
茶臼山で ドンコつり
エテコがまねして あかっぱじ
(セッセッセーのヨイヨイヨイ)

だわ。
(チエちゃんならぬ、サエちゃん←僕の本名も、ヨイヨイヨイ)

子供の音楽

日曜日、蒲田で行われた文フリ、結構面白かったです。
ジャンルは違うけど、オンリーはかなり場数を踏んでいるのですが、
今回の会場は、すごくよかった。
勿論、大手さんがいない=長蛇の列が生じないという目論見があるからか、
雨避けを含んだ控え室的なものはなかったのですが、
天井が高くて、トイレや喫煙所も近くて、いい感じ。
列ができないせいか、お客さんの出動時間も非常にまったりしていて、
開始から終了まで、ずっとほぼ同様の混み具合。
カタログや入場料無料という配慮も、すごいなと思いました。

あと、面白かったのが。
大別すると、創作系・文藝評論系・その他の評論系の三種になると思われますが。
買い物に来る人たちの、瞳が三種で違うんだわ。
特にその他の評論系の人たちのやや眼光鋭い感じ。
僕たちは、その他に挟まれたかっこうだったのですが、すっとすっ飛ばされていくのが、
各人が放つオーラで分かるといった雰囲気。
逆に売っている側の人は、若い人が多くて、ある種の昔ながらの文系な男性が多く。
ついつい、帰ってから、お隣さんとが中学時代の図書委員長にそっくりオーラだったとか
急激にタイムスリップしておりました。
普段逢えない感じの匂いがかげて、ちょっと懐かしいなとも思えました。

買い物はさしてしなかったのですが。
僕的に大当たりだったのは、日本ジュール・ヴェルヌ研究会さんの会誌でしょうか。
素氏にみせたらすごいというので、創刊号を探しにいったのですが、既に完売とのこと。
僕はヴェルヌのいい読者とはいえませんが、ものすごくグレードの高い本です。
特に、かつてマントルまで地底探検をしようと実際に考えた、科学者の方の寄稿があったり。
アニメや映画化へのフォローがあったり。
視点の広がりも、真面目一辺倒に終始する一角の同人誌とは、まったく違ったモノになっていました。

仕事の方は。
相変わらず、一ヶ月前のノートを数行しか埋められない体たらく。
でも早出や休出は毎週あっても、残業だけはしないぜ!をモットーになんとか渡っているところです。

先日の、「法王庁の抜け穴」に続いて、ジッド週間ということで。
「一粒の麦若し死なずば」を借りて読み始めました。
いやー、茶紙最高、旧字旧かな最高ってわけでもないですが。
昭和15年発行の、この新潮文庫は、このスタイルで読んで一層滋味が深まるといったところ。
加えて、小泉さんという人の可愛い、ペン先をもじった蔵書印がついていて、
ピンクの色鉛筆で線引きが所々にあるのですが、これがまあ、なんと共鳴する箇所で引かれていることか。

Image2431.jpg

ジッドはちょうど僕の100年前に生まれたひとです。
なので、ちょうど1909年に、同じ年で存在していたのだと、まずは第一頁から思いを馳せることが出来ます。

ジッドの子供時代は、大層幸福だったといえるでしょう。
羨望を免れぬことができないほど、
両親からの愛情の注がれ方がたまらなく贅沢であって、
特に父親の導き方は、特別な観があります。

また、その羽化する前の、ジッド自身が「眠っていた」「遅鈍であった」と自身を振り返るように、
十代の始めまで、彼はさまざまな美しいものに、美しい人々に、
祈りが織りなす澄んだ宗教心に日々目を瞠りながら、
この自伝が書かれた時点でも、それらの事象を、まるで現前するかのごとく覚えていることができるのです。
羽根がひろがる以前から、ずっと中空を漂っているよう。
同時に、羽化以前の己を振り返って、ジッドは、周りがみえないために惹き起こしてしまう
今となっては些細な過ちを、特に大切な人を傷つけたと今も申し訳ないと告解しているのです。

果たしてこの眠りの状態は、自意識が目覚める以前と単純に呼んでいいものか。
僕自身は、自意識のめざめの瞬間を覚えていますが、
それ以前の記憶、特に小学校へあがる以前の記憶はないに等しいのです。
まあ、僕のことなどどうでもいいので。

機械いじりを愛し、植物採集や科学実験を愛した彼の言葉は、
まるで音楽のように響いていきます。
ほんと、読み進めるのがもったいなくなってきます。

黎明のほの暗さのなかで見る、幻影にも似た箇所。
どこを引用すれば、この美しさが伝わるでしょうか。

私の祖父の時代の人々は彼等の祖父達を苦しめた迫害の想い出を、なおまざまざと憶えていた。それまでではなくても、少なくとも、反抗の伝統とでもいうべきものを持っていた。彼等を折り曲げようとしたものに対する、内面的な頑強な力がまだ残っていた。彼等の各自は、基督が、自分や迫害されつつある小さな羊の群に向って、――《汝らは地の塩なり、塩もしその効力を失はば何を以てか之に塩すべき》と仰せられるのをはっきりと耳に聴いていたのであった。
ユゼスのちいさな教会に於ける新教徒の礼拝は、私の子供時代にはまだ、慥かに、よそから見ても実に気持ちのいいものであった。そうだ、私は、神に親しい呼びかけで話していたこの時代の人達の最後の代表者達が、フェルトの大きな帽子を被って、式に列するのを見たのだった。彼等はその帽子を式の間ずっと被っていて、牧師が神のみ名を呼んだ時だけもたげ、また、《われらが父よ…》を唱える時だけ脱ぐのであった。これらのユグノオ教徒が、こうして帽子を被っているのは、彼等の信仰による神への奉仕が、若し見付かりでもすると死刑にあった時代に、叢原の秘やか物蔭で、炎熱灼くが如き野天の下で行われた礼拝の憶い出のためであることを知らぬ他国の人は、恐らくこれを、神に対する不遜な態度として眉をひそめたかも分らない。
やがて、こうした老人達は、一人一人と死んで行った。彼等の死んだあとにも、なおしばらくは彼等の未亡人達が生き残っていた。彼女達は、日曜日に、教会へいくために、また、そこでお互いに顔を合わすために出掛ける外は、決して外出しなかった。そこには、私の祖母と、祖母の友達のマダム・アボオジとマダム・ヴァンサンと、それからもう名前は忘れてしまったが、もう二人の老婦人がいた。礼拝がはじまる少し前に、主人の彼女達と殆ど同じ位に年取った女中達が、主人達の炬燵を持って来て、席と定められたベンチの前に置いた。すると、時間きちきちに未亡人達がやって来るのだった。その時は既に式がはじまっているのである。半ば盲目になった彼女達は、入り口をはいるまではお互いに一向気がつかないが、ベンチに坐るといきなりお互いが判るのだった。無事にまた顔をあわせたことの悦びにすっかり有頂天になって、喜びの言葉だの、答えだの、問いだのがごっちゃになって、実に奇妙な合唱がそこに醸しだされるのだが、お互いに皆金聾なので、相手の言うことは何も聞こえはしないのだった。そして、その入りまじった声は、しばらくの間は、当惑した牧師の声の上に完全に蔽いかぶさっていた。或る人達は腹が立って仕方がないのを、彼女達の夫の想い出によって、我慢していた。それほど厳格でない人達は、こうした場景を面白がって見ていた。子供達は大声で笑っていた。私は、少し恥ずかしくなって、祖母の傍には坐らしてくれないように頼んだものだった。こうした小喜劇は、日曜日毎に繰り返された。これほどにグロテスクな、またこれほど胸をしめつけるような場景もないものだった。

p49-50 新庄嘉章・根津憲三訳 
(新字新かなに変えて引用)


恰好のつかない輩

文学フリマのペーパーを素氏が下準備して、僕が手直しして、再度素氏が印刷寸前にまでもちこんだ、今朝。
素氏は、一太郎にいたくご執心で、僕はワードも嫌いだけど、別な意味で一太郎が苦手なんです。
なのでややこしい設定はやってもらうんです。

で、昼御飯食べて戻ってきて。
ミステリチャンネルでホームズ見ながら、折ろうと思ってたら。
嗚呼。
素氏のパソ開いたら、件のデータがない!
我が家では、スティックメモリでデータやりとりすることもあるけど、
面倒くさいので、メール添付にすること多し。
そして、最終稿は、メールに添付したものを直接開いて、そこに上書きしたらしい。
普通はメールからDLして保存してから、作業するのに。
おーのー。
そんなもの、どこに残っているっていうねん。
メモリ書き込みエラー出てたのも、さもありなん。

ということで、最初から直しに!
ホームズ、本日はマザランの宝石、マイクロフトが異常に頑張っちゃう回でした。
そう、なんとか裏表印刷が完了し、ホームズ10分遅れで見られましたとさ。
ついでに、じゃりん子ちえ(相変わらず、テツの無法ぶりが好き、花井の息子先生が眼鏡心をくすぐる)を見て。
訳のわからん、ポップまで作りました。
誰か可愛い虫太郎の顔に吸い寄せられてくれないものかしら。

あー、月曜早朝出勤じゃなかったら、明日は蒲田でオダ上げられるのに。
ということで、明日は終わったらおとなしく帰って、来週の激務に備えようと思います。
配置図をみるに、机の並びが結構不便な感じがするんだけど。
久々のオンリー気分で、愉しんでこようと思います。

で、この数日、僕の心をざわめかせていた、
ジッドの「法王庁の抜け穴」読了。
面白かったー、いや、石川淳訳は結構きつかったんですけど。
ついでに、これって、プロットの投げ捨てか!もったいないよの連続。
アラは散々に目立つけど、僕がこの手の奇妙な海外文学を読むのは
その空気を吸って、不埒さ、奇態さに麻薬のごとく酔いしれるためなのだから、しょうがない。

まだ感想を書いていないので、急かされまくっている「贋金つくり」同様、
ジッドの一番大事にする青(少)年っていうのがね、
ものすごく「虚無」を目指してるんですけど、
「虚無」に身を捧げ、「虚無」とたわむれんとするんですけど。。。
思い通りにいかないんだなあ。
それが、もの凄く恰好悪くて、悪すぎて照れ隠しするヒマも与えないで、おかしかったりする。
外にも、ギャグ満載、哲学すればするほど笑える一冊。
いいなあ、ほんと、カディオ。
ついでに、ラフカディオとプロトスの寮生時代の話が読みたいよ!
ジッド、続編書いてほしい(無理だってば)。

ちなみに、この岩波版。
表紙に載っている、粗筋がめちゃくちゃ酷いです。
嘘八百です。
それっぽい内容が、最終章に至ってようやくチラ見えしますが、やっぱり大嘘です。
なので、岩波版で読む人は、先入観なしに、この連携プレー溢れる姻戚関係、
ジッドの同性愛趣味(いや、贋金つくりほどじゃないよ、全然)を楽しんで貰うといいなと、考えてます。
発行年は昭和初期ですが、再版が数年前にでてますよー。

法王庁の抜け穴 (岩波文庫 赤 558-3)法王庁の抜け穴 (岩波文庫 赤 558-3)
(1928/10)
アンドレ・ジイド

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瞬間風速嵐並み

GW明け、月間予定表がびちびちに詰まっている。
一日中培養室に巣篭もりして細胞たちと踊り狂う。
今月末から二週間、三人の台湾人御一行がいらっしゃるそうで、
ずーーとお相手しないといけないそうで。
今日は同じ作業をしながら英語で説明する脳内シュミレーション。
プロフィールレジュメをもらって、三人とも女性だと知るが、だから何?
KOと提携してるので、三田方面へ研修にもいかねばと知る、無理、時間なし。
前職場で白金方面に出撃していたのと同様、レベルの高い無菌室に入る必要があるかもって。。
むしろ僕に交代要員ください。
もう嗤うしかないぜ。

豚インフルの影響でアメリカ・メキシコツアーが全キャンセルになった小山田氏が
すぐ近くの現代美術館で急遽ライブを行うと今朝のメールで知るが、
既にSOLD OUT!!
っていうか、6時開演って無理でしょ。

晩御飯の後、シネフィルイマジカで、ヴィスコンティの「夏の嵐」をみる。
スチール写真や映画本でたくさん眺めていても、初ヴィスコンティ。

最初の一時間半、べたべたなメロドラマが続く。
べたべただけどアリダ・ヴァリが恋におちる理由がいまいち分からない。
侯爵夫人の火遊び・敵対するオーストリア軍の兵士だからこその背徳感。
とかなんとか思わせないように、、、ものすごく真剣に恋に走るわけですね。
そもそも一回は諦めて疎開した先に、フランツ・マーラー兵士が犬を蹴飛ばし現れたのは
男側のアプローチが異常に強かったわけで、
たとえ、従兄弟(イタリア義勇軍の長)から預けられた義援金を、
フランツが医者にたのんで悠々戦線離脱させる手助けに渡してしまうってのも、
愛ゆえみたいな、女は弱いけど、さほど悪くはないじゃないと思わせる流れ。
しかし、この金というアイテムが
従兄弟が取り戻しに来て大騒ぎなんていう風には一切つかわれず。
単純にフランツの放蕩に使われていたとするのは、捻りがないけど、仕方がないのかも。

「義勇軍が目指す、新しい世界なんか、俺はちっとも待っていないのさ」

いや、貴族様への復讐と、素氏は呼んだけどね。
僕的には、この話、フランツの墜落敢行だと思うわけです。
侯爵夫人とのアヴァンチュールも、金をせしめてからの放蕩も、確実に夫人に発見されて裏切りが発覚することも、銃殺されることも。
暗く不安一辺倒の戦時下で、未来をゆめみるよりも、いっそ派手に破滅してやれと。
本人の自覚以前に、意識下でその最後の穴目指していこうとする手が引っ張ってる。

だから、確かにアリダ・ヴァリの恋に狂う熱演はすごいだけど。
男を描きたいヴィスコンティは、最後の汚く散っていくフランツという花の、その醜悪さを最大限に発揮したかったんだろうなとか、思ったわけです。
なんか、先の台詞が頭に残ったわけですが、
こういう時事的発言嫌いですが、今の特に若い人の風潮に合致してるような気がしてならないです。

と、夏の嵐がごーーっと吹き荒れた後。
(映画の中で、夏の匂いがどうとかフランツが言うのは、ちょいと取ってつけた感があったけど)
僕のおなかも上下で嵐が吹き荒れました。
素氏が張り切って作ってくれた、あんかけチャーハン、食べ過ぎた模様。
まだおなかがへなってますが、明日は文学フリマです。
黒死館附属幻稚園としては、コミケ以外で初参加。
というわけで、何冊本を持っていったらいいか(一冊も売れなかったらどうしよう)
暗中模索の極みですが、ペーパーでもつくってみたいと思います。

黒焦げPizza@一箱古本市

五月四日。
ちょい曇りの中、ダンボール二箱&カート付ボストンバックをよろよろと引きずりつつ、根津方面へ驀進。
素敵な佇まいの根津教会の前で、長机を貸していただいてLIBRE TONSURE設営開始。

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開始10分前になると、獲物に飛び掛ろうとするかのような方達が、うちのポップスタンドに書かれた本について、あれこれ喋ってくださる。
ええ、旧名・絹太さんは、さんざんに同人仲間からディスプレーがなっていないとお叱りを受けてきたので、今回はスタンド二個に増やして、逍遥や眼鏡文人のぶら下げまでやってみました。
絣の赤布も、何度即売会で敷かれたか分かりませぬ。
タモリの坂道入門やブローティガンの愛のゆくえに、予約が入る。
で、使用前(釜入れ前のピザ生地は白かった)の写真。
実は、まだ足元にハードカバーが埋もれているのです。

Image1471.jpg

11時の開始早々。
目玉商品がお嫁(お婿)入りしていきました。
何気に放出した矢川澄子をはじめとする、澁澤周辺本、感慨深いので、どうぞ可愛がってやってください。
清原なつのの「家族八景」がお嫁にいったので、帰宅後「花岡ちゃん」を再読して、涙しました。
ちなみに早川の文庫版は、その後の花岡ちゃん的漫画がついているので、RMCともども手放せません。

素氏は販売の面白さにすっかりのめりこみの様子で、ほとんどスペースから離れずじまい。
そのちょいと離れた隙に、本日初の個人誌が売れて、ちょいと残念風味だったようですが、その後、僕の眼鏡文人ともども、同人誌も勢いがついて、ますます絶好調に楽しんでおりました。
僕は、やや熱射病気味で、何度かふらふらとお買い物に。
とはいえ、たまりにたまった疲労から、往来堂さん付近までしか進むことが出来ず、今回もスタンプラリーをあきらめねばなりませんでした。
やはり、帽子が必須、体力増強必須です。

素氏は、ろりっこ心をいっぱいにするような、素敵なエピソードがあったあようで。
デカビタCで喉を潤しつつ聴く、うれしそうな悪魔の囁きに、僕もニマニマが止まりませんでした。
個人的には、可愛い彼女?を連れた方が、マッカラーズやマードックを指差して色々こちらもやさしい悪魔のささやきをされているのが、なんとも微笑ましく。
内心とはいわず、結構口出し激しく、マッカラーズ最高!と叫んでいました。
でも、海外文学って難しいですね、やっぱり。
古書市の目録にあんまり載らないのもわかりますね。

で、閉店30分前に。
素氏の昔のお友達が現れてくださいました。
いや、お話がディープでおかしかった。
焼け焦げたトンスラ=Pizzaを頭に載せた素氏は一日の日差しですっかり真っ赤になっていました。
帰宅早々、お風呂でのびて。
近くの焼鳥道場で祝杯をあげようとしたんですが、GWでお休みで、大吉というもうパラダイスな居酒屋のカウンターでおっさん気取りで、ビールをぐびっと焼けた喉にもおつかれさーーんと流し込んだのでした。

今朝起きたら、素氏がしのばず便りを見ろ!と叫んでおりまして。
開いて、びっくり。
受賞式に参加できなかったのは、残念でしたが、ほんと、たくさんの方に手に取っていただいたり、本の話を伺ったり出来て嬉しかったです。
根津教会の中も、神戸時代に通っていた教会のことを思い出させてもらう、涼やかな瞬間でした。
教会のみなさん、スタッフのみなさん、本当にありがとうございました。

谷中の看板猫も、相変わらず気持ちよさげな、お昼寝タイム。
翌二日間は雨で、さがった大気圧とともに、僕もお昼寝三昧させていただきました。

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★記録用 お嫁お婿にいった本たち★

☆文庫☆
文豪ディケンズと倒錯の館 新潮
丘の上の出会い アンヌ・フィリップ 福武
ナージャとミエーレ 山口椿 祥伝
美食倶楽部殺人事件 嵯峨島昭 光文
真珠郎 横溝正史 角川
白洲正子自伝 白洲正子 新潮
銀のくじゃく 安房直子 筑摩
風の琴 辻邦生 文春
虫のゐどころ 奥本大三郎 新潮
日本のたくみ 白洲正子 新潮  以上50
ボルジア家 マリオン・ジョンソン 中公
図書館が面白い 紀田順一郎 筑摩
自伝的女流文壇史 吉屋信子 中公
メディチ家の短剣 キャメロン・ウエスト 早川
タイタス・グローン マーヴィン・ピーク 創元推理
死の舞踏 マーヴィン・ピーク 創元推理
いさましいちびのトースター トーマス・ディッシュ 早川
牧神の午後 北杜夫 中公
戦後日本共産党私記 安東仁兵衛 文春
フランチェスコの暗号 上下 イアン・コールドウエゥル 新潮 以上100
地図のたのしみ 堀淳一 河出
人獣怪婚 七北数人編 筑摩
人肉嗜食 七北数人編 筑摩 以上150
スロー・ラーナー トマス・ピンチョン 筑摩 200
明治不可思議堂 横田順彌 筑摩 200
びっくり箱殺人事件 横溝正史 200
わが夢の女 ボンテンペルリ 筑摩 200
奇想小説集 山田風太郎 講談社 200
真景累ヶ淵 三遊亭円朝 岩波 200
幻島ロマンス ゾナ・ゲイル 改造社 200
愛のゆくえ リチャード・ブローティガン 早川 200
シャーロック・ホームズの災難 上下 エラリー・クイーン編 早川 300

☆新書☆
はじめての構造主義 橋爪大三郎 講談社現代 50
ミシェル・フーコー 内田隆三 講談社現代 50
文化人類学への招待 山口昌男 岩波 50
精神鑑定とは何か 福島章 講談社 50
狂い咲く薔薇を君に 竹本健治 光文 50
翻訳夜話 村上春樹・柴田元幸 文春 100
僕の恋、僕の傘 柴田元幸編 角川 100
不思議な建築 下村純一 講談社現代 100
ピープス氏の秘められた日記 臼田昭 100
聖堂騎士団 篠田雄次郎 中公 200

☆漫画☆
家族八景 上下 清原なつの(原作筒井康隆) 角川書店 200

☆単行本その他☆
現代美術コテンパン トム・ウルフ 晶文社 100
松本清張のケルト紀行 松本清張 NHK出版 200
図の劇場 荒俣宏 朝日新聞社 200
多田智満子詩集 多田智満子 思潮社 200
神保町の蟲 池谷伊佐夫 東京書籍 200
ガロアの生涯 インフェルト 日本評論社 200
MODERATO64の変身譚について 松田行正 牛若丸 200
わたしを離さないで カズオ・イシグロ 早川書房 250
タモリのTOKYO坂道美学入門 タモリ 講談社 300
ラスト・オブ・イングランド デレク・ジャーマン フィルムアート社 300
最後の物たちの国で ポール・オースター 白水社 300
「アフリカの女王」とわたし キャサリン・ヘップバーン 文藝春秋 300
幻想の風景 トニー・デュヴェール 白水社 300
下町交狂曲 益田喜頓 毎日新聞社 300
日本し美し 前川佐美雄 青木書店 300カバー欠
臨床医学の誕生 ミッシェル・フーコー みすず書房 300
栄光の残像 廃墟写真集 倉橋健一 澪標 300
おにいちゃん―回想の澁澤龍彦 矢川澄子 筑摩書房 400
綺譚庭園―澁澤龍彦のいる風景 出口裕弘 河出書房新社 400
澁澤さん家で午後五時にお茶を 種村季弘 河出書房新社 400
さあ、気ちがいになりなさい 異色作家短編集7 ブラウン 早川書房 400
チャタトン偽書 ピーター・アクロイド 文藝春秋 →古本わらしべ長者へ
名探偵WHO'S WHO 日影丈吉 朝日新聞社 500
花森安治の編集室 唐澤平吉 晶文社 500
世紀末芸術 高階秀爾 紀伊国屋書店 500
十五歳の桃源郷 多田智満子 人文書院 500
ウィーン 都市の詩学 池内紀 美術出版社 500箱なし
風俗史からみたベル・エポックの時代 青木英夫 源流社 500
モンパルナスの大冒険1910-1930 川崎市市民ミュージアム図録 500
中世を旅する人々 阿部謹也 平凡社 600
サーカス誕生 阿久根巌 ありな書房 700
現代建築・アウシュヴィッツ以降 飯島洋一 青土社 800
フュスリ画集(仏語版)大判 flammarion 1000

☆雑誌☆
トーキングヘッズ 特集アヴァンギャルド1920 ニジンスキー・笠井叡他 アトリエサード 100
國文学 埴谷雄高幻想王国の司祭 學燈社 150
ユリイカ 特集デカダンス ユイスマンス他 青土社 200
ミステリマガジン1972.8 特集幻想と怪奇 ジョイス・ポーター他 早川書房 300
ペーパームーン 少女漫画千夜一夜 萩尾望都他 300
牧神1 特集ゴシックロマンス 平井呈一・生田耕作他 牧神社 400
牧神12 特集人間の棲家 由良君美・池内紀他 牧神社 400

そういえば、赤江瀑が惨敗でしたね。
うーん、そろそろ品揃えを考えねばいけない感じです。
では、明日からもお仕事頑張ります。
お疲れ様でした!

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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