2007-05

古本をめぐるエトセトラ

三週間ほど前の土曜の夕方。
西田○行と伊○蘭がナレーションをつける「人生の楽園」という番組を眺めていたら、金沢の古本カフェが取り上げられていた。
この番組、定年後の第二の人生を如何にエンジョイしているかを主眼に置いているのだけど。
カフェのオーナーは長らくの転勤生活を経て早期退職し、まずはネットで自分の本を売り出したという。
でも売れない。
そこで、自宅を改装して古本屋兼カフェを開いたという話だった。
間口に比べて奥行きが長い構造は、天井から床までびっしりの棚をうまく配してあって、さらに穴がそこここに設けられていて、飴色の光源に照らされた木の空間もめっぽう素敵だった。
奥方がお茶とケーキを出し、ご主人がカレーを出す。
その二人が初めて神保町に繰り出し、古書会館の市に入札するというシーンが映されていた。
鏡花の全集など計十数本に入札して、約半数を落としていた。
西田○行は、宝くじに当たったみたいに喜んでみせていたけど、本当は違うと思う。
そんなにせり落とせるということは、入札価格が高いのに決まっているのだ。
店の特色を出したくて金沢にまつわる作家と鏡花全集を選んだみたいだったけど、現在作家の郷土にまつわる書誌って、一風変わったものじゃないと「特色」なんて言えなんじゃないかなとか。
もともと自分の愛読書を店に並べていて、愛着ゆえの値付(「話の特集」に結構な値段がついていたものねえ)とか。
私みたいな一買い物客はいうべきじゃないんだろうけど。
お店の雰囲気はとってもいいのだけど、いいだけに心配してしまったりした。
ちなみに件のお店はこちらです。

深夜番組で草刈○雄がナビを務める「エコラボ もったいない博士の異常な愛情」というのがあって、こちらはブックカバーにまつわるお話。
もったいないお化けが常に背中に乗っているのか、素氏もチラシは元より包装紙や紙袋を捨てないので(本の修復の時の見返しになるとかなんとかで)、こっそり捨てていたりするのだが。
書店でもらうブックカバーは捨てられるのはもったいない。だからどうすればいいのか、という提案番組。
絹子が最近最も利用している生協書店では、一切袋もカバーもつけてはくれない、付けたいやつだけやれとばかりにレジの向こうに積まれている。
確かにこれが一番無駄がないと思うんですよ。
さて番組内でちょっと目を開かされたことといえば、ブックカバーとは、本を守るためにあるのと同時に、中の本を他人に知られたくない。。。なるほどねえ。
草刈さんは、涼宮ハルヒを隠していらっしゃった(笑)。

捨てられないブックカバーとは何か…。
その一つの解答として、ブックカバー自体が本になってしまうという代物で。
外して畳んで、一番傷みやすい背の縁の辺りをミシン目に沿って切ると、豆本になると。
地図よし、写真集よし、長編の分割よし。
確かに工業デザイン的に優れていたんです、可愛かったんです。
でもなあ、全十数枚揃いにならないと読了できないカバーって、、さらには下手すりゃこれ自体に怪しい値が付くんじゃないかと。
まだ見かけていないけど、しばらくすると最近大流行の、R25とかmetro minといった読み応えたっぷりのロハ誌が値段がついて動き回る気がしてならない。

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というわけでもないんですけど、先月末創刊された都営線配布の「中央公論Adagio」をね、素氏にねだられて創刊日の朝、出勤前から最寄り駅で三冊掴んでいったわけですよ。
折れ曲がらないように、職場でビニール梱包までして。(実はエスカレーターで二度ばらまいた)
なのに昨晩もまだ住吉駅にはわんさと積まれていた。
乱歩と浅草っていっても、みんな興味ないのかなー。
まあちょっと広告臭がきつくて、読み物的には今一歩感は拭えない代物なんですけど、次回以降もいい特集が出ることを祈ってます。

さて最後は連休後半に岐阜→郡上八幡に向かったお話。
事前調査でどうやら郡上には古書店がないことは掴んでいたので、電話帳を繰る(ネットが盛んになる前は、もっぱら新しい町へ行くと電話帳でさぐったものである。電話ボックスの中で汗を拭きながらメモをとる、時間がなければ破る…スミマセン、この手段は十代の中古レコードサクサクツアーからの引継ぎ、とはいえ、昨今は電話ボックスが見つからないんだよねえ)こともなく、ただただ、こんな町並みの中にこそ、古本カフェが似合いそうと別のワクワクに浸った次第。
初日のわれらがご用達の東横インでは、もしも(ここ傍点)最終日の岐阜古書ツアーが祝日の呪いなどでぽしゃったら、、、という妄想もとい妄念に近い危惧を吹き飛ばすために、ロビーのパソコンで名古屋駅周辺の古書店まで調べて印刷していたのであった。
結果的には、岐阜駅周辺で三軒回ってへとへとに。

南方の古書センター。
センターというより、不思議な二階家になった店舗で、埃多量系。
入ってすぐに、ほるぷの復刻シリーズがダンボールにぎっしり、オール300円に飛び上がる。
復刻にも良し悪しがあるのだろうけど、基本的にイラストがいっぱいの児童書関係は掴んでしまいがち。
小ぶりでもハードカバーには違いないので、一軒目では我慢すべきではなかろうかと、白秋とかプロレタリア児童文学などは、ぐっと堪える。
それでも山村暮鳥「ちるちるみちる」や、初山滋挿画の児童書、明治期の男色文献「当世少年気質」の和綴じ本は外せない。
さらに漫画の群れの中に、三冊200円の雑誌の山が。
みづえだ、みづえだ。
今はあんな風に軟弱になってしまったけど、80年代のみづえはよかったと、建築関係を掴む。
問題は、あとの二冊。
絹子が「ぱふ」のさべあのま(A5版の時代)か、みづえの芋銭特集にするか唸っている脇で、レジにて親子が争い始める。
「三冊で200円だから、もう二冊選んでください。そうじゃなかったら、一冊200円」
レジのおばさんの言い方が気に食わなかったというよりも、おそらく後二冊選ぶことが面倒で、家に本が増えることが面倒なのだろう。
「さ、それ置いてもう帰りますよ」
母親の容赦ない言葉に泣き始める子供、さらに父親もぐいぐい腕を引く。涙はさらにぼろぼろとこぼれだした。
なんだかなあ。
選んだのがどんな本なのか漫画なのかまでは分からなかったけど、父母そろってあれはないんじゃないだろうか。
奥にはいい絵本がいっぱいあったのに、なんで選んであげないのかな。

そんな憤りを胸に、狭い文庫棚の通路を抜けて、二階へ。
素氏は既に、埃にまみれて本を積み上げている。
ここは以前は奥に棚が繋がっていたというが、今は壁面だけしか棚がなくて、まるで女主人がドレスの裳裾をしゃなりしゃなりと揺らしながら階下に集まった若いツバメたちを見下ろすような奇妙な造りになっているが、中身はオール300円である。
素氏いわくここは、岐阜の古書店の元締めらしいのだが、なんとなくわざとセドってくださいと投げ出しているような、見る人が見たら嗚呼というような戦前、戦後直後の本が微妙な雰囲気で並んでいる。
絹子さんはむむむと悩みつつ、アナトール・フランスを一冊掴んだのであった。

名鉄岐阜まで戻ればよかったのに、「同じ道は通りたくない」という散歩狂の素氏にそそのかされて大回りした後、市役所近くの商店街の一角に二軒の古書店を発見。
まずは、我楽○書房。
うーん普通プラスちょっといい感じ。
普通というのは、見やすくて値段もそれなりにつけてある(我々にとってはつけすぎている)。
見やすいお店は安心する、けど掘り出し物には欠けることがある。
それにしても、たとえば荻窪の線路沿いにある某所みたいに、カウンターの前に積み上げられた本がぐちゃぐちゃにしわしわになっていたり、まるで棚に近づくなといわんばかりに足元に堆く在庫か商品なのか分からない状態で積まれている(せめて背中を見せてくれれば狭い店内でも「見せる」につながるのに)のをよく見かけるけど、あれは売る気があるんだろうかと思わずにはいられないものです。
で、こちらのお店では今江祥智の絵本評論と、コクトーの映画論を廉価で掴んだのであったが。。。。最後に泣きを見ることになる。
もう一軒は角を曲がって二階にある岡本○店。
まあここは、フツーです。フツーにいい本が、フツーの値段だったので、何も買わずに階段を下りてみたのでした。

さて、脚力が許せばぶっくおふにも参じようと思っていたのですが、さすがに連日の強行でヨロメキ。
岐阜駅に戻ってミスドで茶をしばく。
さらに一時間後、周到に用意されたカートに土産や本を積めて我らは名古屋駅の待合室でだらけていたのだが。
その時ふと絹子はミスドでこんな本買ったよーの素氏とのみせびらかし会で、二冊の本を出していなかったことに思い至ったのである。
え、まさか?
必死にリュックを探る、カートを探る。
おお、そういえば岐阜駅のコインロッカーで詰め直していたときに、あのガラクタで買った紙袋を見なかったじゃないか。
ミスドだ、ミスドしかない。

普段携帯は持っていてもほとんど使わない絹子さん。
悪い汗を流しつつ、iモードで電話番号を検索。
めちゃくちゃ使い方が分からん。でもバイト情報で、なんとか電話がつながった。
ありました、ありましたよ。
親切な店員さんに着払いで送ってもらうことに。
もうその送料入れたらフツーの値段を超えるかもとか、考えない。
店先で諦めて元に戻すのも、一つの縁が離れていく瞬間だけど、こんなアホなことで二冊と縁切りになるのは悲しい。
とりあえず、ミスドのお姉さんが苦笑いを浮かべつつも無事に発送してくれることを祈っている次第である。
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一箱古本市 楽しかったんだよとっても

日曜は、待ちに待った「第四回 一箱古本市」でした。
どう考えても重すぎるカート二つを抱えて階段を下りるのは無理なので、メトロは諦めて、タクシーとバスで根津駅にアクセス。
赤札堂からちょっと曲がって、あそこのパン屋さんが美味しいんだよーと叫ぶと、素氏が早速興味をしめし、中で休みたいと言うも集合時間と荷物の大きさに閉口して、とりあえずはサンドイッチだけ買ってふれあい館まで。
金曜日の昼休みにちょこっと下見にきていたのですけど、出店場所のGallaryJinさん前はひさしも長く、一日の厳しい日差しのなかも、ゆっくりお店を広げさせていただける空間になっておりました。

小机とかポップ台とか、初参加じゃないんじゃない?的に周辺準備はお褒めにあずかったらしいのですけど(ビッグサイトをはじめとする即売会行脚のたまものです)、一番大事な本の選定がいまいちだったのだろうなー。
やっぱり来てくださる方も、「それなりの」から「かなりの」目利きの方が多いと見えて、手放すのに少し迷いがあった本から消えていく。
でもって、荷物になることを敬遠されてか、こぶりな本から消えていく。
翻訳単行本が動かない。
周囲の方も仰ってましたけど、チョイワルならぬチョイ黒な本、ビジュアル重視な本がいいようで。
お隣の方の接客上手に驚き、絹子もない愛想をふるって値引きとかやってみました。

「モーリス・ベジャール自伝」に反応してくださったお二人のお姉さまたち。
当然というか、「パトリック・デュポン」にも反応をくださって、「この頃の彼は一番美しかった」と爆笑を頂く。
調子に乗って「書物の王国 美少年」を勧めるも「美少年」には興味なしとのこと。
なぜか「博士と狂人」と「天人唐草」(女性は読むべしと片方のお姉さまもお勧めくださった)をお買い上げいただきました。
こんな感じで色々とお話させてもらって嬉しかったです。
お隣の箱にあった「日本の伝統色」文庫版は私もすごく大事にしているので、大いに加勢させて貰ったり。
ジャンルはそれぞれ違うけど、普段話相手の少ない「本好き」たちにはもう一気にお友達な感じで売り子の時間はあっという間に流れていきました。

さてと、一時間交代の合間、正味三時間でスタンプラリーに参加。
勿論すべての箱を見てやる!という鼻息も荒く。
絹子さん非常に方向音痴で、はらっぱと工房を探すの一苦労。
でもそういう秘境(すみません)方面は、素敵な本が色々と発見できたのでありました。
三回目の突撃時には、足の裏に水ぶくれができている感触、加えて「すたんぷー、といれー、すたんぷー、といれー」の交互呪文。
体はへとへとだったけど、初めて歩いた谷中周辺の込み入った路地、商店街の雰囲気、雑踏がきんと静まりかえる焼け落ちた廃屋、ショウウインドウに眠る猫などなど、もっとゆっくりお散歩したいざんす!な一日でした。

着物姿で一日私たちの面倒をみてくださった担当の方とか、大家さんとか、ほんと沢山の方に沢山のお世話になりました。
終わってからも何度も素氏と「楽しかったねえ」と言えたので、こんな充実した時間は滅多にないことだなと感激でありました。
次回は本の選出に少し戦略を加えて参加できたらなと思ってます。

stamp-card.jpg

ofuda.jpg


画像はスタンプラリーの成果とその景品。
中の中までこった景品ですよ。善本善本。
「はこからはこへのおたからさんぽ」

ちなみにしのばず君のトートバッグは結果的に二枚も入手。
でもあの手のかばんって、小さく畳めるので古書店巡りには必携ですね。


★買った本たち
FOR LADIES BY LADYIES 近代ナリコ編 ちくま文庫
新釈稲妻草紙 寺山修司 ちくま文庫
失われた足跡 カルペンティエル 集英社文庫
第三阿房列車 内田百間 新潮文庫
スロー・ラーナー トマス・ピンチョン ちくま文庫
閉ざされた城の中で語る英吉利人 ピエール・モリオン 中公文庫
スポーツ、わが小王国 埴谷雄高編 新潮社
パイデイア 特集=シュルレアリスムと革命 竹内書店


★売れた本たち
前日島(上下) ウンベルト・エーコ
ドライブ旅行 吉野晃生
東京風土図1 産経新聞社会部編
妖怪草紙 荒俣宏vs小松和彦
孤島の鬼 江戸川乱歩
遠臣たちの翼 赤江瀑
古地図に魅せられた男 マイルズ・ハーベイ
業界の濃い人 いしかわじゅん
砂絵呪縛後日怪談 野坂昭如
富士日記(下) 武田百合子
天人唐草 山岸凉子
地下鉄のザジ レーモン・クノー
あきらめ 木乃伊の口紅他四編 田村俊子
フロム・タイム・トゥ・タイム ジャック・フィニイ
三重露出 都筑道夫
悪意銀行 都筑道夫
河鍋暁斎戯画集 岩波文庫
ブックライフ自由自在 荒俣宏
幽霊塔 江戸川乱歩
月と手袋 江戸川乱歩
桃源郷の機械学 武田雅哉
百頭女 エルンスト
少年傑作選5忍者ハットリくん 光文社
At Your Own Risk デレク・ジャーマン
停電の夜に ジュンパ・ラヒリ
とんでもない月曜日 ジョーン・エイキン
自然と象徴 ゲーテ自然科学論集
最後の晩餐の作り方 ジョン・ランチェスター
魔術師 西岸良平
オペラ知ったかぶり 相澤啓三
大理石 マンディアルグ渋澤・高橋訳
天球の調べ E・レッドファーン
映画とたべもの 渡辺祥子
第四次元の小説 ファディマン編ハインライン他
ブラックユーモア傑作漫画集 水野良太郎編
特別料理 S・エリン
すべては消えゆく マンディアルグ中条訳
モーリス・ベジャール自伝 構想社
寺山修司ワンダーランド 沖積社アルカディア別冊
猫の王 小島瓔禮
チェシャ猫はどこへ行ったか 桑原茂夫
小鬼の居留地 C.D.シマック
スラップスティック・ブルース 高平哲朗

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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