2017-06

らちつてとんび

残念ながら僕は消石灰を持っていないので、
爪先に小さなチョークをつけて立ち上がる。
右足を軸にして、じりじりかくかくと円を描く。
この場合、足の長さは一向に関与しない。
トゥシューズもない軸足は、差を求めて右往左往する。
描かれた図形があまりにも狭いので、僕は嘆息した。

ならばちょうどいいじゃないか。
右膝はここのところすっかり音をあげているのだから、自由にしてやろう。
膝もろともマザーグースよろしく、肢を半分に叩き切る。
さあ、もう一度軸足になってみろ。
じりじりかくかくどどどどどど。

なんと醜い、円などとは呼べないその図形。
でも重心がさがって、径が伸びたお祝いに、面積だけは四倍に広がった。
無残な不定形、名もなき形こそ僕にふさわしい。

これをもって、僕の「埒」とする。
どこか惑わしき自らの良心とやらに拉致されても、これが僕の「埒」だから。
一歩も中には入れまい。
もったりとした失血のまどろみの中で、僕は安堵していればいい。
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新刊買おうぜ:新潮パンダ入手計画。

絹子が消沈しているので、三人でまた遊んでみた。
僕達の遊びは、簡潔で、姦しい。

この間は、古い本たちを次々に本棚から引っ張り出しては
貼られた検印のデザインや苗字について、賭けを行ったのだ。
例えば、乱歩は「平井」なのか「乱歩」なのか、はたまた…。
少なくとも不思議図書館の中では、混在していた。

蔵書票については、とっくの昔から工芸品美術品として認知されているけど、検印票は今は99%省略されているから、眼を向ける人はいないんじゃないかな。
でも、各社デザインに凝っていたり、筆者自身も粋な判を使っているから、覗いてみると楽しいよ。
そして昭和初期までの本を引っ張り出しては、なんという印になっているか賭けをしてみてほしい。
ちなみに、虫ちゃんは三文判「小栗」だった。
つまんなーいと叫んでも、これは多分、出版社に預けっぱなしにしたハンコなんだろう。

で、今日の遊び。
最近新刊を買うことが年数冊から、月数冊に復活を遂げた絹子が、新潮文庫の差込チラシみて叫んだんだ。
例のYONDA?パンダのデザインが一新されると。
よーしそれならば、家中の新潮文庫を引っ張り出して、表紙袖についたマークを集めようと。
取り合えず、色は何色でもいいということがわかったから、必死で△マークを探したのさ。

そこで判明したこと。
概ね平成10年以降発行のものは、付いている。
平成5-10年に関しては当たり外れあり。
ただし、復刻版は付いていない。

よーし、これだけ文庫があるんだからマグカップ(20点)は余裕だよね。
もしかしたら、マグカップもう一個いけるんじゃないと。
それで、二階と一階と行ったりきたり。
何度も、くそうの悪態が宙を舞う。
そもそも、この図書館、古書店から搬入されたものが多すぎるのです。
さらに、近所の行きつけの店が、あらゆる文庫が、50円均一か、定価の半額なので、できるだけ古い版を探すようになっていた。
三人とも旧字旧かな大好きだから、余計に古い方へと固まっていく。
さらに問題は、司書が新潮文庫にあんまり興味をもっていないこと。

結果発表:計28冊。
ということで、現行デザインの締め切りは2008年(めっちゃ先やん・笑)なので、とりあえず、マグカップ一個とピンバッチ(5点)を申し込もうかなーと協議完了。

頑張ってくれた作家たち:内田百間・久世光彦・Tカポーティ・三島由紀夫・北村薫・WJパーマー
沢山あるのに古すぎて力及ばずな作家たち:倉橋由美子・福永武彦・安部公房・谷崎潤一郎
平成八年なのについていないのは、やっぱりなのかな作家:佐藤亜紀

ということで、これから50円均一の新潮があったら、裏表紙を確認しようね。

僕のたからもの

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そんな題名で、五木寛之が書いていたけど、あの中で気に入ったものといえば、ボルボのエンジンルームの整然とした美学だった。

さて、絹子が煮詰まってます。
ぐつぐつと。
とっても機嫌が悪くて一緒に遊んでもらえないので、絹子の部屋から何個か物をくすねてきた。

↑は最近、家にやってきた怪しいものたち。
「はくしょん大魔王」のこれは…ライター。
壷の耳というか、取っ手のところをおろすと、あら不思議、壷の先から火が出ます。
不気味な微笑を浮かべるもの。これは恐らく東南アジア系のコースター。パンダさんに買ってもらったらしいよ。
夏場はアイス珈琲にアイスココア、今日はアイスジャスミン茶も登場したので、グラスの汗がパソコンの周辺を水浸しにしないために使ってるらしい。
だから、顔がびしょびしょに赤らんで、一層ぶきみ。


exlibrisartjp-img462x600-115178591202_1.jpg 大きくなります。


絹子は、ここ数年銅版画が大好きみたい。
特に、「マルセル・デュシャン展」で横浜に行ったときに、収蔵展に並んでいた利渉重雄さんに恋したのだ。
だから「宇」という何枚も彼の作品が収められた一組が完売してしまったと気づいた時には、そりゃあ当り散らしていたもの。
絹子は、こつこつと、自分の感性に嵌る作品を集める手立てとして、蔵書票に目をつけた。
お正月には、アルフォンス井上の一枚を手に入れて、自慢げに見せてくれたんだからね。

それから、神保町にはR古書房っていう豆本やコケシ関連本を集めている、小さなお店があって、そこもお気に入りみたい。
エクスリブリスは、所有者の名前が入っているから、同じ大きさの一葉を手に入れるよりずっと廉価なんだって。
R古書房には勿論、多賀新なんていう有名どころの蔵書票もあるけど、無名の作品も一枚300円とかで見つけることが出来るらしい。
もし、銅版画にドキドキしてしまうなら、海外作家のものをさくさくとLPを中古レコード屋で探すみたいに繰っていけば、綺麗なものに出会える。

今回は、某所から手に入れた利渉さんの逸品を、まだ原稿のメドも立っていないうちから、自分へのご褒美に入手したんだ。
困った人だね。
絹子は、譲ってくれた、某蔵書票関連ライターさんのつけてくれた、正しい保存方法なる小冊子が大いに気に入ったらしく。僕にお菓子の缶は捨てるな!と大いに叫ぶ始末。

じゃあ僕は、こっそり絹子の名義で、本を予約しておこう。
これなら、本当に原稿完成のご褒美になるだろうからね。
きっと新しいたからものにもなるだろう。
この増補版、買わなきゃそんそん。

F.S-ゾンネンシュターン 〔骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書〕 F.S-ゾンネンシュターン 〔骰子の7の目 シュルレアリスムと画家叢書〕
種村 季弘 (2006/09/29)
河出書房新社
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ヘリオガバルスの呪い

ライチ☆光クラブ ライチ☆光クラブ
古屋 兎丸、東京グランギニョル「ライチ光クラブ」 他 (2006/06)
太田出版
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はじめまして。散々満ちるです。
絹子は月末まで黄泉くだりをはじめたので、しばらくは隣家に住む僕が、気だるい雰囲気を壊していきたいと思ってる。

えー絹子に誘われて、昨年末はすっかり法水漬けになっていたけど、今回はあのズンドコ探偵・ノリピーの話ではない。
もうひとりの法水について。(多分、寒くなる頃には、二人して虫ちゃんの熱帯探検へと足を踏み入れているはず)
とはいえ、絹子も僕も、彼のことは名前くらいしか知らなかったし、どちらかといえば、その周辺事項から攻めつつ、ここに「今頃」辿り着いてしまった、遠く煙も見えなくなった機関車の黒い影を追う破目に陥りそうな予感。

それで、いつもいつもこのブログに提出する感想文の本は、「no image」攻撃に遭ってしょうがないと、彼女は嘆くのだけど、「それなら超新刊本とか、メジャーな本の感想でもかけばいいじゃないの」と返すと、「そんな本はめったに読まない。古本屋しかもういかないもん」とむくれて帰ってしまう。
僕は基本的には家から一歩も出ないので、意地悪な絹子しか友達がいないことになってるけど、たまに夜中の三時頃散歩に出ていたりする。
昨日、ちょっと夜中の本屋を覗いたら、うわーっとなって、午前四時、しとしと雨の中、絹子の部屋の窓に石をぶつけていたというわけ。

あの二人して追いかけてやまない丸尾末広が所属していた、東京グランギニョル。
そして、学ランと眼帯と同性愛と血みどろといえば、もう一人われらが追いかけてやまない、長田ノオトの世界。
これはその劇団・東京グランギニョル(飴屋法水主宰)の伝説の第三公演「ライチ☆光クラブ」の奇跡的な漫画化。

小学生三人が廃墟の秘密基地として始めた光クラブは、いつしか新たな独裁者の出現によって、早熟の秘密結社と化していた。
規律を乱すものへの過酷な制裁。そしてシンボルであり下僕である「ライチ」という名の人工体(これを嶋田久作が怪演したらしい)、ライチが捕まえてきた美少女・カノン。
二人の恋が清らかなればなるほど、光クラブの狂気や暴力が余計に際立って、美しすぎる。

絹子とふたり、頭をつき合わせて、頁を捲りながら、どきどきしていた。何も口に出さなくても、僕たちはちゃんと知っている。
暴力の美しさを。
だから、前に薦められて読んだ、ガルシア・マルケスの「族長の秋」を返すときに、僕は呟いたんだもの。
僕らにとって、暴力と腐乱はなんでこんなに甘く芳しいのだろうってね。

この公演が行われたとき、絹子は13歳だったらしい。
そして驚くなかれ、主宰の飴屋氏は17歳で劇団を起こしている。
だから、この話の中で独裁者を独占するために影の独裁者となった、凄まじく美しい少年・ジャイボ(飴屋氏の役どころ・まさにヘリオガバルスは彼にこそふさわしい)が、声変わりと発髯を嘆くとき、あらかじめ壊されるべき世界は、真っ赤な真っ赤な血しぶきで覆ってこそ美しいのだと思った。
石井隆の「魔樂」(ペヨトル工房)の凄まじさにも通じているな。

そういえば、絹子がひとつだけやってみたいコスプレがあって。
昔は真剣に注文にいこうかとか考えていたらしいけど・笑。
それが学ラン制帽だったようだ。
僕がちゃんと「学校」というものに通っていれば、貸してあげられたのにね。

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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