2017-09

りある新発見

昨晩の投稿について。

実はよくよく素氏に確認したら、この件は既に判明していたことが、判明(呪)。
が、別に二つ発見がありました!

まず「ミニヨン」を潮出版社の『ゲーテ全集』 山口四郎訳の当該箇所。

君知るやかの嶺 雲の桟道《かけはし》
霧深き道には騾馬《らば》の歩みおのずから遅く
洞窟《いわや》には龍の古き族《うから》棲み


ルビは少し違うのですが、黒死館本文とそっくり!
何これ! 前投稿の訳文と見比べてもらうと、同じドイツ語を見て、和訳がここまで似るのおかしくない?
虫太郎と山口四郎氏が同じ戦前訳を参照しているのではないのか?

山口四郎は1919年生まれ、黒死館初出時、15歳です。
まさかこちらが黒死館を見て……いやいや、それは穿ちすぎ。
現在戦前訳を多々捜索中。

**

それよりも!
新発見!

先のミニヨンに続く、「黒死館」本文

そして、しだいに廊下の彼方へ、薄れ消えてゆく唱《うた》声があった。

狩猟《かり》の一隊《ひとむれ》が野営を始めるとき
雲は下り、霧は谷を埋めて
夜と夕闇と一ときに至る

 それは、擬《まご》うかたないセレナ夫人の声であった。


この原典が見つかりました。
ゲーテ詩 「イレムナウ川」 の以下の節
原文全体はこちら
Ilmenau (am 3. September 1783)


Melodisch rauscht die hohe Tanne wieder,
Melodisch eilt der Wasserfall hernieder;
Die Wolke sinkt, der Nebel drückt ins Tal,
Und es ist Nacht und Dämmrung auf einmal.


和訳の一例

背の高い樅の樹の風にそよぐ爽やかな響き、
滝をなしてたぎり落ちる水の爽やかな響き。
雲が沈み霧が谷をおおうと、
夜と夕闇が手をたずさえてやってくる。

『ゲーテ全集 1』 潮出版社 新装2版 2011 , 244pp 松本道介訳

虫太郎お得意の改竄です。
狩猟とか関係なーーい!

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個人的大発見

わー、今翻訳している本の註に、これはゲーテの詩からの引用とか「ファウスト」からの引用とかいうのがやたらあり。
図書館にゲーテ全集を依頼して本日受け取り。

探していたものが見つかったのは、それはそれとして。
なんと!
黒死館の以下部分で、註がつけらずにいた原詩が判明しました!
きゃー、おめでとう僕たち!!

「なるほど、狩猟ですか……。だがレヴェズさん、貴方はこういうミニヨンを御存じでしょうか。――かの山と雲の棧道《かけじ》、騾馬《らば》は霧の中に道を求め、窟《いわあな》には年経し竜の族《たぐい》棲む……」と法水が意地悪げな片笑《かたえみ》を泛《う》かべたとき、入口の扉《ドア》に、夜風かとも思われる微かすかな衣摺《きぬずれ》がさざめいた。そして、しだいに廊下の彼方へ、薄れ消えてゆく唱《うた》声があった。

このミニヨン。
ずっと、「谷を越え川を越え」で始まる「ミニョンに寄せて」という詩だと思ってました。
が、本日人文書院のゲーテ全集1をなめるように見ていて、発見。
『ウィルヘルムマイスター』の第34章に登場する、「ミニョンの歌」と判明しました!!
わー、よかった素氏の註釈では不明で残していた項目です。
めでたいので、原文と訳を載せておきます。
ゲーテってすごいよねーー。

Kennst du das Land, wo die Zitronen blühn,
Im dunkeln Laub die Goldorangen glühn,
Ein sanfter Wind vom blauen Himmel weht,
Die Myrte still und hoch der Lorbeer steht,
Kennst du es wohl?
Dahin! Dahin
Möcht ich mit dir, o mein Geliebter, ziehn!
Kennst du das Haus, auf Säulen ruht sein Dach,
Es glänzt der Saal, es schimmert das Gemach,
Und Marmorbilder stehn und sehn mich an:
Was hat man dir, du armes Kind, getan?
Kennst du es wohl?
Dahin! Dahin
Möcht ich mit dir, o mein Beschützer, ziehn!
Kennst du den Berg und seinen Wolkensteg?
Das Maultier sucht im Nebel seinen Weg,
In Höhlen wohnt der Drachen alte Brut,

Es stürzt der Fels und über ihn die Flut:
Kennst du ihn wohl?
Dahin! Dahin
Geht unser Weg; o Vater, laß uns ziehn!

ミニョンの歌

知っていますか 白いレモンの花が匂い
みどりの木かげに黄《こ》がねいろのオレンジが熟れ
たえず青空から微風が吹きかよい
ミルテはしずかにロオレルがたかく立っている――
あの国を御存じですか そこへ
いとしい方よ 御一緒にまいりましょう

知っていますか 太い円柱のうえに大屋根がなだらかな曲線をえがき
広間や部屋々々にうつくしいともし灯がかがやき
大理石の像がじっとわたしを見て
不憫なものよ どうしたのか とやさしい声でたずねてくれる――
あの屋根を御存じですか そこへ
たのもしい方よ 御一緒にまいりましょう
 
知っていますか 雲にとざされた山みちの険しさを
騾馬が狭霧のなかに道をもとめ
洞穴に年をへた竜の一族が棲み

切りたてた岩のうえにしらじらと滝水の糸がかかっている――
あの峠を御存じですか そこへ
愛する父よ 御一緒にまいりましょう

『ゲーテ全集 1 詩集』 人文書院 S35 113-114pp 大山定一訳

**
こちら新発見ではなかったのですが、新事実が!
待て次号!

検索虫

昨日は下北沢で行われた松山俊太郎センセエの一周忌、蓮猋忌に出席。
美学校で講義を受けていた末端の僕もセッティングのお手伝い。
途中タバコ休憩30分とってました、すみません。

食事もおいしく、何より、いろんなすごーーい方々の思い出話がおもしろくて。
いや一般人としては、こんな話きけただけでもアリガタヤでした。
一年前の葬儀、いやその前の闘病時代もずっと支えていらした
丹羽さん、今回も本当にお疲れ様でした。
とてもいい会でした。

**

で、われらが素天堂こと山口くんも、
松山センセエの遺志をつぐかたちで、黒死館新青年版のお手伝いをしています。
そして、僕もさらにヘボ助手として、語彙検索部隊に、勝手に参入。
だって、以前、詩文の検索やったとき、ドンドコ判明して楽しかったんだもん。
まさにネット時代、グーグル様のおかげですが。

なので、不明語彙あったら、やらせて~~とねだる、ぶんどる。

虫太郎が、書籍のルビを振っているのが、一番判りやすい。
カタカナでも、かなりのヒントになるからね。

さっきから二時間、独語、仏語辞典などつかいまして、四件登場する書籍がヒットしました!
やるじゃん!
とはいえ、これは非常にヒントが多いのを選んで、遊んでみたので、今後の難航は十分ありえるのです。
ちなみに、書籍名は、グーグルで検索するより、グーグル・ブックの方がタイトルに近づきやすいと感じてます。
あと人名はカタカナから予測が結構効きます。
バルトはロラン・バルトがフランス人なので、Barthsからドイツ名前を想像したりね。

本日だけその成果を披露。
自慢か!

バルト 『ヒステリー性睡眠状態に就いてユーベルヒステリッシェ・シュラフツステンデ』
"Über hysterische Schlafzustände" Engelbert Barth 1898

リーブマン 『精神病者の言語デイ・スペラヘ・デス・ガイステスクランケン』
"Die Sprache der Geisteskranken: nach stenographischen Aufzeichnungen" 1903
Albert Liebmann (1865-1924)
ドイツの精神科医(言語障害の専門家)

デ・ルウジェ 『葬祭呪文リチュエル・フュネレイル』
"Études sur le Rituel funéraire des anciens Egyptiens" Emmanuel de Rougé 1861-1863
Emmanuel de Rougé (1811-1872) フランスのエジプト学者

シュレーダー 『生体磁気説レーベンス・マグネチスムス』
"Die Heilmethode des Lebensmagnetismus: nebst einer Untersuchung über den Unterschied zwischen Hypnotismus und Heilmagnetismus"  H. R. Paul Schröeder 1895

明日からもコツコツがんばるよ~。


君は誰なのか

もうひとつ「ダクダク2号」の内容に触れておこう。

復刻に用いた『科学画報』には一時期多くの「科学小説」という読み物が載っていた。
やはりSFに通じるものが多く、
ネット上で日本のSF黎明期を調べられている方も、こんな詳細な記事をかかれている。
おそらくSFファンには貴重な翻訳初出ものも多くあるのだろうけど
門外漢の絹山には、ウェルズくらいしかピンとこない。

そんな中で、ちょっと毛色が違うのが、独逸怪奇小説と銘打たれた
ベルンドルフ「毒を追うドクトル」(昭和6年1月から連載開始)というのがある。
こちらも同じ方が調査された記事があって
え!独逸怪奇!
なーんて言うととっても喜んでくださりそうな方が目に浮かぶが
実際読むと、ヘタレ薬中ドクトル、ヤクガキレテコマッテルンデツーな変な話。

まあ、こちらはいつかオマケで復刻でもしたいけど、
コピー誌にするには相当分量あるので、希望があれば…ってことで。

で、今回我々が復刻した唯一の小説が
河邊天馬の「踊る指紋」っていう科学小説です。
ちなみに、よくあることかもしれませんが、目次には「指紋は踊る」になってます。

ある朝サラリーマンが、泥棒が入った!と妻にたたき起こされる。
確かにガラス戸は壊されているが、何も取られていない。
取り敢えず交番に届けようと煙草に火をつけたら驚いた。
指に墨が塗られていたのだ。
刑事の語るところによれば、最近何もとらず寝ている隙に家人の指紋を取って行く、謎の人物が横行しているとのこと。
さて、犯人は誰か?何の目的で次々に指紋を盗むのか?

こういう書き出しなのですが
物語非常に面白くなっております。
ちゃんとミステリに仕上がってると思います。
でも結末は……ふっふっふ。

作者の河邊天馬なる人物については、何もわかりません。
いえることは、文中に出てくる委細な疾病薬物に関する記述や
ゴールトンの指紋論に言及している所から
名のある医学関係、法医関係者の変名ではないかと。
あと銀座界隈に土地勘があるようだってくらいですかね。

もしご存じの方いらっしゃましたら、ご教示くださいませ。

ciba-ziho

こんばんは、今日から嫌でも外に出ないといけない
チバマニアの絹山です。

小栗虫太郎関連資料集「DUKDUK ダクダク」は
虫太郎が参照したかもしれない、参照していたらいいなあ、
きっと虫太郎なら、この雑誌を楽しんで読んでくれたに違いない!
そういうコンセプトで現在入手困難な往時の資料を陸続と復刻する予定になっています。

と、今頃になってマニュフェスト宣言みたいなことをする。
第一回に選ばれた栄えある雑誌は「チバ時報」です。
なにそれ?千葉?
いえいえ、ciba-zihoというのが、正式表記です。
ciba=Chemical Industries Basel

奥付には瑞西バーゼル化学工業日本学術部とあります。
雑誌や会社の沿革については、「ダクダク」創刊号で書かしていただきましたので簡略化しますが、
瑞西バーゼル社→チバ社+ガイギー社→チバガイギー社→+サンド社→ノバルティスファーマ
となった世界屈指の製薬会社です。
その会社がスイス本社で、「医療」の名のもとに奇妙で視野の広すぎるPR誌として発行したのが、"Ciba Zeitschrift"(1933)でありました。

日本では既に大正8年に、PR誌としての「チバ時報」が創刊されていましたが
昭和9年に大幅な雑誌構成の変更、つまり本社広報のやっているオモロイ記事を
日本にも紹介しようぜ!ということになったのです。
そして、第57号から、薄いながらもワクワクするような「チバ時報」が頒布されたのです。

少しでも「ダクダク」に興味を持っていただけたらと始めた書誌作製でしたが
こんな素晴らしいものを世界中だれもきちんとしたものを作っとらんがな!
という、怒りに震え
というよりも、俺がやる!という不要なやる気に押され
英米独の古書店サイトを検索する毎日。

はい、英語版もあるんですよ、"Ciba Symposia"という。
そして、独語版はバーゼル版、ベルリン版、ついでに二期もあるという
非情な混迷ぶり。

日本語版はお判りの通り、二次大戦のため廃刊に追い込まれております。
そして、同じ特集でも各版によって、大戦の影響を受け、少しずつ内容や発行時期にズレが生じている。
あるいは、英語版にあっても、独語版はないとかね。
たとえば、バーゼル版で1935年に出た「日本の医療」なんていうものは、日本版では出ていないし、米国では戦後かなり経って(1950)から出ているという。
こういうコマコマしたことも、比較するとめちゃくちゃ面白い。

そして何より、この素晴らしく変な後ろ向きなのに尖端医学特集。
ここに着目していただきたいわけです!
虫太郎なら、絶対好きになってくれるはず!
↑勝手な思い込み。

「古代時計室」で全版の書誌を上げたいと思っていますが、
本日はダイジェストで「チバ時報」のみを。
というか、htmlいじるのが、excelからtable指定したのを細かく修正するのに時間がかかるので
少しだけお披露目と。

残念ながら、57-116号の中で10冊ほどまだ蒐集できていないものがありまして。
不明なものがありますこと、ご寛恕ください。

あー、自分が楽しいだけで、スミマセン。


no 特集 発行
57 原始医学 1934/1
58 子供の抱き方 1934/2
59 軍陣外科 1934/3
60 病原菌を以ってせる医家の自家実験 1934/4
61 -1934/5
62 -1934/6
63 -1934/9
64 欧米における新旧病院に就いて 1934/10
65 インヂアン人及びその医学に就いて 1934/11
66 医師の服装 1935/1
67 探検旅行家及び研究旅行家としての医師 1935/2
68 -1935/3
69 病原体の発見 1935/4
70 回々教徒と医学 1935/5
71 医学の象徴 1935/6
72 医療の補助としてのポスター 1935/9
73 生の限界 1935/10
74 化粧の事ども 1935/11
75 写真術の初期に於ける医師の肖像 1936/1
76 バビロン時代の医学 1936/2
77 双生児 1936/3
78 救病者としての聖徒 1936/4
79 医学と測時法 1936/5
80 防疫 1936/6
81 野生動物の馴育 1936/7
82 童話に現はれた医師 1936/9
83 医師と食事法 1936/10
84 -1936/11
85 医師の診察室 1937/1
86 古代埃及の医学 1937/2
87 浴法について 1937/3
88 ドクトル・メヂチーネなる称号の授与 1937/4
89 印度医学の発達 1937/5
90 正常並びに障碍の発育について 1937/6
91 穿顱術 1937/9
92 血液循環 1937/10
93 アズテック族の医学 1937/11
94 医科の蔵書 1938/1
95 中世期に於ける衛生 1938/3
96 実験遺伝学の発達 1938/5
97 シャーマネとメジチンマン 1938/7
98 屍体保存法 1938/9
99 呪物肌守及び護符 1938/11
100 古代羅馬の医師 1939/1
101 医師の肖像画 1939/3
102 寄生虫としての蠕虫 1939/5
103 錬金術の起源 1939/7
104 古代ペルーの治療法 1939/9
105 研究所 1939/11
106 哺乳児 1940/1
107 左右の不均斉に関する問題 1940/3
108 医師の工業的業績 1940/5
109 大モガール帝とその侍医達 1939/7
110 中世錬金術 1939/9
111 有史前の治療術 1939/11
112 モンペリエ医学校 1940/3
113 サレルノ 1940/5
114 スペインの黄金時代の医事 1940/7
115 半陰陽 1940/9
116 矢毒 1940/11

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絹山絹子

Author:絹山絹子
狸穴幼稚園の図書委員

kochairo@hotmail.com
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